インタビュー 丸山元彦関東支社長
広大な関東は地域性も多種多様。今年6月から関東支社長に就任した丸山元彦支社長が最も力を入れているのは、郵便局現場との「コミュニケーションの活発化」だ。郵便局ネットワークの維持について「チャレンジングで大きな課題だが、非常にやりがいがある。課題に打ち勝つには、①日本郵便の収益力の向上②郵便局の魅力の向上③サービス品質の向上――の三つの向上の観点で郵便局改革を断行したい。お客さまが離れてしまえば、どれほど頑張ってもネットワーク維持は難しい。信頼をもとに来局いただける形をつくることが極めて重要だ」と話す。
最重要は現場とのコミュニケーション
――ご抱負をお願いいたします。
丸山支社長 2016(平成28)年4月から18年3月までの2年間は四国支社長を務めており、6年ぶりの支社勤務。1989(平成元)年に入社した35年選手だが、郵政事業には心から愛着がある。
本社に戻った直近6年間は、かんぽ問題やコロナ禍を経て事業全体が大きく変わったと思う。同時に改めて感じることは、支社には「古き良き郵政」が残っているということだ。153年受け継いできた伝統、本来の魅力を支社の空気から肌で感じる。もう一度、支社長として働けることに感謝したい。
――関東は広大な分、大変な部分も多いと思います。
丸山支社長 郵便局の現場を回って、局長や社員の皆さんの話を直接聞くことに力を入れて取り組んでいる。就任後約3カ月の間に、25地区連絡会のうち24地区の統括局長の局に伺った。単マネ局も45局回り、局長や部長等と話をさせていただいた。さらに今後は、局社員との直接対話も心がけていきたい。
関東支社管内には大都市圏もあれば、過疎地と呼ばれるような地域もある。全体をしっかり把握するためにも、首都圏内の東京支社、南関東支社との支社間交流を行うとともに、規模的に近い近畿支社や東海支社を見習うことで、業績向上につなげたい。
着任時には①元気なあいさつ②積極的なコミュニケーション③相手を思いやる行動――をお願いする挨拶文を全局に発出した。
日本郵便は仕事内容も多種多様で、さまざまな経験をされている方同士の「コミュニケーション」は極めて大事で、互いに何でも話せる人間関係づくりと、その上での議論が大切だ。
近年はリモート会議が非常に増え、効率的な良さもあるが、やはりリアルなコミュニケーションは表情も分かり、相手に気持ちがダイレクトに伝わる。
リアルな会議が減っていることを危惧し、あえてリアルなコミュニケーションをさまざまな場で増やしている。
同時に、関東の経営幹部には「社員の安全第一で」と話している。関東支社管内は規模が大きく、その分交通事故も多い。また、近年は自然災害も脅威だ。
2019(令和元)年には、台風被害で千葉県を中心に長期停電に見舞われた。そうした点からも「社員の安全第一」を念頭に、防災の思いを皆で共有していきたい。
――支社として目指すテーマは何ですか。
丸山支社長 スローガンは「ONE関東」。関東の思いを一つにするために、コミュニケーションを交わそう!と「コミュニケーションの活発化」を柱に据えた。
本社に比べ、支社の皆さんとは、所掌の分担を超えて話せる雰囲気がある。しかし、最前線の郵便局とのコミュニケーションはもっと必要と考え、活性化を目指している。
「支社社員の自主性や自発性」も重要だ。「本社がこう言っているので」と言う社員の声も耳にするが、本社の誰が、いつ、どのようなことを言っていたのかを聞くようにしている。
ただ「イエス」と言うのではなく、現場を把握した上で「こちらの状況はこうなので、こうした方が良いと思います」と本社に対して提言できるよう、考えながら業務を遂行してほしい。
社員の高齢化問題も浮上し、中堅・若手の人材育成が〝待ったなし〟だ。支社の課長、係長、主任が各担当局を決めてサポートに取り組んでいるが、形骸化している面もある。いかに支社社員がもっと局まで足を運んで話を聞くようになれるかを検討していきたい。
関東は本社から物理的な距離は近いが、本社との心理的な壁を持つ支社のメンバーは多い。本社の中堅・若手社員の皆さんが支社のメンバーと話すことも少ない。本社の担当者と支社の担当者とをつなぎ、会社全体のコミュニケーションを改善する役目も個人的には果たしたい。
――地方創生に向けて、関東支社はさまざま取り組まれていらっしゃいますね。
丸山支社長 関東支社は地方創生に非常に力を入れ、多くのアイデアを持っている。「日本郵政グループとしての地方創生推進の理想形」を実現するには、地域のニーズを把握し、実際に自治体と折衝する支社や郵便局の意見のもと、本社の地方創生担当の方がメニューを作り、その中から支社や郵便局がそれぞれのお客さまに向けたサービスを選び、提案する流れが理想だ。
例えば、「マイナンバーカード関連事務の受託」や「終活サービス」について、「マイナンバーカードの申請事務」は、さいたま市内全局で受託できたことで、4月~8月まで1000万円以上の手数料収入があった。
ニーズも高く、本社の方で良いメニューを作っていただいたと思っている。そうした都市型の貢献施策を進めることにも力を入れていきたい。
新ビジネスでは、千葉県の睦沢局で展開する「ほしいも事業」がある。長谷川博一局長が先頭に立ち、熱心に取り組んでもらっている。日本郵便自らが生産する商品は、このむつぼしいもと長野県のさやまるトマトのみ。
むつぼしいもは、郵便局唯一の加工品としても画期的な商品だ。11月で第5期目を迎えたが、黒字化に向かっている。関東支社でもPTを組成し、全力を尽くしていく。増産体制を整備中で、ぜひ地方創生の一つの見本となるよう、進めていきたい。
三つの向上策で来客いただける郵便局を
――郵便局ネットワークの維持と展望については。
丸山支社長 郵便局ネットワークの維持はチャレンジングで大きな課題だが、非常にやりがいがある。人口減少や過疎化問題が深刻化する中、郵便局ネットワークは国にとって、かけがえのない重要な社会インフラである。社会的課題である人口減少や過疎化も日本郵便が抱える課題と類似し、真摯に取り組まなければならない。
課題に打ち勝つためには、①日本郵便の収益力の向上②郵便局の魅力の向上③サービス品質の向上――の三つの向上の観点で郵便局改革を断行したい。
お客さまが離れてしまえば、どれほど頑張ってもネットワーク維持は難しい。信頼をもとに来局いただける形をつくることが極めて重要だ。
そのために「義は利の本なり」の精神で進みたい。目先の利益だけを求めるのではなく、義を実践することがいずれ利益に結び付くという心持ちで、「不断の努力」が必要だ。
また、サービス原価を安くする努力とともに、ユニバーサルサービスコスト維持の基金や仕組みを政治や行政に働きかけていくことも、同時並行で進めなければいけない。
甘えを排した「不断の努力」と、今後の社会における郵政事業の重要性の発信との両輪で、全国津々浦々に根を張り、ユニバーサルサービスを提供する誇りの大本となる郵便局ネットワークを維持し、創業153年の郵政事業を次世代にしっかりと引き継いでいきたい。