インタビュー 全国郵便局長会 三神一朗理事(関東地方会会長)

2021.12.26

 郵便局ネットワークの価値ある将来像に向けて、地域創生・地方創生に懸命に取り組む姿を全国郵便局長会(末武晃会長)の三神一朗理事(関東地方会会長/昭和)に伺った。

幅広ニーズに応える拠点ネットワークを

 ――郵便局ネットワークの将来像について教えてください。
 三神理事 会社と全特との協議の中で、総論としては地域性や多様性を生かす方針が打ち出されているが、各論は今も議論の途上。地域性など各局の特性に応じた営業時間や営業展開は、局配置も併せて考えた上で、今以上に地域と連携しながら郵便局の存在価値を高める方向に進まなければならない。
 私が住む山梨県も山間地はどんどん人口が減少しているが、実は甲府市周辺は人々の流入により人口が増え、郵便局の新設を望む声も頂く。神奈川県内もタワーマンションが多く建設された地域では、新設要望の声が多いと聞く。現在、耐震補強が困難な郵便局の建て替えが進められているが、その際は、その地域の設置要望が多いところを中心に移転等の検討をしていく必要があると思う。
 ――新しい拠点インフラとして郵便局はどうあるべきでしょうか。
 三神理事 コロナ禍で人の分散が求められるようになったことで、全国ネットワークを有する郵便局の価値上昇もあるはず。テレワーク下では、勤務先周辺でなく、お住いの地域にあるスーパーや地元商店の買い物客が増えたと聞く。先般、無人決済システムを活用したコンビニ店舗という素晴らしい〝共創〟も始まった。今は買い物をしようと思っても、テレビショッピングは扱う品数が限られ、一方、これまでの冊子型カタログ通販は厚い冊子から選ぶのが面倒なので、ネット通販がますます盛んになっている。
 高齢者の方々などは足を運び、直に商品を選ぶことができる買い物をしたいと思っていても、移動が大変なため諦めている方が多い。また、ネット通販のためのクレジット決済登録で個人情報が漏れるのが怖い、とちゅうちょされる高齢の方もいらっしゃる。
 そうした方のネット通販を郵便局が手伝えるよう、注文したい時に郵便局のタブレットやパソコンを使用し、局長や社員が「どれが欲しいですか」とご要望を伺いながら申し込みや受け取りができるようになれば喜ばれると思う。受け取りは窓口で行えるようにして、「品物が届いていますよ」と連絡し、代引で決済。個人情報も郵便局で管理するため、悪用されることもない。重い荷物などは届けてあげても良いと思う。
 ――郵便局のEVステーションも始まりました。災害時には「動く蓄電池」としても注目されるEVですが、全特の防災PT座長としての感想は。
 三神理事 防災拠点として、この取り組みが広がることを大変期待している。2年前の台風では、千葉県で長期間停電になった時、当時、全特副会長だった長谷川英晴相談役が「災害時にもっと郵便局ネットワークを活用する防災インフラの仕組みを作った方が良い」と提案されたが、非常に大切な視点で、会社全体としても今、そこを目指しているのだと思う。
 全特の防災PTは熊本地震直後に立ち上げられ、被災局などの意見を集約し、備えのアイデアを抽出しながら実行に移してきた。座長として被災地を視察するたびに、被災された現地の局長が地域のためにいかに頑張ってきたか、感動とともに実感している。
 これまでの業務に加え、防災拠点として、また買い物サービスの拠点としても、誰もがどこに住んでも安心して暮らせる社会構造を郵便局が支え、その縁の下の力持ちに局長はこれからもなり続けるべきだ。「地域」あっての郵便局。幅広な住民ニーズに応えられる拠点としてあり続けることが必須。さまざまな〝共創〟に取り組み、例え小規模なものであってもプラスになるなら100局集まれば大きな収益になる。