インタビュー 平山泰豊九州支社長

2025.10.10

 就任から半年が経過した平山泰豊九州支社長は鹿児島生まれ。八つもの県から成り立ち、自然災害も多い広大な九州全域で「社員の活性化」と「地域とのつながり強化」を目標に掲げている。平山支社長は「郵便局の中から外を見るのでなく、ロビー側から見るとお客さまは何がしてほしいかが見えてくる」と話す。「企業との接点を持つ郵便局長の皆さんや法人営業社員と連携し、つながりを活かさなければならない」と意欲を示す。

「お客さま目線」で郵便局を見よう

 ――ご抱負をお願いいたします。
 平山支社長 かんぽ生命から九州支社長に就任した私にとって、郵便・物流を含めて、日本郵便の仕事の幅広さと深さは驚きと感動の連続だ。社員の真剣に仕事に取り組む姿勢に大変に感謝しているが、もう一歩、階段を上りたいのは①社員の活性化②地域とのつながり強化――の2点。
 就任直後、社員の皆さんに「お客さま目線から物事を見よう」とお願いした。郵便局の中から外を見るのでなく、ロビー側から見ると、お客さまは何がしてほしいかが見えてくる。地域の方々とのつながりを深めることで、「何か買う時には郵便局」「何かあったら郵便局に相談」となっていけるよう、個々の郵便局で働く社員一人一人の取り組みが変わることで全体を活性化していきたい。

 ――郵便局ネットワークの公益性と収益性の両立とは。
 平山支社長 全国約2万4000局のうち、九州は簡易局を含めて3444局(7月時点)。そのうち1800局が過疎地にあり、奄美、壱岐・対馬列島には約200局ある。
 山間部や漁村部に囲まれる離島は高齢者の比率も高い。コンビニもなく、郵便局しかない地域も多い。約1900局で実践する無人販売も地域の方々から喜ばれ、暮らしや経済の中心、災害拠点としても期待されているのが郵便局だ。
 収益性と公益性の両立は難しい課題だが、地方の郵便局の存在価値を維持するのも重要なポイント。都市部と地方の郵便局の両立により、ユニバーサルサービスが成り立つことを国民、お客さまにご理解いただかなければならない。地方で収益を上げる手段として、地方公共団体との連携がある。

 ――熊本県天草市内の全局で包括事務を受託されていますね。
 平山支社長 「振り込むついでに住民票の写しも取れるから便利」「地元の郵便局だから顔見知りで来やすい」と地域の方々の評判も上々。非常に安定し、毎月一定数の住民の皆さまから喜ばれている。社員も「これまで郵便局をご利用いただいていないお客さまが来局されるようになった」と喜んでいる。
 市内全局での受託は関心が高いようで、全国から問い合わせや視察が相次いでいる。他の地公体に伺う時も、天草市の状況を聞かれることが多い。先般も熊本市長にお会いした際に「天草の事例は今後の日本を見据えた好事例として参考にしたい」と話をいただいた。

 ――鹿児島県大島郡加計呂麻島のかけろま瀬相局(禱広哲局長)で、総務省の実証事業として「遠隔相談システム」も始まったようですが、「オンライン診療」を含めて今後の展望を。
 平山支社長 加計呂麻島には私も行って、「遠隔相談システム」を地域の方が使われる様子を拝見し、お客さまの笑顔がうれしかった。システムから相談相手の顔が見えるのは安心だ。熊本県の御船町と加計呂麻島の2カ所が「遠隔相談システム」事業に取り組んでいる。システム導入は地公体に費用を出してもらう辺りがネックでもある。
 郵便局のオンライン診療は九州ではまだ導入されていないが、ご相談は4カ所からいただいた。現状、郵便局での対応事例が場所提供や通信サポートに限られているが、団体側のニーズを把握しながら、郵便局として対応可能な部分を模索していきたい。

 ――買い物支援が必要な地域も多いと思います。日本郵便は近く宅食サービスも開始されるようですが。
 平山支社長 熊本県上天草市の離島、湯島で総務省の実証事業「湯島招く猫プロジェクト」が湯島局(岩崎光一局長)中心に、準備でき次第、10月中をめどに開始予定。急坂も多い島で「巣ごもり独居老人」の方が増えている。
 商店もなく、日用品購入も大変なため、買い物等全て郵便局で解決する実証事業。地域経済活性化とコミュニティー再生に向けた郵便局の利活用は大変に期待されている。
 宅食サービスもニーズが高い地域は多くあると思う。さまざまな共創ビジネスは各企業の特性を理解し、連携することが重要。異業種交流を広げるために企業との接点を持つ郵便局長の皆さんや法人営業社員と連携し、つながりを活かさなければならない。何事もできないと決めつけるのでなく、どうすればできるかを考えるところから始めることも社員活性化の一つだと思う。

地域と〝つながり〟強化!全員でまい進

 ――地域創生や新ビジネスについて。
 平山支社長 実は、九州支社7階講堂のベランダから見える熊本城は驚くほどの絶景だが、市民の方々はご存じない。結婚式の前撮りや企業に時間貸しすることを今考えている。郵便局は立地の良い所に多くある。持てる資産を生かさない手はないと思う。
 一方、熊本市内9カ所(うち郵便局設置は7局)で、チャリチャリ㈱の自転車シェアリングサービスのポートを設置し、社員が設置場周辺を掃除してくれている。目立たないことかもしれないが、それも地域貢献であり、郵便局の存在価値を高めるため、さらに広げたい。いろいろな企業の皆さまから業務提携を含むご提案もいただくが、こうした草の根的な取り組みに力を入れたい。

 ――地域防災はどう取り組まれますか。
 平山支社長 豪雨も台風も地震も火山噴火もあって、いつ災害が起きてもおかしくないのが九州。「地域とのつながり強化」の中でも「地域防災」は特に力を入れたい。
 南海トラフ地震が起きると太平洋に面し、海抜の低い宮崎県や大分県は大きな被害が出る。日頃から地公体や関係団体、企業、そして地域の方々としっかりつながり、地域を守れる体制を整えたい。

 ――郵便局窓口の仕事をどう見ていらっしゃいますか。
 平山支社長 郵便局は今もお客さまの人生を預かっている。学校に合格する、就職、人生を彩るイベント時に郵便が使われる。メール時代になればなるほど、その価値は高まる。お金の振り込みも貯金がベース。保険も学資のほか、入院や死亡時も補う。人生を支える郵便局の良き部分を社員一人一人はあまり認識していない状況が残念だ。
 小池信也社長の方針のもと、「組織風土改革のためのスモールミーティング」もスタートした。社員一人一人がさまざまなシーンの行動を振り返り、自らに問い掛ける。
 約3万2000人の郵便局社員を10人ずつチームに分け、九州支社係長以上がファシリテーターとなり、スモールミーティングを開催する。支社の社員が郵便局現場社員の頑張りを知る良い機会。管理者の皆さんを含む社員全員の活性化を目指していきたい。