インタビュー 全国郵便局長会 宮下民也副会長
九州に100以上ある有人離島をほぼ全て回ったという全国郵便局長会(勝又一明会長)の宮下民也副会長(九州地方会会長)は「今後、郵便局はデジタル拠点にもなるべき。キャッシュレス時代の本格到来に向けて、例えば窓口に対面相談コーナーが並ぶ郵便局」と話す。また「都市部でも一層、高齢化率が高まり、独居老人の方も増えた。〝お仕事コンビニ事業〟を全国展開できれば必要な人材を送れる。各地の産業と郵便局がコラボし、地域課題を解決できる形をつくっていきたい」と語る。
何でも相談できる郵便局の形を
――いんどう周作参議院議員の誕生、おめでとうございます。改めて、副会長2年目としてのご抱負を昨年度の振り返りとともにお聞かせください。
宮下副会長 いんどう相談役の勝利は会員一人一人の地域からの信頼の証し。信頼の絆はデジタル化の時代にますます大切さが増す郵便局の価値であり、局長が日頃から地道な努力を積み重ねた結果であると確信している。
2024(令和6)年度は、いんどう後援会と郵政関連法見直し法案に対する議員への働きかけが活動の中心となった。私は全特の中で局舎問題と地方創生・地域貢献を担当し、今年度は基本問題も加わった。会社にとっても店舗戦略は重要であり、特に耐震性能が不足している局舎の改善が急務である。物価や人件費の高騰が続く中でも早期に改善が図られるよう、会社に申し入れていきたい。
地方創生は第四事業として早期確立を目指したい。沖縄と北陸で郵便局長が主導する新規事業の足掛かりが構築できた。新年度はさらに他地方でも郵便局長が主導する事業の実用化を本格軌道に乗せたい。地域貢献は郵便局長の基本の基。局長による地域貢献は郵便局の存在価値を高めてきた。
しかし、近年は新任局長の顔が地域の中で薄まっているのではないかとの課題も浮上している。今年度は改めて地域貢献に着目し、ネットを利用した発表会等を活用して、特に新任局長の理解、浸透を深め、拡大したい。
――地方と都市の郵便局を生かす方策をどうお考えですか。
宮下副会長 人の少ない地方で事業を採算ベースに乗せるのは至難の業で、自治体との連携が必須。地方の生産物の都市部での販売は人手不足の中、生産まではできても安定供給が課題だ。
今、郵便局窓口で人材を手配する「お仕事コンビニ」の実証事業が一部地域で行われている。移住・定住も大切だが、移住の後の課題は移住先の仕事。農業や漁業等の仕事に携わる人材を都会から派遣し、全国の郵便局ネットワークで販売する形ができるとよい。
都市部でも一層、高齢化率が高まり、独居老人の方も増えて自治会運営等が課題と聞く。「お仕事コンビニ」事業を全国展開できれば必要な人材を送れる。各地の産業と郵便局がコラボし、地域課題を解決できる形をつくっていきたい。
〝人〟のいるデジタル拠点に
――〝リアル×デジタル〟と郵便局の展望を。
宮下副会長 デジタル化が進む中で特に恩恵を受けるのは高齢者の方々だ。ただし、使いこなすにはリアルの場所と人を介さなければ難しい。郵便局窓口のデジタル化は他金融機関や宅配会社と比較しても遅れているが、今後、郵便局はデジタル拠点にもなるべき。
これまでの郵便局の概念をある意味で壊し、先進的な発想でキャッシュレス時代の本格到来に向けて、例えば窓口に対面相談コーナーが並ぶ郵便局の方が断然価値は高まると思う。
郵便や荷物の受け付け、貯金・保険もタブレットで行うシステムを作り、社員は金融や行政等の相談を受け付ける〝人〟がいる郵便局機能を果たす。沖縄の一部郵便局で試行される「よろず相談窓口」のイメージだ。
――離島をどのくらい回られましたか。オンライン診療や買い物支援の必要性をどのようにお感じになられましたか。
宮下副会長 九州の有人離島はほぼ全て回らせていただいた。一番遠かったのは鹿児島から船で12時間かかる宝島。今、地震が多発するトカラ列島の南端にあるが、島に唯一ある売店がキャッシュレスだったことには驚いた。
離島には郵便局以外に公共的な施設がないため、郵便局が行政サービスからコンビニのような買い物支援、オンライン診療等をどんどん進めるべきだ。
国境の役目も果たす離島に人が住まなくなることは国としての一大事。領土問題の視点から、国境の離島の郵便局は国の支援があってよいのではないかと思う。
郵便局は必要不可欠だが、局長や社員も後継者がいなくなる可能性が高い。簡易局の場合は請負者の方がいなければ続けられないが、直営局は転勤もでき、次世代につないでいける。離島のフェリー乗り場で郵便局とヤマト、佐川の配達請負人の方が3人待っており、もっと協業すべきだと感じた。
――農業と郵便局の連携による物販の充実、半日営業については。
宮下副会長 農業も、漁業も特産品を全国に送り届けることで地域振興になる。ふるさと小包が発足した原点に立ち返り、安く、安心な特産品を全国ネットワークにより販売することは大事。そのためには冷凍が必須だ。
チルド以上の冷凍ゆうパックができる日が待ち望まれている。また、農業や漁業の事業者の方がもっと簡単に郵便局のネット販売に参入できるシステム構築が求められていると思う。
半日営業は、離島で漁業者とタッグを組み、魚加工品販売に従事する局長は、自宅が工場、ご夫人が社長を務めるといったことができると思う。日本郵便本社の幹部が視察した際、「フェリー到着に合わせて郵便局を半日開局し、半日は加工品経営もできるのでは」と言われ、なるほどと思った。
局長が農業や漁業の経営者になって郵便局が一部資金を支援し、工場等を充実できれば郵便局全体の収益も増えるはずだ。
農業も後継者不足。米価格が高騰し、危機的状況だ。局長が全て行うのはハードルが高いが、農業に従事できる人材を「お仕事コンビニ」で募集し、デジタルを駆使する次世代型先進農業に挑戦し、新しい農業づくりに郵便局が貢献できると良いと思う。
――防犯の体制づくりに向けて。
宮下副会長 犯罪には動機がある。ギャンブルや多重債務が大半を占め、原因は主に依存症。多重債務に陥る一種の病のため、根を断たなければならない。家族ですら依存症の傾向性に気が付いていないことが多いが、近年、AIを使った対話形式のテストで傾向を持つか否かを確認できるとも聞いている。
他人の方のお金を扱う極めて大切な仕事を担う郵便局だ。根本の病を発見し、治療しながら仲間と家族で見守ることが重要。九州地方会では、依存症についての研修を局長と夫人を含めて行う形で防犯に力を入れている。