インタビュー 日本郵便 髙橋康弘常務執行役員

2024.08.21

 地域で〝選ばれる郵便局〟になるために、デジタル化が進む時代の大波に乗り、強みでもあるリアルとの融合を図る日本郵便の戦略とはどのようなものだろうか。郵便局の窓口事業改革、物販ビジネス改革ご担当の髙橋康弘常務執行役員は「新コンセプトは『郵便局に行けば、必要な品物を買える、贈れる』。物販ビジネスもギフト系商品をお届けするカタログを中心に取り組んできたが、商品ラインアップを広げ、生活必需品も物販ビジネスを通じてお届けしたい」と語る。目指すところは、〝生活全般〟を解決できる、地域密着型の郵便局だ。

生活全般も郵便局にお任せ!

 ――これからの郵便局窓口戦略とはどのようなものになるのですか。特に若い世代へのアプローチは。
 髙橋常務 近年はフリマアプリの商品発送等で若い方々にも郵便局をご利用いただく機会が増えた。金融サービスにも興味を持っていただけるように、さまざまなツールも用意している。局長や社員の皆さんが案内しやすい環境を整え、「郵便局って実はいろいろなサービスやっているんだ!」とまずは知っていただき、利用頻度を高めてもらうための取り組みを行っている。
 例えば、「郵便局アプリ」を起点にコンテンツを充実させ、日頃郵便局を利用されない方々にもリモートでコンタクトし、お手続きを含めて完了できる環境を整えつつある。デジタルを通じてお客さまとの接点を一層強固にする。郵便局アプリから「かんぽマイページ」に入り、契約内容や各種情報が見られる等、郵便局アプリから郵便局の金融商品にコンタクトできるよう日本郵政グループとして整えている。
 このほか、今年1月に抜本的拡充・恒久化がなされ、お客さまの関心を集めているNISAについても、若い世代のお客さまを中心に資産形成の一環として郵便局でスタートしていただき、末永くライフイベントごとにお付き合いいただけるようにしていきたい。

 ――局長や社員の方々に何を期待されますか。
 髙橋常務 選ばれ、利用し続けていただける郵便局になるには、お客さまニーズを的確に把握し、ニーズに応じた商品・サービスを提案する〝力〟が必要。お客さまから「あなたにお願いしたい」と任せていただいている中、商品知識にとどまらず、コミュニケーションスキル等もさらに高めてほしい。
 そのために会社として研修等スキルアップできる仕組みを構築し、力を伸ばせる環境も整えていく。今年1月に販売開始された一時払終身保険は、お客さまのニーズに合った〝郵便局らしい商品〟と好評で、お声がけをちゅうちょしていた雰囲気も一変した。喜ばれる商品を案内できる体験は次への重要なステップになる。
 郵便局は幅広い商品・サービスを扱っており、終活サービス等のライフイベントに関わるご相談に応じられる力も必要である。会社としてファイナンシャルプランナー(FP)の資格取得を推奨している。FP技能士資格2級以上の取得に向けた合格時の受検手数料支援や、資格取得後にも活用できる情報紙も用意している。

 ――「何でも相談できる窓口」になるために重要なツールとして、タブレットの導入計画と終活相談(紹介)サービスの展望は。
 髙橋常務 地域の方々にとって身近な郵便局として、手続きが簡単に感じてもらえる環境を整えていく。社員の皆さんが案内しやすいツールも必要なため、タブレット型PCの配備を進めていく。これによって、お客さまの利便性向上、働き方改革、業務の効率化を実現したい。
 これまでiPadでお客さまに情報を見ていただくものが中心だったが、業務も行えるタブレットを段階的に増やしていく。
 システムによるチェック機能が導入されることでミスが防止され、社員の皆さんも安心して案内できるようになる。お客さまのライフイベントに寄り添える郵便局を目指し、改善していく。
 終活に不安を感じる方も多い中、「郵便局の終活日和」をご案内しつつ、自治体から要請いただく業務等にもお応えしながら、サービス範囲を広げていきたい。将来像として、生活全般に対応できる地域密着型の郵便局を目指したい。

物販ビジネスで一層地域密着を

 ――物販ビジネスを大胆に展開される方針はありますか。
 髙橋常務 ふるさと小包を通じて、各地の素晴らしい産品を全国のお客さまにお届けすることからスタートした物販ビジネスは、今後さらに重要な事業になっていく。これまではギフト系商品をお届けするカタログ中心に取り組んできたが、商品の幅をさらに広げ、生活必需品も物販ビジネスを通じてお届けできるようにしていきたい。
 「郵便局に行けば、必要な品物を買える、贈れる」を新たなコンセプトに、「贈れる」にとどまらず、「買える環境」をセットで創りたい。買い物支援も、簡単にお申し込みからお届けまでフルセットの商品ラインアップ充実を目指す。
 今年度は、業務用に配備しているタブレット(iPad)で、申込書の電子化を進めながらお客さま情報を蓄積し、ゆうIDとの連携等でお客さまにマッチした商品を案内できるよう、物販ビジネスとして電子化にも力を入れている。
 「郵便局のネットショップ」の操作性や利便性、商品ラインアップ見直し等を一層利用しやすくすることで、さまざまな切り口によりお客さまの元へお届けできる。物販を重要な事業に育てることで〝選ばれる郵便局〟になっていける。

 ――DXといえば、郵便局でのオンライン診療の展望等は。
 髙橋常務 総務省によるオンライン診療の実証実験が、石川県七尾市の南大吞局で行われ、地域住民の方々のニーズにどう郵便局が応えられるかを探る重要な機会になったと思う。山口県周南市の高瀬局でも実装が始まったため、次の展開につなげていきたい。
 医療の充実は「生活の安定」そのもの。郵便局がどのような形で地域のお役に立てるのか、医薬品等のお届けができる強みも生かしつつ自治体と連携を深め、市や町、村ぐるみで取り組むことが重要である。