増田日本郵政社長 民営化委の意見を経営に
日本郵政の増田寬也社長は3月26日の記者会見で「民営化委員会の意見書で(会社に対しての)指摘もあるため、経営の中でしっかりと対応したい」と意志を表明。また、災害時も一定時間、電源確保可能なスマートスピーカーによる郵便局のみまもりサービスの導入を「地域防災力向上が見込まれる装備には協力したい。自治体と話し合う必要がある」と方針を示した。
地域防災の装備に協力の意志
総務省が高知県梼原町で行った実証事業は評価が高く、「オンラインで、みまもりは、業務との兼ね合いがつけやすい。顔を見て話せる安心感もある」と、おおむね高い評価が得られた。閉局時間帯などの活用について課題もあるが、近く報告書がまとめられる。
ゆうちょ 貯金金利ドーンとアップ
雲南市で共創、自治組織の事務受託も
増田社長は記者団の「日銀がマイナス金利の解除を決めたことが金融2社の業績や戦略に与える影響は」との質問に対し、「新規の投資利回り改善が見込まれ、運用などの収益拡大につながる」と見通しを示した。
(ゆうちょ銀行は4月8日から貯金金利を引き上げた。引き上げ率は通常貯金と通常貯蓄貯金を0.001%→0.020%まで20倍。定額貯金は0.002%→0.023%〈3年未満〉、0.002%→0.110%〈3年以上〉)
増田社長は冒頭、公募で選出したグループ社員を2年間、ローカルベンチャーや自治体に派遣し、新規ビジネス創出を目指す『ローカル共創イニシアティブ』第3期として、栃木県宇都宮市、島根県の大田市と海士町中心の隠岐諸島、高知県高知市、熊本県南小国町、宮崎県日南市に1人ずつ計6人が4月から活動を開始すると発表した。
「2022(令和4)年から1期・2期計10人の社員を7地域9組織に派遣した。第1期の成果として、奈良県奈良市で〝ぽすちょこ便〟の配送ネットワークを活用し、地域コミュニティー強化を図る買い物サービス〝おたがいマーケット〟の実装をスタート。島根県雲南市では、郵便局が地域の自治組織から営農広域組織のサポート業務を受託する実証事業も開始する」と報告。
「農業の担い手不足が深刻な地域で、郵便局が営農広域組織の運営補助や行政提出書類の作成などをサポートし、地域コミュニティーとの協働を実現している。派遣者を起点として、企業の知恵と郵便局の共創事業が生まれている。変化の激しい時代に、日本郵政グループは主体的に持続可能な地域社会づくりに貢献する新たな役割を模索する」と強調した。
【記者団の質問】
――本日、郵政民営化推進本部が開催され、岸田総理から郵便料金見直しの発言もあったが。
増田社長 総務省と連携し、対応したい。先般の郵政民営化委員会の3年検証を国会に提出するために開かれた。民営化委員会の意見書に指摘もあるため、経営の中でしっかりと対応していきたい。
――「おたがいマーケット」を他地域にも広げますか。郵便局の地域コミュニティー性と不動産事業の関連性を。災害時も電源を一定時間確保できるAIみまもりスピーカーの導入方針は。(郵湧新報)
増田社長 「おたがいマーケット」は買い物が不便な奈良市東部地域で、共創イニシアティブ派遣社員が郵便局と協力実績のあるイオングループとの間に入り、地元の方々と調整し、つくりあげた。実証でも多くの方に利用いただき、事業化できた。
他地域でも郵便局ネットワークの可能性を広げ、新ビジネスを生み出したい。ぽすちょこ便は効果があると全社内的に周知したが、「おたがいマーケット」も周知し横展開を考えたい。
郵便局が地域コミュニティーの核となる機能を発揮できることは多い。雲南市内の「住民自治組織サポートの実証事業開始」もまさにそうで、さまざま掘り起こしたい。ただ、不動産事業は大きな収益を狙うもので別になる。
地域防災力向上が見込まれる装備には協力したい。何をどこに備えるかは自治体と話し合う必要がある。国の消防庁をはじめ、防災協議に郵便局が入り、災害時での機能活用のPRに依存はない。