インタビュー 日本医師会 長島公之常任理事
厚生労働省が作成した「オンライン診療の利用手順の手引書」や総務省の「遠隔医療モデル参考書」の両方に、日本医師会を代表して深く関わってきたのが長島公之常任理事だ。長島常任理事は「へき地・離島等に代表される医療へのアクセスが困難な地域こそオンライン診療が望まれているが、郵便局はそうした地域にもあるため、有効な施設になると考える。また、全国津々浦々で質の高い統一した仕組みを普及させることで医療の質と安全性の担保につながる。常時、日頃から付き合いのある〝局員さん〟がいてくれることも重要だ」と語る。
オンライン診療に郵便局は有効
――オンライン診療の課題をお教えください。
長島常任理事 国民の命と健康に直結するオンライン診療は、今後の日本の医療において大変重要であるが故に適切に進めなければならない。
医学的な有効性、必要性、何よりも〝安全性〟を担保する必要がある。また、医療情報は最も大切な機微性の高いもので、漏れや改ざんを防ぐサイバーセキュリティーが重要だ。
2018(平成30)年に、これらを守るために「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が策定され、順次改訂されてきたが、一部で順守に疑問のある機関も出ている。その不適切な事例は、国民生活センターにも声が届いている。法制上の整備も必須なため、環境を整備している。
オンライン診療は医療機関へのアクセスが困難な場合に有効。例えば、①通院が難しい病気の在宅医療②離島やへき地等③難病等で数少ない専門医療機関が遠方、等。
オンライン診療から対面診療への切り替えが必要となった時に、患者さんが住む地域が遠方の場合、地域の医療機関と事前に連携体制を構築することも重要だ。
また、④災害時に交通遮断された際や新型コロナのように、感染リスクの回避を要する場合も有効だ。
使い勝手の良いシステムは患者だけでなく、医療機関側にも必要だ。看護職がその場に一緒にいて支援する「ドクター・トゥ・ペイシェント・ウィズ・ナース」(D to P with N)は理想だが、高齢の方などはスマホ等機器使用のハードルが高く、機器やスマホ操作の支援だけでも相当違う。
機器を備え、スタッフが乗った自動車が患者宅付近まで行き、車内でのオンライン診療を行うケースや、郵便局や公民館で行う形も始まった。
人が少ない地域も全国で〝質〟を担保
――郵便局でのオンライン診療をどう評価されますか。
長島常任理事 医療機関へのアクセスが困難な地域は日本中に多くある。そのような地域にこそオンライン診療が望まれているが、郵便局はそうした地域にも存在するため、有効な施設の一つだと思う。
また、全国津々浦々で質の高い統一された定型的なパッケージの仕組みを整備し普及すれば、医療の質と安全性の担保につながっていく。常時、人がいてくれることも重要だ。
オンライン診療の補助は、診療の補助行為を含めて看護職が担うのが理想だが、機器やシステム操作のサポートは情報通信機器に習熟された一般の方であれば十分できる。ただ医療に関わるため、研修を受けた上で安全性や質を担保いただきたい。
国側がルールやマニュアル、ガイドブックを準備し、それに従って取り組んでいただければと思う。
郵便局の皆さんは普段から住民の方々に接しているので、信頼関係が構築されていることで、患者の方もやりやすいだろう。
医療・健康情報は個人情報の中でも最も機微性が高い大切なものだが、長きにわたり信書等を扱われ、個人情報を絶対に漏らしてはならないモラルや規則、倫理観を持たれる。
公的な業務に長く携わっている意味で、オンライン診療に適した環境を郵便局は満たしやすいと思う。