インタビュー 日本郵政グループ女子陸上部 髙橋昌彦監督 ②
――女性を育てるコツとは。
髙橋監督 実は女性の育て方をいつも私に指導してくれるのは妻。例えば、おいしいものを作ってくれたとき、感想を言うのを忘れていると「どう?」と言い、「おいしいよ」と返すと「もう遅いよね」などと手厳しい。変化に気付かずに黙っていると「何か変わったことない?」と言われたりもする。女性には日々の何げない気配りが大切だ。しらじらしくなるのは良くないが、どこまでそっとして、どこで声を掛けるかなどを考えながら監督業を行っている。
今、活躍できない選手の声を聴く
強い選手は遠征なども一緒で、コミュニケーションを取る頻度がどうしても増える。しかし、故障している選手や競技力が低い選手は私との接点が少なくなるため、国内合宿などチーム全体での場面ではできるだけコミュニケーションを取って接点を増やすようにしている。監督は強い選手しか見ないと思われてしまうとチーム全体の士気が下がってしまう。
女性たちはよくグループを作ったりするが、そこに入っていない選手が誰なのかも観察し、意識的に話を聞いていくこともチームを伸ばすには大切だ。女性は男性以上に〝声掛け〟が必要だと感じている。
我々のチームはスタッフも女性の割合が多い。管理栄養士も含め、現場スタッフ7人のうち4人が女性。通常、女子チームであってもスタッフは女性が1人か2人だが、ダイバーシティの観点からも、女性のコーチを育成しようと意図的に採用してきた。女性ならではの細やかさを引き出しつつ、スタッフの強化も図っている。
――次なる目標をどういうところにお持ちですか。
髙橋監督 2014(平成26)年の創部時に、郵政事業150年の節目となる2021(令和3)年までの8年間で①駅伝で優勝②オリンピック選手を出す――の二つを目標に掲げた。その後、駅伝はクイーンズ駅伝で創部3年目(出場2年目)に優勝でき、その年に開催されたリオオリンピックには鈴木亜由子と関根花観が出場できた。
当初、8年かけて達成を目指していた二つの目標が3年目にクリアできてしまった。そして昨年の東京オリンピックでは鈴木がマラソンに出場して19位。廣中璃梨佳が女子1万㍍で7位に入賞、5000㍍は日本記録を樹立しての9位。リオからさらにステップアップできている。
鈴木選手(創部2年目当時)
一方、駅伝は2年目に優勝できてからは7年連続で「クイーンズエイト(8位以内)」入りし、翌年のシード権を獲得。うち、2019(令和元)年と20年には2連覇できた。
グループ一体で未来へたすきを
駅伝は、6名でタスキをつなぐ競技。選手の故障や体調不良によって直前でも選手が交代することもあるため、チーム力をつけていかなければ毎年勝ち続けることは難しい。勝負事は時の運もあるが、戦力を整え、コンディションが合ったときにいつでも優勝できるチームを作り、グループ社員の皆さんの励みになれば、と思う。
我々の正式なチーム名は日本郵政女子陸上部ではなく、日本郵政グループ女子陸上部。たすきをつなぐ6人は、創部当時は日本郵便の選手が多かったが、今は日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の各社にバランスよく面倒を見ていただいている。その上で、毎年クイーンズ駅伝本番ではグループを代表する選手たちが、「つなぐプライド」をもって1本のたすきをつなぎ、全力でゴールを駆け抜ける。
郵政事業を進めるに当たって最も大切となるグループの一体感、4社の団結を、我々女子陸上部は駅伝の舞台で象徴的に体現している。「よし、我々も頑張ろう」とグループの士気が少しでも上がるよう、これからも貢献していきたい。(続く)