新春インタビュー 前橋市 山本龍市長 大野誠司副市長

2023.01.21

 群馬県前橋市がマイナンバーカードと交通系ICカードをひも付けする全国初の市民サービスに政府が着目し、全国展開することになった。同市は今年度、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議(増田寬也委員長)の「夏のDigi田甲子園」でアイデア部門内閣総理大臣賞と実装部門準優勝に選ばれた。2017(平成29)年に全国で初めてマイナカード申請支援を市内全46局で開始した同市の山本龍市長は「マイナカードと皆がつながるには懸け橋が必要。郵便局は連携を担保し、広げられる存在だ。一緒に公務を預かる仲間」と話す。大野誠司副市長は「郵便局に手伝ってもらうことで、職員がより市民に寄り添った行政サービスに携われる」と語る。

郵便局はデジタルつなぐ懸け橋

 ――内閣総理大臣賞の「めぶくEYE」とはどのようなものですか。
 山本市長 スマートフォンを活用してスマホのカメラが視覚障がいのある方の目になって街なかを案内し、近くにいる人も手助けできる仕組みを作る構想。デジ田構想の実現に向けて「デジタルグリーンシティ」をキーワードに推進しているが、「めぶくEYE」の実装にも取り組んでいきたい。

 ――マイナカードと交通系ICカードのひも付けによる全国初の実証開始時、「つなぎ合えば皆、便利になる」との市長のお言葉に衝撃を受けました。
 山本市長 市民の暮らしを守る郵便も、電車やバスも、行政サービスもマイナカードによりつながるためにどこかで懸け橋が要る。
 懸け橋により郵便局も、市役所も、民生委員もさまざまな方たちが介在しながらつながる輪をもっと広げられる。
 水がこぼれたように広がるのでなく、どこかに島が要る。その一つが郵便局だ。連携を担保し、広げられる存在。

 ――市は郵便局の「みなし公務員案」も提案されています。
 大野副市長 市民から見た郵便局の安心感や信頼感が市と局のさまざまな連携につながってきた。マイナカードの申請支援では、カードを市役所で受け取らなければならず、不便。できたカードを局から本人限定郵便で届ける仕組みができる。「デジタル×リアル」の取り組みを進める際の〝お悩み相談所〟に郵便局がなっていただくきっかけにもなると考えた。
 山本市長 地域の拠点となっている郵便局の力を借りれば、さまざまなデジタルの取り組みをつないで大きな網をかぶせられる。郵便局は市役所や行政と同程度、地域住民の方々から信頼される組織。一緒に公務を預かる仲間として業務を行っていただけるのではないか。その思いに尽きる。
 現状、自治体窓口にはあって郵便局窓口にはないものに住民の情報がある。セキュリティーレベルが高いもの以外は、「めぶくID」やマイナカードで郵便局でも一定程度共有できれば多くのサービスが動きだせる。
 大野副市長 市の支所・サービスセンターは15カ所。市内46局で同じようなことができるのであれば、支所という形をとる必要はなくなるが、職員が必要なくなるわけでなく、職員は地域の中の困っている方の所に行って、より市民に寄り添った行政サービスに携われる。
 山本市長 住まいが市役所から遠い市民の方も多い。郵便局に第2市役所の役目を担っていただくのが一番理想的。時間が浮いた職員には、例えば、子どもの支援団体との協働など、仕事はたくさんある。皆が「ウィン」だ。

 ――地域包括ケアの方々も不足していると耳にしました。
 山本市長 どこの自治体もそうだ。郵便局に介護認定の申請窓口にもなってもらえたら、さらに便利になる。本音としては、局長に介護講習も受けていただき、資格者になっていただくのが理想。
市民から郵便物を預かったときに「足の調子はどうですか?」などと聞き取りできるし、民生委員や保護司もぜひやっていただきたい。もともと地域の名士なのだから、もっと前に躍り出てほしい。

 ――高齢者等の方々へお弁当を届けるデリバリー計画は。
 大野副市長 福祉や介護の一環で、郵便局と地域包括ケアマネージャーが連携する形は今後、あり得ると思う。
 山本市長 実現のためには、無償でなく郵便局として新ビジネスにしなければいけない。市が配送費を負担してもよいし、または市民が代金を支払う仕組みにできるかは日本郵便上層部の方々のビジネス感度如何だ。
 実は以前、「郵便局スペースを市民のコミュニティースペースとしてお借りしたい、2畳ぐらいあれば、お茶飲みセットでも用意して高齢の方などが〝よもやま話〟できるサロンが作れる」と相談したが、断られてしまった。
 もとより郵便局は国民の共通財産。郵便局は新ビジネスでもっと活躍できるはずだし、それにより市民も便利になる。期待している。