インタビュー 木下範子東京支社長(常務執行役員)

2022.09.17

 日本郵政グループの大きな課題としてのしかかっている金融営業の再生へ、6月に東京支社長に就任した木下範子支社長(常務執行役員)は「良いところを伸ばして課題を解決する延長にしか未来は開けない。良いアイデアを出してもらい、実現のために現場力を思う存分引き出すことが私の使命」と語る。多様性に満ちた東京の特性に寄り添うため、地区連絡会ごとに担当部長級以上が責任者となり4、5名のグループとなって部会、個局、社員をきめ細やかに見ていく「金融マネジメント」を始動させた。「支社とフロントの一体感を醸成したい。一局一局を大切に育てていきたい」と意欲を示す。

現場力引き出し、一体感を醸成

 ――変化の激しい時代に主戦場となる東京支社長は重責と思われますが、ご抱負をお願いします。
 木下支社長 郵便・物流収益の約3割、金融は1割という大きな市場を持つ東京支社を預からせていただい本当に身の引き締まる思い。影響力も大きい支社だけに課題も多い。第1四半期決算も出て、郵便・物流、金融も苦戦する中で営業はもとより、コンプライアンスにもしっかりと取り組まなければならない。
 日々の業務を滞りなく気持ちよく回していける環境や雰囲気づくり、さまざまな業務改善など、フロントラインに寄り添って一歩一歩の前進を目指している。千里の道も一歩からだ。全体をマクロで見ることと、きめ細やかにミクロで対応することを支社の皆さんとどれだけ一緒にできるかが勝負の鍵を握ると思う。
 誰が解決するノウハウを持っているかといえば、支社、局長や社員の皆さん。良いアイデアを出してもらい、実現のために現場力を思う存分引き出すことが私の使命だ。支社を変えるということでなく、良いところを伸ばして課題を解決することこそが前進につながる。
 実は支社でできることはたくさんあって、どこまでできるかは支社長として私の〝腹決め〟次第。リスクも想定しつつ最大限どこまで実行に移すかということ。責任を誰が持つかの問題で、その責任を負うのが支社長の職務。そう考えると支社の中でできることは多い。

 ――ゆうパックやゆうパケットの反転攻勢の戦略は。
 木下支社長 荷物の営業力をどう底上げしていくかも課題。東京支社には営業統括本部があり、法人営業専門の法人営業室がある。郵便局の特約営業は底上げされてきたものの、局によっての営業のできる濃淡もある。
 商店街等中小口含めて、お客さまの層をどう広げていけるかがこれからの勝負どころ。オペレーション面については、郵便・物流の全国的な拠点を受け持つ東京支社として、オペレーションを止めてはならないというプライドを持ち、緊張感を持って取り組んでいる。
 また、物販は郵便局にとって、お客さまと最も接することができる業務。新入社員にはまず物販を教える局もある。局長の交流人事の中で、他支社エリアの郵便局を経験した局長が東京に戻ってから、その地方で築いたネットワークにより、地方の特産品を販売するなど工夫している例もある。

個に寄り添う「マネジメント」で

 ――金融営業の再生に向けては。
 木下支社長 社員の声をよく聞くことが、まずは大切。不適正募集問題から3年がたった今、改めて何が必要なのかを考えなければならない。
 東京のエリマネ局は地区連絡会によって多様性に満ちている。多忙極まるオフィス街もあり、静かな住宅地もある。海を渡った島しょも東京で、東と西でも異なる。東京の場合、交通網が発達しているため、距離が近い特性を生かし、支社がそれぞれの地区連絡会にもっと入り込み、寄り添って、一緒に悩みながら作り上げていくきめ細やかなマネジメントが可能だ。
 担当部長級以上が責任者となり、4、5名のグループとなって地区連絡会ごとに入り、各地域性に寄り添って、部会、個局、社員をきめ細やかに見ていく「金融マネジメント」を実践している。支社とフロントの一体感を醸成し、一局一局を大切に育てていきたい。
 何かをしたいと思ったとき、地区統括局長だけではなく、副統括局長や部会長、インストラクターなど各階層に対し、少し時間をかけてでも、直接自分の言葉で語る機会を作るよう心掛けている。皆が同じ方向を向いて一緒に頑張っていこうというメッセージを伝えたい。

 ――大手町局で「みらいの郵便局」の実証も始まりましたが。
 木下支社長 7月から、各種デジタル機器の導入および局内の改修を行い、大手町局で実証実験を行っている。本社施策として、全国の社員からアイデアを募集し、実現を目指す「みらいの郵便局コンテスト」を行っている(8/31募集締め切り)。社員のさまざまなアイデアで作り上げられていくのが「みらいの郵便局」だ。
 また、管内数局で郵便セルフ機やデジタル発券機を先行導入し、試行中となっている。繁忙局にフィットする施策で、窓口の業務が緩和されたり、お客さまが待ち時間を有効に使えたりするメリットがある。

 ――支社のSDGsの取り組みは。
 木下支社長 東京支社も昨年から三菱鉛筆様、㈱サカタのタネ様と品川局配達地域内の区立小学校・義務教育学校の11校と品川局に使用済鉛筆回収箱を設置し、棒状肥料やバイオマス発電として再利用する「鉛筆の資源循環システム」を三菱鉛筆様のお声掛けにより実証実験中。本社の「SDGs Book」については4年前に「郵便局は地域になくてはならない」と訴えたい思いで作り上げた。

 ――局長や社員の方々とどうつながり、何か伝えたいことはありますか。
 木下支社長 頑張る社員に手書きではがきを贈っている。支社からの推薦や、情報紙誌等を読んでフロントで頑張る人に一筆書いて贈ったはがきで本人に喜んでもらい、局長や他の局の社員の皆さんにも共有してもらえることで、一通の手紙が喜びを何倍にも広げてくれる。
 お礼状をいただくこともあり、私も元気になる。コツコツと続け、少しずつでも社員を励ませることができたらうれしい。パソコンで打って印刷したものではない、手書きの手紙には〝見えない力〟があると実感する。
 日本郵便、引いては日本郵政グループ全体の〝顔〟が郵便局。〝郵便局の顔〟が誰かといえば、お客さまに向かう「フロントの局長や社員の皆さん」そのものだ。一人一人が前を向き、お客さまに笑顔で接することができるようにすることが支社や本社の仕事になる。
 コロナ禍等々で大変な中、日々の業務に従事いただき、本当にありがたく感謝している。しっかりと感染対策しながら一緒に頑張っていきましょう。