インタビュー 東レ建設 寺園啓史取締役
甘みとおいしさがギッシリ詰まった長野県産フルーツトマト「さやまる」。日本郵便と東京農業大学、東レ建設の〝共創〟で2018(平成30)年からプロジェクトがスタートし、先月1日から第3期の販売開始となった。砂栽培農業施設「トレファーム」を推進し、日本郵便の思いの詰まった「さやまる」をサポートしてきた寺園啓史取締役は「多くの課題がある中、日本郵便の方々の〝これを事業にしよう〟という気持ちに微力ながら応えたかった」と語る。
誰もが輝くまちづくりを日本郵便と共に
――「さやまる」プロジェクトのきっかけを教えてください。
寺園取締役 日本郵便さんが新規ビジネスとしてフルーツトマトに取り組むということで東農大からご紹介があり、東レ建設は3者一体で研究を重ねてきた。高い品質と管理が求められる高糖度トマトは、栽培環境や水加減などのバランスを取るのが非常に難しい。さまざまな課題があったが、日本郵便の方々の〝これを事業にしよう〟という気持ちに打たれ、当社としても何とか応えようと思った。
――トレファームの砂栽培の利点とは。
寺園取締役 競合となる土耕は環境に左右されやすい。水や肥料を常に与える水耕は、作物に〝ご飯をお食べ〟と与えているいわば過保護な状態。比べて、砂栽培は水も養分も一切ない環境下で、点滴のようにチューブでぎりぎりの量を与え、ストレスをかけるいわば〝スパルタ育成〟で厳しく育て、植物の自生力を高める。このことは味の濃い日持ちのする作物になることに繋がっている。
また自社開発した「スマイルシェア」という栽培管理システムで、ハウスの気温や湿度等のデータはスマホやタブレットで共有・管理し、最適な水や肥料もスマホで操作できるようにしたことで、「農業は24時間365日やらなければいけないもの」から、働くことを諦めていた方々、就農初心者にも30分から取り組める「シェア農業」を実現している。
――「建設会社がなぜ農業を?」という声もあったそうですね。
寺園取締役 僕らが目指すのは、ゼネコンとして取り組む「農業の新しいカタチ」。設計施工を得意とし、不動産事業も手掛ける当社のノウハウでお客さまのニーズをその立地に合うよう計画し施工する。
肝になっている培地となる栽培ベッドは足場材を活用し特許を取得。高床式であり腰を曲げずに楽に栽培でき、またIoTの活用で、素人でもプロ農家と同じような作物を各地で栽培できることを目指している。背景には障がい者・高齢者の皆様方が楽しく働ける雇用の場をつくりたいという強い思いが社内で共感を呼び、当社の事業として取り組むことになった。
――総務省や自治体と連携した取り組みも推進されています。
寺園取締役 総務省の「IoTサービス創出支援事業」として、 2017(平成29)年に〝シェアリング農業〟を推進した。同時期に、経済産業省からも「高齢者健康寿命延伸事業」として採用され、高齢者が生き生きと働き、感謝される中、心身共に健康を増進していくという実証も行った。
今年1月からは、川崎市の公募で採択された「川崎プロジェクト」が着工。トレファームを核に、マルシェやカフェ、保育園、クリニックなど芝生広場を囲んだコミュニティーの場創出を計画。来年3月にオープン予定だ。
「さやまる」が愛され、広がる中、誰もが生き生きと輝くまちづくりを日本郵便さんと連携して取り組んでいけたらと思う。私たちの夢でもある。