第4次提言を岸田総理に ニューレジリエンスフォーラム

2024.06.01

 感染症や自然災害に強い社会を目指す「ニューレジリエンスフォーラム」(三村明夫会長)が4月25日、岸田文雄総理に第4次提言を提出した。提言は①災害対応の統合司令塔を設置し、国・地方の指揮系統を確立②自治体は各業界団体との包括的防災協定を締結③半島地域等の過疎地におけるインフラの強じん化を急げ④被災者目線の避難所に改善を⑤緊急事態対応に係る憲法条文案の具体化――の5本が柱。同フォーラムは全国郵便局長会の末武晃会長(写真の右から4人目)をはじめ、医療や経済、自治体、防災、福祉など各界代表30人が発起人になっている。

地域防災に郵便局の力も

 提言提出後の記者会見で松本尚企画委員長が「郵便局は地域防災の司令塔になれるか、あるいは拠点になるか、これからの問題だが、しっかり(郵便局を)活用していく必要がある」と方針も示した。

免震構造(回復力)的社会を
郵便局の防災力に期待も

 
三村明夫会長(日本製鉄㈱名誉会長) 本日総理に第4次提言を手交した。能登半島地震の教訓を受けて、次なる自然災害への準備も念頭に、早急に対応すべき事柄に焦点を当てた。これまでの提言を前に進めて、平時から緊急時への切り替えの緊急事態宣言に係る憲法条文の提案にも踏み込んだ。

松本尚企画委員長(日本医科大学特任教授) 感染症や自然災害を打ち返す「耐震構造的社会」づくりでは、頻繁に起きる災害に耐えて傷つくばかりのため、しなやかに押し返せる「免震構造的社会」づくりには何が必要か、提言を進めてきた。

横倉義武共同代表(日本医師会名誉会長) フォーラムの立ち上げ当初は医療系の人間が主に活動してきたが、震災が頻繁に起き、自然災害対応もより重要と認識。市町村や経済界にも入っていただくため、三村氏に会長になっていただき、一段と力を得て活動できる。

河田惠昭共同代表(関西大学特任教授・社会安全研究センター長) 
私は防災の専門家。南海トラフ地震が起きると、内閣府防災の被害想定でも20万人を超える死者が出る。能登半島と同じような状況になるのが鹿児島、宮崎、高知、徳島、和歌山、三重、愛知、静岡の8県。ただ、一番被害が大きいのは大阪市と評価されている。起こってから改善策を検討しても遅い。

 【記者団の質問】
 ――改憲の条文案に対し、総理から何かコメントはありましたか。
 三村会長 総理の反応は非常にポジティブ。全般的によくご存じで、日常から考えていた中身に対し、今の段階で提言があったことを非常に評価いただいた。司令塔の設置は意見がさまざまあり、今後議論を深めたいということだった。能登地震が起こった直後のため、積極的な議論をお願いした。

 ――一部政党からも緊急事態に関する条文案が出ているが、策定にあたり、こだわったポイントとは。
 横倉共同代表 緊急事態の宣言をすることは多くの異論があると認識していない。ただし、何をもって緊急事態とするかは「内閣総理大臣は、大規模な自然災害や感染症のまん延等の事態が発生した時は」とある程度限定し、書かせていただいた。2点目は緊急財政支出。いついかなる事態が起こっても、しっかりと立法できる仕組みを残すために書かせていただいた。

 ――第4次提言にある「各種団体の活用」で郵便局を備蓄の拠点などに役立てる考えはありますか。防災体制は自治体により格差が激しいと聞きますが、対策のイメージは。(郵湧新報)
 松本企画委員長 約2万4000局が過疎地にも広がっているため、郵便局を使わない手はない。郵便局が公的ないろいろなサービスを続けていく上で、災害とリンクさせていくことは非常に重要。防災士の資格を取得した局長の方も多いと聞く。郵便局は地域防災のある意味で司令塔になれるか、あるいは拠点になるか、これからの問題だが、しっかり活用していく必要があると思う。
 防災行政に温度差があるといわれてきたが、提言第2項目で、緊急時に自治体の足りない部分を国が補完できる法改正も行う、全国均一的な防災力の強化を盛り込んでいる。

 【フォーラムは5月30日、日本武道館で「感染症と自然災害に強い日本を!」をテーマに「1万人大会」を開催】
 横倉共同代表 大会では、石川県七尾市の恵寿総合病院の神野正博理事長にも発表いただく。恵寿総合病院は建て替える時に免震構造にしたり、水道が使えない時に井戸水を使える設備を造ったり、準備をしっかりやっていたことで、発災翌日から通常の手術、出産、人工透析など必要な医療が提供できた。

 河田共同代表 そこから約500㍍離れた国立の拠点病院は、発災後は全く動いていなかった。日常の活動を続け、災害時にお風呂を一般住民の方々にも開放した恵寿総合病院は非常に地域密着型の貢献度が高かった。