続・続 郵便局ネットワークの将来像㉔
デジタル庁が推進する自治体の「書かない窓口」。少し寂しい気もするが、DX化は、いや応なく進む。そうした時代に郵便局がさらに求められる存在になるために今、準備した方がよいものとは何だろうか。
三事業と地域創生ビジネス
両立は〝つなぐタブレット〟で
北海道北見市に続き、全国で2番目に「書かない窓口」を導入したのが埼玉県深谷市。以前はあった記載台がなくなった。
市民課の清水昌彦課長補佐は「以前から市民の方々の情報はあっても申請書のデータがバラバラだった。統一化したデータベースにできるよう全国で初めて〝書かない窓口〟を実現した北見市と同じ事業者のシステムを深谷市も導入した。記載台前に立つ案内や、申請書類を確認するバックヤード審査の人員は必要なくなり、別仕事ができるようになった。市民の方には、役所の中で何か所も回らなくて済むため、喜ばれている。来庁者数は今も変わらない。まだデジタルに弱い方も多い」と話す。
香川県東かがわ市は、市町村合併を機に支所を出張所として、その後、出張所が五名局(辻忠志局長)と福栄局(兒島保局長)内に入り、局と市窓口が共存する形で市民サービスを維持してきたが、4月から2局が市の窓口を局が引き継ぐ形で包括事務を受託し、局内は局の社員のみになった。
石川伸一市民部長兼保健福祉事務所長は「2021(令和3)年の法改正によって、代理人請求が郵便局でもできるようになったため、包括委託できると考え、協議してきた。人口減少で今後、市の職員数はどんどん減っていく。郵便局の力を借りなければ行政サービスなど維持できない。郵便局とは昨日きょうの付き合いではない。局長さんもよく市長室に来られている」と語る。
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以前もこの連載に登場いただいた栃木県中部地区連絡会の大島秀一統括局長(藤原高徳)は「結局、日頃の付き合いがなければ三事業にもつながらない。郵便局が生き残るには、収益を得られる地域創生・地方創生の仕事をすることで三事業にもつなげられる形を作ることだ。三事業をやりながら取り組めるビジネスになっているかをスタートラインと考えなければ持続可能性がない」と指摘。
三事業と地方創生を両立する鍵を握るのが「郵便局と自治体等をつなげるタブレット端末だ」と強調する。
「日光市から包括事務を受託した清滝局や川治局に配備された市と局をつなぐタブレットが良かったのは、市民の方が直接相談する状況を見ながら現状の受託項目以外にも〝市民が求め、郵便局にもできること〟のニーズに市が気付いてくれたこと。市は局への事務委託以降、本庁舎のタブレット台数も倍に増やした。総務や住民課にしか置いていなかった局と、つなぐタブレットを水道課やさまざまな課に配置した。郵便局とタブレット連携することで、いろいろな情報が集まり、発展性ある施策の源になっている」と展望する。
郵便局タブレットでの行政との連携が期待される
「マイナンバーカードの5年更新手続きも始まっているが、市は『数が多過ぎて、自分たちだけでは対応できない。自治体以外でもできるのは』と話し出している。総務省が支援してくれる携帯電話ショップがない自治体の局だけでなく、申請サポートできる局が増えれば『更新事務もお願い』と各地域で郵便局の存在感が高まる」と語る。
マイナカード申請サポートは実質、携帯ショップが主流のようだが、カード保有者が5年ごとに必須となるカード搭載の電子証明書発行・更新事務は法律の下、自治体以外でできるのは郵便局のみで、現段階は他企業では扱えない。
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第68回前島密賞を受賞した岩田一政前郵政民営化委員長が受賞者代表のあいさつで語っていたのは、シンガポール郵便貯金銀行を売却したシンガポール郵便の苦悩だけでなかった。
「ファンドを数多く組成し、投資信託の窓口販売を通じて日本のイノベーション生成に貢献すべきだ」という締めくくりの言葉の中に〝窓口〟と出てきたことが、大きな励ましに聞こえた。郵便局、日本郵政グループは、そこにどう応えていくのだろうか。