社説 〝無〟から〝郵〟の営業を

2023.04.26

 「今の営業はすでに発生している物流を他社と競合して獲得にかかる。それも重要だが、人口減少時代にはそれだけでは長い目で見ると共倒れになってしまう。新しいモノの流れを生み出す〝物流〟を、郵便局ネットワークを使えば、各地に創り上げることもできるのではないか」

泉佐野市の成長を郵便局が支える

 こう語るのは、大阪府泉佐野鶴原局の巽要輔局長。十数年前、財政破綻寸前だった泉佐野市に郵便局としてのさまざまなアイデアを提案し、市の再建と成長を陰で支えてきた。
 泉佐野市といえば、ふるさと納税が思い浮かぶが、もともと地場産品のない同市が地場産品のアイデアを募集し、採用した後にクラウドファンディングで寄付を集め、事業化するクラウドファンディング型ふるさと納税は今、福岡県、埼玉県久喜市、茨城県かすみがうら市、東京都武蔵村山市等々、全国に広がり、関心を持つ自治体も増えてきた。
 泉佐野市の場合、寄付の4割を補助金として事業者に支給し、6割を返礼品と送料等の経費に充てる。市内で起業や第2の新規事業に乗り出す企業は設備投資等の初期費用が還元されることで、実質初期投資は不要。市に財源は残せないが、企業が市内に立ち上がれば法人税が市に入り、雇用も生み出せる。まさに地方創生にのっとった仕組みといえる。
 地域の企業も今、クラウドファンディング型ふるさと納税に関心を持っているが、自らの商品が売れ筋なのか不安だったり、企画段階の悩みも尽きない。
地元企業や生産者とつながりが深い局長が「こういう商品にニーズがあります。何かお手伝いしましょうか」などと働き掛けることで成功すれば、新しいモノの流れを生み出せるだけでなく、そこから金融等の営業にも結び付いていく。
 エリマネ局というと、どうしても金融窓口局のイメージが先行するが、将来、トータル生活サポートの相談窓口局になるとしたら、局長の役目はそれだけではないはずだ。
 各地域の郵便局ネットワークの情報量を生かしていけば、スケールメリットを活用したゆうパックの一括契約やワンストップ特例申請制度関連の送付、配送部分だけでなく、インバウンドに向けた商品戦略と海外越境ECなどトータルソリューションとして物流を勝ち取っていける可能性も秘めている。目指すべきは、〝無〟から〝郵〟だ。