求められる郵便局のマイナ業務

2022.12.30

 総務省情報通信審議会郵政政策部会(米山高生部会長)は11月21日、デジタル先進自治体の群馬県前橋市・兵庫県加古川市・石川県加賀市からヒアリングを行った。人口減少が進む地方都市の眼から社会の未来像を見据えた「デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り方」を審議。総務省が10月14日~11月16日に行った1116市町村へのアンケート結果からも可能性を探った。公的な役目とともにコンビニ的な間口の拡大や、マイナンバーカード関連業務を郵便局で完結を求める自治体が多いことも明らかになった。

郵政政策部会、3市からヒアリング

 【前橋市・大野誠司副市長】 マイナカードは出来上がった時に市役所に取りに行かなければいけないことが、特に高齢の方に負担との声もある。カードができても市役所に取りに来ない方もいて、本人限定郵便で送付できれば市役所にカードが滞留する課題も解決できる。
 郵便局の局長や社員の方が市の職員代理として「マイナカード申請時本人確認方式」を実現できる制度整備の検討を依頼したい。マイナカードを使っていただくサポートは必要不可欠。郵便局が住民の方々をケアできる拠点になっていただく制度整備をお願いしたい。
 さまざまなサービスを全国一律の料金は合理的だが、例えば、マイナカード申請に係る手数料は地域によっておそらく見方が全く異なる。一つの行政手続きを委託する際に縦割り的なコスト感で○と×がついてしまいがちだが、一つのサービスで赤字が出ても、全体で日本郵便にも自治体にもメリットがある契約形態を現場に近いところで議論できると非常にありがたい。

 【加古川市・多田功スマートシティ推進担当課長】 市民参加型合意形成のプラットフォーム「Decidim(デシディム)」を国内で初導入。BLEタグ(ビーインタグ)を内蔵した「見守りカメラ」を市民の合意形成を図り、1475機を市内に設置。古川警察署と協定を締結した。
 カメラが小学生のランドセルに入れたBLEタグを郵便車両で検知して、家族に位置情報を知らせるサービスを実施。保護者の方々から「最近、共働きの世帯も増えている。仕事中に、子どもが家にいるのか、塾に行っているのか確認できるため、非常に有用」などの回答を得た。認知症・高齢者の方にも市が負担して見守りタグを持っていただいたが、65%が「良かった」と答えている。 
 郵便局を地域のEV車の充電スポットとしての活用や、道路台帳作成で国交省の「PLATEAU(プラトー)」で郵便車両にレーダーセンサーを付けて検知するなど、都市モデルを作りたい。

 【加賀市・深村富士夫副市長】 「郵便局のコンビニ化」のような形が今後は期待されてくる。コンビニは田舎の集落にはない。とりわけ健康保険証、運転免許証にもなるマイナカードを使ったサービスを考える際には重要だ。
 郵便局のDX化、データ活用を通じた地域貢献の在り方を考えた場合、マイナカードと郵便局の口座開設のワンタッチ化を考えるべき。地方では既に金融機関の統廃合が進んでいるが、半公的で安心できる金融として郵便局が残っている。生活の大事な金融機能を果たしていただくには、自治体と連携するIDカードとしてのマイナカードとゆうちょ口座の連携を考えるべき。
 高齢者の方はスマホが苦手かというと必ずしもそうではない。80過ぎの方が結構スマホを使って生活している。しかし、十分に使いこなせてはいない。自治体と郵便局が連携できる仕掛け、場として「コンビニエントな郵便局」を提案したい。

 自治体ヒアリング終了後、総務省郵政行政部の松田昇剛企画課長が10月14日~11月16日に行った市町村へのアンケート結果を報告。『郵便局に委託する際の実務・運用面で希望する条件』との問いに対する返答は「初期費用、維持費用に対する国からの財政支援措置」と「郵便局委託の好事例の情報提供」との回答が多く、「郵便局に準公務員資格を付与」「マイナカードの手続きを郵便局内で完結」「市町村を経由せず、国から直接局へ委託することで全国全ての局でサービスを提供」「郵便局と国が直接契約を結び、財政支援は国から直接郵便局に」「郵便局ごとにシステムの更新作業の実施や立ち合いで自治体負担が増えることがない」などが挙がった。
 また、『郵便局委託の制度面で希望する条件』には「マイナカード発行に伴う本人確認を委託可能に」「市町村窓口と同等の機能の実現」「住民基本台帳や住基ネット関連の操作権限を郵便局にも付与」「マイナカード交付も含めて郵便局が直接実施」「マイナカード申請サポートは国の事業として郵便局と国が直接契約」などの回答があった。
 松田課長からは、直近の郵政民営化委員会で「公務員と非公務員との間で取り扱いに明確な区分もあって、なかなか中身の代行までは至らないところがもどかしい。包括事務受託といいながら、結局、窓口業務にとどまっていることが3年経過してもさほど広がっていない感想を持った」などの委員の意見も紹介された。
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 郵政政策部会では、桑津浩太郎委員(野村総合研究所研究理事)が「端末機器等や共通的なプラットフォーム的なものを用意すれば、局に負担をかけない形でマイナカード関連のサポートに貢献できる」と強調。
 横田純子委員(特定非営利活動法人素材広場理事長)は「黒字化も求めていかなくてはいけない。優先順位をつける必要がある」と指摘し、根本直子委員(早稲田大学大学院教授)は「コンビニ利用は業務時間外が多い。一部郵便局で土曜も実施する情報発信で対応できるのでは」と提案した。
 日本郵便は「自治体のご意見の新しい視点やアイデアは大いに事業の参考になる。さらに連携を深めたい」と感謝の意と決意を表明した。米山部会長は「要望に対する日本郵便の感度の良さと実証実験等の支援が組み合わさり、前に進む」とまとめた。
 審議会終了後の部会長記者会見では、記者団の「中間報告に向けた考え方は」との質問に対し、事務局が「ヒアリングを経て予算、法改正などにどのように取り組めるのかをまとめていただく」との方針を示した。
 郵湧新報の「マイナカード関連要望も多かったが、法改正なしに対応できる可能性は」に米山部会長は「委員の方々の要望をうまく受け止める方向になれば、と思う」と語った。