続・続 郵便局ネットワークの将来像㊶

2025.03.10

 2025(令和7)年度から、買い物支援やオンライン診療を郵便局と連携する過疎地等の自治体には特別交付税が措置される。中山間地や離島の郵便局も自治体や地元企業、団体と連携し、あらゆる知恵を絞りながら貢献している。局内や局付近で買い物ができることは〝ついで〟の来局にもつながっている。ついでにできることが増えていけば地域創生に直結しそうだ(写真上はサロンとしても活用されている東茂住局)。

〝ついでに〟何でも郵便局ハーモニー♪

 岐阜県飛騨市の東茂住地区内の3集落には24世帯が暮らしているが、スーパーもコンビニもない。
 高齢の方が多いと都竹淳也市長の切実な思いを受けた郵便局長と東海支社(根岸一行支社長)が、スギ薬局に交渉の末、2021(令和3)年4月に東茂住局(岡田博英局長)で始まった局内店頭販売(生鮮食品を除く)。23年12月から同じ飛騨地区連絡会の袖川局(田中一嘉局長)でも開始となった。

岡田局長㊧と木下統括局長

 東茂住局の岡田局長は「飛騨市在住のマイナンバーカードを持っていないと使えないことが少しもったいないが、キオスク端末も設置いただいた。商品売上額は支社が缶詰等、商品の種類を増やしてくれ、平均で当初の2倍になった。価格はスーパーより高く、コンビニより安い。市長は『コンビニの機能そのものを縮小した形で郵便局がきちんとやれるのなら、もっと資金をお金投入してもいい』と言ってくださっている」と感謝を込める。
 空きスペースのある東茂住局は毎週木曜午後には囲碁サロンにもなる。
 袖川局の田中局長は「東茂住局とはお客さまの年代層や広さも違う。皆で作戦を立て、期間雇用社員さんを中心に『これをここに置いたら売れるんじゃない?』と女性目線で見立ててくれる。売上額は少しずつが増え、郵便局を利用しなかった方も来てくださる。ゆうゆうポイントの機器に毎回スマホをかざす方も2~3人。ご高齢の方には社員が教えたりもしている」と語る。
 来局した70代の女性は「買い物や病院は国府まで車で40分。郵便局は車で5分。ちょっと便利になったわ」と話していた。
 飛騨地区連絡会の木下直樹統括局長(国府)は「スギ薬局さまの一つの店舗の方が2局の個別の発注を確認されているため、大変だと思う。少しずつ改善しながら、形にこだわらずに郵便局が役に立てるよう続けていきたい」と強調する。
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 一方、福井県東部地区会(嶋崎一哉会長/坪江)の大土呂局(澤田政秀局長)では今年1月から福井県民生活協同組合と連携し、移動販売車が停車する買い物支援が始まった。毎週木曜15時半から、生鮮食品も載せたトラックが20分間販売する。
 昨年8月に福井県民生協と福井県防災士会の協定締結を機に郵便局と福井県民生協の連携が深まり、大土呂局の澤田局長が「買い物支援を求める声が増えている」と県民生協の中川政弘常勤理事に相談し、実現に至った。
 県防災士会理事長も務める一乗谷局の久保田幹大理事は「スーパーやコンビニまでご高齢の方が歩いていける距離にはない。移動販売車には、多くの商品がそろい、『あれが欲しい』と言えば、次の週に持って来てくれる。局の無人販売コーナーでの防災グッズ販売やコインロッカー型冷蔵庫の局内設置も検討したい」と展望する。
 大土呂局の澤田局長は「一人暮らしのご高齢の方は免許返納で買い物もできなくなっている。移動販売車の周知に力を入れ、多くの方に利用いただけるようにしたい。県民生協の方も『停車をあと4~5局増やしたい』と言われている」と意欲を示す。

 日本郵便、福岡県宮若市、グリーンコープによる買い物支援施策として、筑前東部地区連絡会(宝井優統括局長/下山田)の長井鶴局(広門久美子局長)と磯光局(加来顕太局長)横(写真上)でも移動販売開始から1年半近く。広門局長は「買い物ついでに来局される方が増えている」と喜びを見せる。
 郵便局で〝ついでに〟が増えていけば、暮らしやすい地域が生まれそうだ。

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