生活にドローン、レベル4対応の新機体
日本郵便、日本郵政キャピタル、ACSLは、改正航空法によりドローンが人の上空でも目視外飛行できるレベル4が解禁された12月5日、次世代ドローン新機種を国土交通省に申請した。生活空間にドローンが入る機会を逃さないよう準備を重ねてきた3社は、今年度内の認証取得をにらみ、2023(令和5)年度内に山間地や離島での実装を目指す。最大積載量が従来機より3倍の5㌔㌘まで、最大飛行距離が3.5倍の35㌔㍍まで飛行できる大幅な性能向上を実現した赤い新機体には、郵便ポストの投函口をほうふつさせる口と目が白く描かれ、〝親しみ感〟を放っている。物流の姿を塗り替えるドローン実装元年の幕が開けた。
日本郵便×日本郵政キャピタル×ACSL
申請翌日の12月6日、日本郵便とACSLは記者会見を開催した。日本郵便の金子道夫専務取締役兼専務執行役員は「日本郵便は将来を見据えたドローンや配送ロボット、先端技術を取り入れたオペレーションの効率化に取り組んできた。さらなる強化を目的に、21年6月に3社で資本・業務提携を締結。その成果として物流に特化した新型機を本日、披露させていただく。レベル4解禁により、ドローンの社会実装は一層現実的なものになった」と強調した。
「ドローン物流を社会実装するための物流専用機」の新機体は、①生活空間に溶け込む愛らしいデザイン②レベル4認証を取得できる安全性や信頼性の担保③物流の受け取り手と担い手双方の利便性――の3点をクリア。全長1.5㍍×1.7㍍、高さ50㌢の流線形は柔らかな印象も醸し出している。
ACSLの鷲谷聡之社長は「22年12月5日は航空界、物流業界にとって歴史的な日。人類が専用車両で輸送を開始してからちょうど100年の節目の年に、有人飛行を解禁した日本の制度は世界をリードしている。より便利で安心、快適な生活を享受いただくために日本郵便様と共に日本の物流イノベーションを起こしたい」と意欲を示した。
レベル3は無人地帯の飛行のため、不具合があったときは墜落が安全運用になるが、レベル4は有人地帯の飛行ゆえに墜落はご法度。安全性を大幅に高め、ゆっくり下ろす高度な技術も求められた。レベル4に対応できる次世代ドローンを作るため、日本郵便から「一度に多く運べる大きめの機体と積載量」と「飛行距離の延伸」がACSLに依頼されていた。
日本郵便オペレーション改革部の西嶋優部長は「思いもかけなかった飛行距離の機体を作っていただけたことで、届けて戻る〝配送〟にとどまらず、郵便局間の〝輸送〟活用も想定できる。ドローンは空中を一直線で目的地に向かうためスピードが速い。大回りした配送ネットワークを変える議論もしている。自動運転ロボットの組み合わせも適合地域を考えながら進めたい」と語った。
本格実用に向けたさらなる課題は、①山間地や海を越える間の「電波的課題」の技術②雨風に耐える受け渡し時の運用③費用対効果――の3点。受け渡しは利便性向上や場所の拡充のほか、事前のお知らせ等も検討する。
ドローンについて意見を交わす増田日本郵政社長(右から4人目)、松本総務大臣(同2人目)ら (元旦出発式)