未来座 中若局長オンラインインタビュー いんどう周作議員を囲んで(下)

2025.11.06

 「強く、しなやかな国づくり」を目指すいんどう周作議員。北海道地方会(会長=沼袋浩全特理事/芽室)の鈴木彦和局長(北後志地区会/銭函)と、九州地方会(会長=宮下民也全特副会長/熊本西原)の松下宏光局長(熊本県南部地区会/亀尾)のオンラインインタビューに対し、いんどう議員は「地域に根差す〝郵便局長の現場力〟は日本郵政グループにとってアイデアの宝庫だ」と指摘する。また、「現場中心のビジネスモデル、組織体制の在り方を模索し、次期中計に盛り込んでいただきたい」と熱い思いを語った。

郵便局長の〝現場力〟は宝

 鈴木局長 三事業は今、さまざまな諸問題を抱えていますが、郵便局の金融改革に向けてはどうお考えですか。
 いんどう議員 これまでのビジネスモデルは郵便減少を金融事業で穴埋めする形だった。日本郵政の金融2社株式の保有割合が減る中でも、三事業一体は堅持しなければならないと思う。継続審議となった再び改正する郵政関連法案にも〝三事業一体〟が明記されている。
 デジタル化の波が押し寄せ、金融業界は変わった。郵便局も民営化した以上は状況もにらみつつ、新商品・サービスを開発しなければならないが、ゆうちょもかんぽも大手銀行、大手生保に追い付こうと、もがいているようにも見えてしまう。
 ゆうちょとかんぽは、前島密翁がつくった郵便ネットワークを活用し、地域の方々の個人金融として郵便貯金、簡単に地域の方々が入れる簡易生命保険だった。原点を忘れてはならないと思う。むしろ地銀や信金・信組との共存共栄を図り、地域の皆さまの暮らしを支えていただきたい。
 「デジタルとリアルの融合」の中で生まれてくる郵便局を拠点とする新サービスにも資金が必要だ。地域の銀行業、地域の保険業という原点に立ち返り、地域のための金融事業を構築しなければいけないと思う。

次期中計は〝地域〟に照準を

 松下局長 今後、柔軟な発想をもとに各地の郵便局で収益を得るためには、どのようなことを行うべきとお考えですか。
 いんどう議員 その答えも〝地域〟にある。地域に根指す〝郵便局長の現場力〟は日本郵政グループにとってアイデアの宝庫だ。もともとの三事業もそうだった。局長や社員の皆さんの地域とのつながり、ネットワークの中で新ビジネスを生み出していくべきだ。一獲千金で大もうけする世界でなく、〝地域ならでは〟の困り事を解決するサービスを、地域の方々と一緒に郵便局を拠点に創り上げていく必要がある。
 日頃の地域活動で把握された課題を長谷川先生や私に教えてほしい。実現に向けて働かせていただきたい。まだまだ、さまざまな可能性を秘める郵便局ネットワークを生かしきれないように感じる。
 新ビジネスを「地域のために何ができるか」を軸に考えると、大もうけはできなくても、一定の利益が得られるのであれば実現に導きたいし、維持できるよう制度面での働き掛けも頑張りたい。日本の地域社会を守るためにも、しっかりと前に進めなければいけない。

 鈴木局長 いんどう先生がスローガンにされた〝しなやかな〟という部分がとても好きです。日本郵政グループは次期中期経営計画を策定中ということですが、盛り込むべきと期待されることはありますか。
 いんどう議員 価値観が多様化する激動の時代に、柔軟に考える意で使わせていただいたが、しなやかでも軸は持たなければいけない。軸とは前島密翁の「縁の下の力持ちになることを厭うな。人のためによかれと願う心を常に持てよ」だ。
 次期中計は、地域の暮らしを支える三事業を中心としながらも、三事業以外で郵便局とこれまで付き合いがなかった地域のさまざまな分野の方と連携し、郵便局を活用することで、その地域の暮らしを支える方向性を打ち出していただきたい。次期国会で成立を目指す改正法案に記す「公的サービス」を会社と政治が一体の思いで法案に沿った次期中計にしていただきたい。
 もう一つは、硬直的な組織の在り方を変えていただきたい。自由な発想で、しなやかに地域の方たちと一緒に地域のためのサービスを開発してほしい。肝は、供給サイドではなくて現場目線に立って、地域の方々が「何が困っているのか」を聞き、現場中心のビジネスモデル、組織体制の在り方を模索し、次期中計に盛り込んでいただきたい。
 局長や社員の皆さんが困っていないか、どうすれば仕事がやりやすくなるのかを考えた経営改善を、人材投資を含めて実行してほしい。先行投資は赤字になるが、3年~5年後には生産性が上がり、利益につながる。

 松下局長 改めて〝地域の拠点〟となる郵便局の大切さを感じます。先生の地元の熊本県人吉市は、2020(令和2)年7月と今年8月、豪雨に襲われました。各地でも災害が多発する中、「防災」へのご教示をお願いいたします。
 いんどう議員 熊本を中心とした九州豪雨もしかりだが、北海道や東北地方等でも集中豪雨が起き、静岡県等では竜巻被害にも襲われた。自然災害がどこでも起きることを前提に、防災拠点を各地域で準備する必要がある。拠点は地域ごとに単体で整備しても駄目で、広域災害に向けて、この拠点が倒れた時に隣町の拠点でカバーできるような計画的な準備が必要で、その際にはデジタルで皆が情報を共有できる。
 この拠点にはどういう物資が備蓄され、こちらの拠点はどの程度の浸水に耐えられるか、高齢者の方がどの地域にどれぐらい住み、要介護か? 食事制限は? トイレはどれぐらい必要なのか? 等々、事前にデータから整理できる。
 地方公共団体と郵便局と地域のさまざまな防災関係事業者の方がそれをもとに議論し、防災体制を構築しなければいけない。防災ネットワークをつなぐべき拠点は〝郵便局〟を活用すべきだ。
 全国各地を回って耳にしたのは、耐震等で局舎を建て直そうとした時、全部同じ規格、デザインで造るように言われるそうだが、各地域の多様性に合った郵便局の造り方があると思う。
 その地域の住民の方々が「行きたくなる郵便局」の在り方や姿を考えるべきだろう。