デジタル・デバイド需要高まる スマホ教える国民運動

2022.05.18

 スマートフォンの操作に不慣れな高齢者らデジタル弱者向けのスマホ教室の取り組みが加速している。

フリージャーナリスト 大久保冨士鷹

 日本郵政、楽天グループと包括連携協定を結んだ北海道は、5月24・25の両日、帯広市と釧路市の郵便局で開催するスマホ教室の募集を始めた。楽天は3月末までに700回以上教室を開催し、ノウハウを北海道の郵便局内の教室でも生かす考えだ。
北海道庁は「シニア向けスマホ基礎講座」の開催案内を道庁のホームページで告知。5月24日は帯広局、25日は釧路中央局で開催する。内容はスマホの基本的な操作方法で、講師は楽天モバイルでシニア向け講座を担当してきた講師が務める。
 3者連携に基づいて発表したスマホ基礎講座の試行の一環。今後、講座を開催する道内の郵便局を順次拡大する見通しだ。
 楽天広報によると、楽天は3月末までに述べ739回のスマホ教室を開催してきた。ライブ配信の形式で講師と参加者が直接会話できる方法と、録画された動画の講座を視聴する2形式。講座内容はアプリのダウンロード方法といったスマホの操作に関するものから、オンラインショッピングサイトの楽天市場で買い物をする方法など、楽天グループのサービスをアピールするものもある。
 新型コロナウイルス禍で主に動画を視聴する講座が中心になっており、延べ参加人数は約38万人に達しているという。
 スマホ教室は政府も注力し、4月に公表した地域活性化策「デジタル田園都市国家構想」の基本方針原案に、デジタル弱者の支援のために全国でスマホ教室を開催する「デジタル推進委員」という新たな制度を立ち上げることを明記した。
 また、総務省や厚生労働省は、すでに高齢者や障害者向けにデジタル弱者の支援事業を始めている。
 スマホ教室を官民共に力を入れる背景には、内閣府の2020(令和2)年の調査で、70歳以上の高齢者の約半数がスマホやタブレットを「利用していない」と回答している現状の打破が急務となっているためだ。
 政府にとって、スマホは今後進める行政手続きのデジタル化の恩恵を受けるためには不可欠なツール。「誰一人取り残さないデジタル化」を掲げる岸田文雄政権にとっては、デジタル弱者にスマホの利用に習熟してもらうことは最重要課題の一つといえる。
 また、楽天などの携帯電話大手にとっても、スマホ契約者が頭打ちになる中で新たな顧客として高齢者を取り込むためにスマホに慣れてもらうことは、収益拡大のためにも重要な施策となっている。
 ただ、スマホ教室は携帯大手がすでに2014(平成26)年頃から始めているにもかかわらず、なかなか高齢者にスマホの普及が進んでいない厳しい現実がある。
 政府関係者からは「スマホの使い方を教えることを国民運動として広めたい」という声も聞かれるが、そのためには高齢者に席を譲るのと同様、スマホを高齢者に教えることを当たり前と思えるような、若年層向けの意識改革も必要になってきた。