インタビュー 日本郵政建築 倉田泰樹社長

2024.08.22

 日本郵政グループの建築に関する高品質な総合支援サービスを提供する新会社の日本郵政建築㈱が7月1日、日本郵政から建築に関連した企画、設計・工事監理等を引き継ぎ、業務を開始した。倉田泰樹社長は「社会や制度の変化とともに郵便局の在り方は変わっていく。局舎づくりもグループと同じ目線に立ち、お客さまと地域に貢献していきたい」と意欲を示す。設計業務以外でも、局長や社員の方が本業に集中できるよう小規模修繕等で生じる事務の一括フォロー体制も進める。目指すところは働きやすく、お客さまからも最善の局舎づくりだ。

人と地域に最善の郵便局舎を

 ――新会社設立後、初の社長ご就任おめでとうございます。御社は郵便局の建築を任された会社と捉えてよいのですか。
 倉田社長 わが社は施設部から継承し、郵政グループが保有する施設を技術的な面から支える会社。設計を通して全国に約2万局ある郵便局を働きやすい場にすることと、お客さまに利用しやすく、安全な施設を設計するのが我々の仕事。
 民営化を機に発注部門と設計部門が分けられ、その設計部門が新会社の前身である。日本郵政グループの経営資源、サービスの基盤となる郵便局で何かが壊れたら直す〝修繕〟だけでなく、壊れる前に直す〝計画改修〟も進めることが郵便局維持のためには重要なポイントなので、引き続き注力したい。
 専門知識を持つ1級建築士の社員が120人以上在籍することも特色の一つ。実際に現場に出て、郵便局の状況や働く方々の業務フローを認識し、極力コストを抑えながら最適な改善策を提案することで貢献したい。

建築の総合支援サービスで貢献

 ――社員の方々の育成を含めて、今後の展望を教えてください。
 倉田社長 「JPビジョン2025+」には引き続き、「共創プラットフォーム」と「リアルとデジタルの融合」が中心に据えられている。リアルあってこそのデジタル。施設だけではなくて郵便局で働く〝人〟こそ財産だ。ご要望にしっかりと耳を傾け、理想的な郵便局づくりにお応えしていきたい。
 新築以外でも、小規模修繕について改善を図っている。今までは局長や社員の方が状況をシステム入力し、業者の方に連絡し、我々につないでいただくフローであったが、これからはコールセンターが状況をお聞きし、手間のかかる作業等を一括して引き受ける形に変えることで、局の本業に集中いただけるよう進めている。新会社設立直前に試行を始めたが、実装に移したい。
 人材育成は、全国8支社から郵便局に足を運ぶ人材を育てたい。2014(平成26)年から新卒採用を再開した建築技術系の若手社員への世代交代も重要。皆が社益に貢献したいと意欲を持てる環境を生み出していきたい。

 ――+エコ郵便局等にも関わりますか。今後の局舎の形はどうなるのですか。
 倉田社長 +エコ郵便局を企画し、資金を出されているのは日本郵便だが、わが社は設計から工事監理までやらせていただいている。環境問題対応はグループとしても重要視され、千葉県の丸山局でCLT(直交集成板)を使用した+エコ郵便局第1号に続き、年間数局ずつ建築している。
 他にも注目すべきは「駅と一体型郵便局」。新たに安房勝山局も開局された。他業種と共創した新しい形の郵便局は今後も誕生していくだろう。
 社会や制度の変化とともに郵便局の在り方は変わっていく。局舎づくりもグループと同じ目線に立ち、お客さまと地域に貢献していきたい。

 ――土台づくりを担う会社として、危機管理をどう意識されますか。
 倉田社長 災害対応はまさに底力の見せどころ。能登半島地震発災直後には、元日であったが速やかに社員が中部支社に集まり、初動で1級建築士社員らを中心に現地局舎等の応急危険度判定を実施した。一連の災害対応は常に他人事ではなく〝自分の事〟として考えているからこそ。
 グループの一員として〝私たちの郵便局〟との発想で災害時も速やかに対応する準備をしている。