ゆうちょ銀行が新体制へ  4月、池田社長から笠間新社長に

2024.03.19

 ゆうちょ銀行は2月28日、4月1日付の人事を発表した。池田憲人社長が退任し、新社長に笠間貴之副社長が就任する。池田社長は3月1日の記者会見で「民営化の制約の中で道を探り、〝共創ビジネス〟を強く意識した。ゆうちょならではのユニークなビジネススタイルを確立する土壌はできた」と語った。「社会との調和」を目指した池田社長は上場翌年の2016(平成28)年から約8年間、低金利やコロナ、キャッシュレス決済のシステム課題等々、さまざまな壁に対し、「サービス向上委員会」を立ち上げ、〝お客さま本位〟で乗り越えながら郵便局と日本郵政グループを支えた。

さらにユニークな銀行を

 上場した15年にゆうちょ銀行に入行した笠間次期社長は民営化後初の社内出身の社長となる。笠間次期社長は「成長、能力、多様性の三つの掛け算方式で社員の活躍を促し、チームワークで前へ前へと進んでいく」と強調した。

共創ビジネス〝Σ〟の土台完成へ 池田憲人社長


 池田社長
 ゆうちょ銀行は郵政民営化法による制約がある一方で上場会社だ。収益を上げて完全民営化の道筋を作る使命がある。模索する中で、他の金融機関の方々との〝共創ビジネス〟の一点を強く意識し、「ゆうちょならではのユニークな銀行」の確立を目指してきた。
 「ゆうちょらしいGP(ファンド管理運営者)業務本格化」に向け、銀行本体ではGP業務ができないため、100%出資の子会社「ゆうちょキャピタルパートナーズ(仮称)」を設立するために、このほど認可申請も行った。全国津々浦々の眠れる優良企業を掘り起こしたい。
 ゆうちょ銀行は「R(リテールビジネス)・M(マーケットビジネス)・Σ(シグマビジネス<ゆうちょらしい新しい法人ビジネス>)を「三つのエンジン」(収益基盤)で進む。〝お客さま本位〟か否かを常時検証し、見直す「サービス向上委員会」を立ち上げ、機能させてきた。土壌はできている。
 銀行業務の潮目。津波のごとくフィンテックやデジタライゼーションなどが押し寄せる。新しい潮に違和感がなく、順応できる肌感覚、ビジネスの実務・実績があり、民営化への執念と力量にふさわしい笠間次期社長に4月1日、バトンタッチする。笠間次期社長は「Σビジネス戦略委員長」で司令塔になってもらっている。温和だが、厳しさも持つ人物。社長を助けるチーム体制も構築した。

 【記者団の質問】
 ――笠間次期社長の評価を。
 池田社長 バンカーとしての本道は得意分野で安心。柔軟かつチャレンジ精神を持ち、タフだ。リテールやΣビジネスでも旗を振っていける。愛社精神も高い。
 ――時代の先を読む中で感じられたこととは。
 池田社長 デジタル系が今後、どう動いていくか。そうした知識が若い世代にはかなわない。社長職は明日やその先も考えなければならない。
 ――完全民営化とは日本郵政保有株式を100%売却することですか。
 池田社長 現在の郵政民営化法に則した意味で完全民営化と申し上げた。

通帳アプリ起点に〝オンリーワン〟 笠間貴之次期社長


 笠間次期社長 ゆうちょ通帳アプリの登録口座数が2月下旬に1000万口座を突破した。郵便局などリアルネットワークを活用し、登録口座数を積み上げ、お客さま基盤の維持・振興を図るとともに、通帳アプリをリアルチャネルへの送客を含めて多様な事業者が利用できる「共創プラットフォーム」にしたい。
 通帳アプリを起点に、プッシュ通知やアプリ内のお知らせによる広告、媒介などを通じ、金融サービスの枠を超えた〝多様なサービス〟を提供する「新しいリテールビジネスモデル」の構築に挑むことが1点目。
 2点目は市場運用業務のさらなる高度化。国債からリスク性資産へと大きくシフトし、多様化・分散化を図った結果、昨年12月末時点でリスク性資産残高は104兆円と現中計で掲げた2025(令和7)年度末の目標110兆円近くまで積み上がった。
 いよいよ、リスク性資産と日本国債などの円金利資産合わせて収益拡大を目指せるフェーズに入る。3点目はΣビジネスの本格稼働。地域金融機関の方々とも協働し、地域課題の解決と企業価値向上の両立に向け、成果を積み上げたい。

 【記者団の質問】
 ――日本郵政グループ、また郵便局との連携を強化されますか。
 笠間次期社長 日本郵政グループに所属していることは大きな強み。方向性は変えずに、グループ価値向上に貢献できるように取り組んでいきたい。
 ――Σビジネスの基盤となる地域金融機関との関係性は。
 笠間社長 本社も13エリア本部も積極的に地域金融機関を回って連携を深め、コミュニケーションが取れるようになってきた。その財産を進化していきたい。
 ――完全民営化後の姿をどう見据えていらっしゃるのですか。
 笠間次期社長 いずれにしても、民営化後のゆうちょ銀行は、極めてユニークな存在だと思う。ユニークさを武器に、ナンバーワンではなくて〝オンリーワン〟だ。
 ――新NISA制度の方針を。(郵湧新報)
 笠間次期社長 ビジネスチャンス。NISA口座獲得等々含めて力を入れている。商品ラインアップは今後の検討事項。ビジネス拡大を狙いたい。

(左から)矢野晴巳副社長、笠間次期社長、田中進副社長