「共創の未来へ」 郵便局でのスマホ支援
今や高齢者の多くがスマートフォンを持つ時代。スマホ保有率は60~69歳が86.0%、70~79歳は64.4%、80歳以上は28.5%となっている(総務省資料:2023<令和5>年8月末時点)。一方で、使い方が分からず、相談もできず、トラブルや詐欺等に巻き込まれるケースもある。(写真上は静岡県藤枝市のスマホ支援)
誰でも何でも相談の安心窓口
日本郵便は昨年8月から楽天モバイルと連携し、全国約500局でオンライン「スマホなんでも相談」を実施している。信越支社(大曽根和之支社長)の長野県内37局は1月14日~3月14日まで行い、身近な郵便局でスマホに関することは何でも無料で相談できるとあって、好評を博した。
小布施局(佐藤健一局長)は昨秋から実施し、申し込んだ10人ほどが「居心地がいい。また来たくなる」と、何度も来局するリピーターとなった。実施期間中に局長を務めた土屋成子前局長は「無料というのが〝みそ〟。一人暮らしの高齢者の方が増えているが、人と会えないのはつらい。話をしたくなる。良いコミュニケーションになっていたと思う」と話す。
中国支社(砂孝治支社長)管内の広島県安芸太田町の安野局(佐々木利之局長)は昨秋から25年1月まで総務省の実証「郵便局をコミュニティ・ハブとした地域に必要なサービス」の一環として「スマホお悩み相談所」を開設。想定以上に反響があった。
四国支社(紀井哲支社長)は22年8月~24年3月まで、愛媛県内100局で「愛顔(えがお)のスマホ相談窓口」を開設した。郵便局を全県で活用するスマホ相談は全国初。期間中は延べ8800回以上の利用実績があった。(写真下は愛媛県九島局)
中村時広愛媛県知事は「郵便局は住民の方々にとって敷居が低く、身近な存在で高齢者の方も足を運びやすい。全国初のノウハウが各地に広がり、高齢者の方々が取り残されないようにできればありがたい」と期待を寄せていた。
東海支社(大角聡支社長)管内の静岡県藤枝市内3局は22年1月から同市の委託で、全国初の郵便局による市民のデジタル活用支援サービスを実施。局長や社員の方が予約制でスマホの操作や各種アプリの使い方などを伝授してきた。
瀬戸谷局の山下睦信局長は「高齢の方がスマホのことを家族に聞くと、『何だよ母さん、この間教えたじゃん』と言われるケースが多いらしく、郵便局で教えてもらえるのはうれしいと喜ばれる。社員もやりがいを感じている。お客さまに市のLINE公式アカウントの登録方法や健康や医療の相談アプリのダウンロードのやり方をお伝えすると、防災メールなども届く。自治体と住民の皆さんを、スマホを通じて郵便局がつなぐお手伝いができる」と笑顔を見せた。
北海道支社(坂東秀紀支社長)は「シニア向けスマホ基礎講座」を道内各地の郵便局で開催し、楽天モバイルの「楽天シニア」講師がスマホの基本操作を分かりやすく説明した。
東京支社(高橋文昭支社長)の立川市内7局は、都内初となるスマホの操作支援を実施中。来局時か電話で申し込めば、月曜~金曜の9時~16時まで一人30分間、社員の方が「市のLINE登録」や「オンラインによる行政手続きのデモ申請」など6項目についてサポートしている。
東京都多摩西部地区連絡会(田村明浩統括局長/多西)で地公体担当をしていた塩野龍也局長(立川幸)は「高齢の方のお役に立ち、さらに局を利用していただければ、なおうれしい」と語る。
リアルな郵便局でのスマホ相談は、お困りごと相談窓口のような役目も果たしており、教えてもらえる喜びと、教える喜びでほんのりと温かな空気も漂う。誰一人取り残さないデジタルデバイド対策としても、郵便局のニーズはますます高まっている。