〝選択と集中〟に舵 増田日本郵政社長
日本郵政の増田寬也社長は、郵政民営化丸14年を迎えた10月1日の記者会見で「経営資源をコアビジネスの充実強化と新規ビジネス推進に振り向ける」と全国33施設ある「かんぽの宿」全てを譲渡すると発表。「選択と集中」に大きく舵を切った。完全民営化に進む政府の日本郵政株式売却の動きを「一層株主の方々の指摘に応えると同時に、『お客さまと社員の幸せによって地域の発展に貢献』の経営理念のもと、公益性の高い〝特性〟を踏まえ、企業価値を向上」と強調。「ビジネスモデルは郵便局を舞台に工夫したい」とも意欲を示した。
地域で奏でる〝共創プラットフォーム〟を
新型コロナで打撃を受けた「かんぽの宿」は、地域の集客拠点として継続営業ができるよう、経済合理性のある価格で意欲ある事業者に譲渡される。
増田社長は「中期経営計画では厳しさを増す経営環境の中、『ビジネスポートフォリオの転換が不可欠』とうたっている。コア事業に経営資源を集中させる決断」と明かした。また、10月から施行された改正郵便法に基づく普通郵便の土曜休配等も改めて説明した。
かんぽの宿譲渡へ
来年4月予定の「かんぽの宿」譲渡は①地域の集客拠点・雇用の場として営業を継続②正社員約300人、期間雇用社員約2000人を継続雇用③鑑定評価額を上回る経済的合理性のある価格での譲渡――の3点を重視。全33施設のうち、32施設は①㈱マイステイズ・ホテル・マネジメントとYakushima特定目的会社②㈱シャトレーゼホールディングス③㈱ノザワワールド④㈱日田淡水魚センターに譲渡し、かんぽの宿恵那のみ地元自治体と調整している。民営化後の累積赤字は約650億円に上り、昨年度は新型コロナの打撃により約113億円の赤字を計上した。
記者団の「岸田政権への期待を」との質問に対し、「感染症対策と経済活動の両立。脱炭素やDXを織り交ぜた強い経済を起こしていただきたい。岸田首相は温和な人柄だが、的確に仕事をされる方」と期待を寄せた。
コアと新規ビジネス、郵便局舞台に
「政府が保有義務のある3分の1を残して郵政株式売却」に関する質問が相次ぐ中、「政府保有のため、コメントする立場にないが、いかなる時に何があっても適切に対処できる準備をしたい」と決意を述べた。「さらなる企業価値向上は」には「個人株主の方が多く株式を持つことで市場比率が高まる。一層株主の方々の思いに応えると同時に、『お客さまと社員の幸せによって地域の発展に貢献』の経営理念のもと、公益性の高い〝特性〟を踏まえた企業価値を向上させたい。全国にある郵便局ネットワークでサービスが提供できるよう知恵を絞り、経営に磨きをかけたい」と答えた。
「今後の資本政策は」には「自社株買いや償却を行った。さまざまな状況を判断し、経営全般を見る中、資本政策も十分考えたい」と方針を示した。
郵湧新報の「郵便局を基盤とするグループ一体化に向けたさらなる準備は」には「CXO(最高責任者を設置する制度)導入やさまざまな部門で役職者の兼任、金融2社含めた研修等、人事異動も会社を越えて質量とも厚く、郵便局を舞台に地域に根差したさまざまなサービスができるビジネスモデルで事業活動を展開していきたい」と意向を示した。
「逓信病院の運営方針は」には「逓信病院は東京と京都、広島の三つを日本郵政が運営しているが、コロナ禍で非常に地域から重宝がられている。経営を磨き、コロナに限らず他の疾患含めて良い医療サービスを提供することが重要だ。地域の期待に応え、さらに工夫したい」と強調した。
「郵便局窓口の一部を他企業に貸与し、収益を上げる考えは」には「郵便局内の余裕あるスペースを他企業に貸す枠組みがあるため、可能だ。窓口の仕事は効率化やDXを取り入れる等工夫していきたいが、どういう窓口であれば住民の方々から喜ばれる形になるのか。共創プラットフォームは多くの企業に入ってもらい、地域で喜ばれるコラボをどんどんやっていきたい。互いにプラスの形は歓迎だ」と語った。