マイナと郵便局、壁は開けるか ジャーナリスト 大久保冨士鷹

2022.11.15

 日本郵政の増田寬也社長や総務省が、マイナンバーカードの交付を郵便局でも受けられるようにする方向で検討していることが明らかになった。過疎地では公務員の人手が足りない自治体も多く、民営化前に自治体業務を担っていた郵便局員も多いことから、増田氏は、自治体職員に代わって局員がマイナカード交付の本人確認をすることに問題は無いと考えている。

最大のハードルは省内の微妙な関係

 しかし、実現への最大のハードルは、自治体業務を変えたくない総務省の公務員部を、郵政行政部がどう納得させられるかという省内の微妙な関係が背景にある。
 マイナカードの交付を自治体職員に代わって郵便局員が行うことは、そもそも誰でもできるように思えるが、法律で自治体職員が行うことが義務付けられている以上は法改正が前提となる。「極端にいえば警察の業務を警備会社が代行するようなもので、どう法改正するのか具体的な道筋は見えていない」(総務省幹部)。
 一方で検討されているのが、郵便局員が自治体職員を兼業できるように日本郵便の社内規定を変更する方法だ。
 これなら自治体と日本郵便側の調整だけで済むため調整に時間はかからないとみられ、従来型の健康保険証が廃止される2024(令和6)年秋の前のマイナカードの申請と交付の急増に郵便局で対応することも可能となる。
 こうした制度変更にはデジタル庁幹部も後押しする考えを示しているが、総務省幹部は「デジタル庁は何も分かっていない。制度を変更することが本当の問題なのではない」と語る。別の幹部は「公務員部が、マイナカードの本人確認を局員が代行することに反対している」と話す。
 総務省は、省内の勉強会の位置付けで各局長や部長らが参加する郵便局の活用方法を考える検討会を不定期で開催している。ただし、マイナカードの本人確認の代行を郵便局で行うことは議題に上がっていないようだ。代行を後押ししたい郵政行政部が、慎重極まりない公務員部と表立って対立したくない状況も垣間見える。カード普及に直結するセンシティブな問題だけに、今後の省内調整は見どころだ。