生きる!地域と 三重県南伊勢地区連絡会
人口減少や過疎化が進み、人のつながりが希薄になる中、悩み事があってもどこに相談したらよいか分からないという人が増えている。東海支社(中井克紀支社長)の南伊勢地区連絡会(橋本真人統括局長/伊勢朝熊)は、昨年10月から三重県伊勢市内23局に「ふくしなんでも相談所」を開設。身近な郵便局の局長・窓口社員が悩みを親身になって聞いてくれ、課題解決につながると好評だ。施策の中心者の奥山宗司副統括局長(沼木)は「困っている人を見たら、ほっとけへん。〝何でもお助けマン〟の精神で接している」と思いを語る。
伊勢市全23局で「ふくしなんでも相談所」
「自分が亡くなった後どうしたら…」「親の認知症が不安…」と、住民の悩みは尽きない。同相談所は、昨年8月の伊勢市との包括連携協定締結を機に始まった。個人情報の守秘を徹底した上で、郵便局が市社会福祉協議会や関係機関への「つなぎ役」を担っている。
相談を担当する約150人全員が「認知症サポーター養成講座」を受講し、目印のオレンジリングを着用。全局が「伊勢市障がい者サポート企業・団体」の認定を受けている。
奥山副統括は「開設以来、相談件数は約50件。お客さまの異変を察知してお声掛けをすることも多い。熱中症になりかけたお年寄りを救えたこともあった」と、手応えを感じている。
市社会福祉協議会の奥野元章係長は「社協の要請で実現したもので、地域の見守り体制も強化された。郵便局を全面的に頼りにしている。全国でも初めての取り組みだと思う」と力説する。社協の野村俊子さんも「郵便局のネットワークは、住民の方々や私たちにとっても大きな安心感がある」と、信頼は厚い。
伊勢・鳥羽・志摩の3市と玉城・度会・南伊勢の3町から成る同連絡会では、地域と連携した各種施策を推進してきた。
6月からは、ご当地キャラとの「コラボシール」を展開。社員の発案で実現し、県の施策に位置付けられたもので、ゆうパック等の利用者にシールを貼付してもらい、地域のPRに一役買っている。
ご当地キャラ・シールなど多彩な施策も
また、全郵便バイクへの「ご当地ナンバープレート」の着用が伊勢市で始まり、先月28日には、包括連携協定を結んだ玉城町でもスタート。〝走る広告塔〟として地域の隅々まで疾駆している。
さらに伊勢市では、「地域応援商品券」の販売や全局での海抜表示、三重国体(コロナ禍で中止)の関連施策などを実施。来年4月には、75歳以上の方が利用できる「寿バス」乗車券の販売を市内全局で予定している。
包括連携協定締結から、次々に施策を実現できた理由は何だろうか。25年間局長を務めてきた奥山副統括は「普段からの付き合いが一番」と、きっぱり。「伊勢市は2008(平成20)年から23小学校区に『まちづくり協議会』を設置して、発足当時から関わってきた。沼木祭りを開催し、そこで福祉相談も開設した。郵便局と行政、住民との距離が近い。お互い顔もよく知っていて、一体感がある」と明かす。
同連絡会のエリアは、伊勢街道など歴史ある街道が走り、古来より、東西の人や文化が行き交う交流の場だった。今この地で、郵便局が〝なくてはならない交流拠点〟として、人と人をつなぐ絆の役割を果たしている。