インタビュー 中西祐介 総務副大臣
中西祐介総務副大臣は、日本郵便四国支社(安達章支社長)の「若手塾」にも出席するなど郵政事業に熱意を持つ。郵便局のリアルな強みにデジタルの力を加えようと試行から実装段階に突入した「スマートスピーカーを使ったみまもりサービス」を「〝誰も取り残さない社会〟をキャッチフレーズでなく、実装されていることは素晴らしい。地域課題が顕在化する地域から広がっていくとよい」と日本郵政グループらしい役目に期待を寄せる。「地域を守るために行政側も一層、郵便局と連携するようにすれば良い地域づくりができていく」とも指摘する。
〝誰も取り残さない〟社会の支えに
――郵便局の自治体の包括事務受託はじわじわと広がっていますが、今後どのように進めていくのがよいとお考えですか。
中西副大臣 約2万4000局の郵便局ネットワークは国の財産であると同時に、地域の基礎的で重要な生活インフラ。自治体事務の受託やみまもりサービスなど地域に根差した取り組みをされていることに感謝したい。
現在、全国170市町村の588局で郵便局事務取扱法に基づき行政事務が受託され、18自治体が包括事務を郵便局に委託している。平成の大合併等を経て役場も住民との距離感縮小や利便性向上に工夫をされているが、そうした部分で郵便局の果たす役割は大きい。自治体と相互に助け合う仕組みが構築できるとよい。
昨年の郵便局事務取扱法の改正を受けて新たに受託できる業務が加わり、先般、全国初めてマイナンバーカード(以下、マイナカード)の電子証明書の発行・更新を宮崎県都城市の郵便局が開始した。全国に普及するには、費用負担や人員体制などの課題もあるが、総務省として取り組みをしっかり拝見し、活動を支援する。他省庁とも関わるため、実態を踏まえて推進していきたい。
――北海道と日本郵政グループ、楽天グループの3者包括連携協定や、マイナカード申請支援の実装など含めて、社会のデジタル化に向けた郵便局と自治体との連携については。
中西副大臣 デジタル化は、事務効率化を要する領域とデジタルトランスフォーメーション(DX=進化したデジタル技術を浸透させ、生活をより良いものに変革)の掛け合わせが重要だ。
北海道内の市町村の課題解決に向けて「デジタル実装サポートチーム」を設置し、郵便局で「オンライン行政相談」や「シニアの方向けのスマホ講座」を今春からスタートした。北海道選出の渡辺孝一総務大臣政務官からは「鈴木直道知事が頑張った」と聞いている。
デジタルから〝誰も取り残さない〟社会づくりは政府全体の思い。そうした役目を郵便局に担っていただいているのはありがたい。石川県小松市で始まった郵便局のマイナカード申請支援の実装も喫緊のテーマに合致する。こうした連携は非常にありがたい。
岸田政権の一丁目一番地である「デジタル田園都市国家構想」は、どのような地域でも住み続けられる可能性をデジタルの力を活用して実現することを目指すものだ。郵便局の強みを生かしたDXやデータ活用を広めていただくことに期待したい。
――〝誰も取り残さない社会〟づくりの先導役を郵便局が果たすために、買い物サービスやみまもりサービスには何を期待されますか。
中西副大臣 日本郵政グループの中期経営計画「JPビジョン2025」では中期的なビジョンも作られ、今春に発表したグループ共通のコミュニケーション「進化するぬくもり。」はその一環と伺った。全国でリアルに稼働する郵便局ネットワークがリアルな地域の方々と関わって、利用者ニーズに合ったデジタルの新サービスを創出していくのが楽しみだ。
先般、スマートスピーカーを使ったみまもりサービスを金子大臣、渡辺政務官と共に体験させていただいた。端末上の「ぽすくま」を通じてやりとりしながら、利用者の方の表情も含めて元気か否かも分かる。機器の精度も日進月歩で進み、どんどん利便性が高まるだろう。
自治体と郵便局の連携、一層強固に
長野県大鹿村の実装第1弾に続き、「デジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプTYPE1)」で大阪府河内長野市、鳥取県米子市、鳥取県日吉津村、愛媛県宇和島市が採択されるなど、合計6自治体で導入が進む。地域課題が顕在化する地域から全国に広がっていくとよい。
他自治体や企業等も巻き込み、サービスの質を向上させる中で利用者も増える。〝誰も取り残さない社会〟を単にキャッチフレーズでなく、現実に実装されていることは本当に素晴らしいことだ。
買い物サービスも地域社会の大きなテーマ。多くの企業が取り組んでいる。災害時の復旧・復興も中山間地は交通が非常に不便となるため、郵便局がタブレットで注文を受けて地域の商店街から配送したり、将来的にはドローンで運んだりなど、新しい物流に向けて日本郵便が今試行的に取り組まれていることが全て将来の種になる。
――四国の高知東郵便局で行われた若手塾にも参加されましたね。
中西副大臣 昨年、郵政担当副大臣になったため、今年の年頭に初めて年賀郵便の元旦配達出発式に出席させていただく中で、四国支社の安達支社長から若手社員と勉強会を開催する「若手塾」の話を伺い、非常に共感した。
日頃から、地元徳島県や高知県の局長や社員の地域活動と行政がすべきこととの間に親和性を感じていた。このため、同世代の局長や社員の方たちがどのような未来ビジョンを描き、何に課題を感じるかを知りたかった。
局長さんの取り組みも、セクションごとの取り組みも伺ったが、皆が真面目で実直。その姿勢が郵便局の信頼性を担保していると頭が下がる思いだった。地域を守るために行政側も一層、郵便局と連携するようにすれば良い地域づくりができていくだろう。
「郵便はがき」を命名した青江秀(ひいず)氏(1834〈天保5〉年―1890〈明治23〉年)は徳島県の阿南市の方。そのことを雑誌に紹介記事を書かれた鳥海淳局長(見能林郵便局)は実は私の小中高の先輩だ。郵便局はみまもり領域だけではなく、たくさんの地域活動をされ、信頼を積み重ねている。さまざまな形で行政と連携できると素晴らしい。
――郵便局とゆうちょ銀行との連携をどのようにお考えですか。
中西副大臣 私も元々都市銀行(UFJ銀行)で働いていたが、ゆうちょ銀行の金融データは可能性の宝庫だと思う。全国の配達ネットワークのデータもしかり。利益のためだけにビッグデータが活用されることがあってはならないが、日本郵政グループのデータはDX社会の根本的な価値になる。
総務省でも昨秋からデータ活用の可能性を有識者検討会で検討しているが、事業のため、お客さまのため、社会のための三方良しの形で、グループ資産を広く活用できる時代にしていきたい。
――マイナカード普及にさらに郵便局活用をされた方が、と思うのですが。
中西副大臣 交付率向上は、カード普及を目的にするというより、生活利便性の向上や行政事務効率化を進めるためのプラットフォームの構築が鍵となる。このプラットフォームを、郵便局や日本郵政グループがどう活用されるかの対話を重ねたい。民間企業として頑張っているのだから、さまざまな活用アイデアを提言いただけるとの期待感を持っている。