〝もっと便利〟な「みらいの郵便局」へ
日本郵政、日本郵便、JPデジタルは7月15日、リアルとデジタルを融合した「みらいの郵便局」の実証実験を大手町局(白髭竜平局長)で開始した。「〝相談〟をもっと身近に」するリモート相談ブースなど、新しい時代の顧客ニーズに合致した四つの体験価値を検証し、結果を踏まえて局スペースや地域性に鑑み、順次、全国に広げる。14日に行われた報道向け内覧会でJPデジタルの飯田恭久社長は「自宅や局外でも郵便局サービスを利用できるアプリを今開発中。来春から秋にリリース予定」と明かした。また「デジタルを手段に使って、郵便局の強みである〝人〟のぬくもりは提供し続けていく」ことを強調した。
デジタル手段に〝人〟のぬくもりを
「みらいの郵便局」は日本郵政グループ中期経営計画「JPビジョン2025」に基づき、進められている。「もっと便利に」「こんなこともできるんだ」と顧客に驚きの体験を提供し、検証と改善を試行しながら、郵便局への不満解消と期待を実現。若年層含めて総体的に厚い顧客層から支持される郵便局の局舎とサービス提供の在り方を創造することでグループの生き残りを賭けていく。
(以下、記者会見)
――ロードマップのスケジュールなどを。
飯田社長 2022(令和4)年度を準備期間と位置付け、最終的には全国展開を完了したい。
――投資額や形の種類(表参照)は。
飯田社長 中計の『デジタル郵便局等』の200億円の枠内で進めるが、経営計画が更新される際にはデジタルへの投資は増えていくだろう。
――社員のワークホーム型も含まれていますか。
飯田社長 取り組んでいる。スマホのアプリの形でサービスを展開する。日本郵政グループ公式アプリは現状九つ。改善点も多い。来春から秋に刷新し、お客さまが郵便局に来なくても自宅や外でも郵便局サービスを受けられるアプリを開発中。より便利になる。
――みらいの郵便局でJPデジタルが主導するものとは。
飯田社長 お客さまから見れば郵便局窓口は一つ。日本郵便、ゆうちょ、かんぽでグループ横断的に取り組む旗振り役がJPデジタルで、モノを作る実行部隊。必要に応じて伴走支援する横連携を促す役割を担っている。
――デジタル郵便局とみらいの郵便局の違いは。
飯田社長 デジタル郵便局だと機械的なイメージを持たれるため、デジタルとリアルを掛け合わせて『みらいの郵便局』と呼ぶ。365日24時間、多くの郵便局サービスをスマホやPCで提供できるようにする。
――競合他社と比較し、横展開が遅いように見えますが。
飯田社長 インターネット企業のようにものすごいスピードで進められる事業、組織ではない。高齢の方も若い方も万遍なくお客さまニーズを満たさなければならない使命がある。丁寧に進めようとしている。やれるところからやるスタンスだ。
――何を解消すればお客さまがもっと郵便局を訪れてくれると考えますか。
飯田社長 お客さまが郵便局に感じる体験は2通り。一つは(都市部で)『不便、混雑している』とのマイナス体験。もう一つは『こんなことやってもらいたい』と期待されるプラス体験。マイナスを解消し、プラスの体験価値を生み出したい。
――公共サービスや商業サービスを掛け合わせ、さまざまできるようにするイメージですか。
飯田社長 お客さまの〝人生〟に郵便局が寄り添って、今までできなかったサービスを提供しようと検討を重ねている。
――〝郵便局ならでは〟のデジタル化とは。(郵湧新報)
飯田社長 他の企業にはない郵便局の強みが人のぬくもりと温かみ、信頼感。それは社員が日々お客さまに接する姿そのものだ。デジタル発券機やセルフレジがあっても、社員が必ずいてくれるのが郵便局。一般の金融機関は人も店舗も減らしているが、逆に効率化は図るが、人がサポートするぬくもりあるサービスを、デジタルを手段に提供し続ける。