インタビュー 全国郵便局長会 黒岩伸一理事 (関東地方会会長/草津)
全国郵便局長会(末武晃会長)は、郵政事業と地域社会の発展に寄与するため、地域に密着して日々活動している。黒岩伸一理事(関東地方会会長/草津)に郵政事業や地域への強い思いを伺った。
国民生活をさらに守る郵便局に
――全特の専門委員会で注力されていることをお教えください。
黒岩理事 基本問題と集配センターマネジメント統合は主任理事を務め、置局・局舎も担当している。今、主眼に置いているのは将来に向けて希望を持てる構想だ。
すでに実証実験が行われているライドシェアやオンライン診療のほか、よろず相談、集落支援員、過疎地等のエリマネ局の局長・社員による配達の試行も検討の対象としている。
集配センター統合については、局長一人で何から何まで見ているため負担が大きい。一方、能登半島地震の発災後に配達を早期に再開できた要因は、多くが統合局だったということもある。地元に住む局長が配達の指示をすぐに出せた。さまざまな課題や現状を見極めて進めていくことが大事であると思っている。
局舎では耐震補強対策が重要。会社は2027(令和9)年度までに全局舎の耐震化を行うとしており、その方法等について申し入れているところ。局長・社員の方たちの命を守ることが最優先。老朽化対策も含めて会社に積極的な対応を求めていきたい。
――自治体との連携施策も活発です。
黒岩理事 群馬県前橋市内全局では全国に先駆けて、2017(平成29)年からマイナンバーカードの申請手続きなどが行えるタブレット端末を設置し、カード取得を促進してきた。同長野原町の応桑局では十数年前から各種証明書の交付などを町から受託している。
そのほか、高齢者等の緊急連絡先や服薬情報などを記入する「安心カード(安心キット)」の配布やプレミアム商品券の販売、手紙文化振興の施策、フードバンクなど多彩な取り組みを実施している。
10月に前橋市で盛大に開催された「ブックフェス」では、本の寄付を局でも受け付け、会場に設置した出張所から本をゆうパックで全国に発送した。地域活性化に郵便局はなくてはならない存在となっている。
――栃木県宇都宮市で、郵便局が協力したイチゴ栽培が始まりましたね。
黒岩理事 福田富一知事や佐藤栄一市長をはじめ、地域の期待がものすごく大きい。梨の季節が終わると雇い止めになっていたところが、イチゴ栽培によって通年雇用でき、雇用の促進に役立つ。
郵便局のカタログ販売で、地域の活性化にも貢献できる。このような地域産業とコラボした取り組みを全国でも展開できればと思う。
――郵政関連法の改正については。
黒岩理事 郵便・物流事業の赤字が続く中、人件費の削減、郵便料金の値上げを行ったが、このままの状態では厳しい状況。一方、人口減少で金融機関の撤退が相次ぐ中、一体誰が国民生活を守るのか。
郵便局ネットワークを守り、どの地域でも郵便局のサービスを受けられるような「国民生活を守る」ことを念頭に、国の財政支援を含めた郵政関連法改正を求めている。国会議員の先生方も全員が賛成していただけるものと思っている。
――人材育成では。
黒岩理事 これからの時代はより一層女性活躍に力を入れるべきだ。採用の多くも女性で、局長候補になる方も多いが、男性、女性にかかわらず、家庭や子育て、介護等の状況で難しい場合もある。子育て中でも活躍できるような環境整備が必要だと思う。
また、関東会で中堅・若手局長の育成に各地で懸命に取り組んでいる。局長を目指した時の使命感を持ち続けられるよう、全力で応援していきたい。