逓信省のパンフレット「健康第一」 一橋大学 米山高生名誉教授 ⑩
2025.07.01
国民の体位向上と健康増進のために、逓信省簡易保険局が始めたラジオ体操についてはよく知られている。ラジオ体操の音楽を聞くと、夏休みの町内会のラジオ体操を思い出す人も多いだろう。
「常にたっしゃなひと」は伝染病に罹りにくい
実は、ラジオ体操第一の音楽を作曲したのが服部正であり、第二の音楽の作曲者が團伊玖磨であるということは、それほど知られていないことかもしれない。共に名を知られたクラシック音楽の作曲家であり、ラジオ体操の音楽が隠れた名曲であるのは、故無きことではない。
ところで、簡易保険を提供していた逓信省にとって、被保険者の健康管理は大きな関心事であった。ここに紹介するのは、逓信省による「健康第一」と題したチラシである。「夏向きの衛生」について、両面を使って細かく印刷されている。書かれていることをかいつまんで紹介してみよう。
内容を大きく分けると、「衛生の心得」「伝染病の予防」「伝染病流行時の注意」の三つである。最初の「衛生の心得」では、「規則正しい生活」「清潔を保つ」「飲食物の注意」「感冒に罹らぬための注意」が説明されている。
次に「伝染病の予防」として、伝染病患者に近寄らぬこと、飲料水や食料品に注意を払うことなどが述べられている。最後の「伝染病流行時の注意」では、「平素壮健な人(常にたっしゃなひと)」は、伝染病に罹りにくいこと。また、むやみに伝染病を恐怖することは、かえって害になることもあるという注意喚起がなされている。