増田日本郵政社長 〝共創〟で新たな「拠点価値」を
日本郵政の増田寛也社長は10月29日の記者会見で、記者団の「ユニバーサルサービス義務は局数とリンクすると考えているか」との質問に対し、「支所や農協、地銀等がどんどん地域から撤退している。郵便局はそれらを担う役割を広げなければいけない。ユニバーサルサービスとは少し異なるが、郵便局は地域の安心の〝拠点〟。各自治体との関係性にもよるが、郵便局の数ではなく、役割と機能が替わっていく。徐々にそういう推移をたどっていくと思う」と人口減少の中で代替を果たす郵便局の新たな役目と拠点価値を見通した。
また、さまざまな企業と共創する脱炭素などの取り組みを多く発表し、SDGs(持続可能な開発目標)を先導する社会貢献性を一層高める姿勢を打ち出した。
自治体や企業とSDGsを先導
増田社長は日本郵政グループとファミリーマート、JR東日本との共創を「お客さまと地域を支える『共創プラットフォーム』を目指し、引き続きさまざまな企業等との連携を進め、利便性向上に努める」と意欲を示した。
東京電力グループとのEV車両の充電ステーションや太陽光等の実証実験は三菱自動車の協力のもとで11月10日に小山局(栃木県)、18日に沼津局(静岡県)で開始し、「自治体と活用に向けた協議に入った」と明らかにした。
災害時用外部給電器の配備(集配車両用)
日本郵便はCLT(強度の高い間伐材)で建築し、再生可能エネルギーを導入する「環境配慮型郵便局(+エコ郵便局)」を2023(令和5)年度末までに10局程建設し、移転・開局する丸山局(千葉県)を第1号に選定。「循環型社会の形成に寄与し、SDGsへの貢献を果たす」と語った。
千葉県丸山局の内観イメージ
さらに、災害時の指定公共機関を務める日本郵便が、災害時の郵便配達のみならず、「緊急物資輸送」も追加と発表。国土交通省や全日本トラック協会と調整し、子会社の日本郵便輸送とトールエクスプレスジャパンが輸送を担う。
3次売り出し完了、民営化の節目
増田社長は「日本郵政株式の3次売り出しは本日、10月29日に手続きが完了した。2015(平成27)年の上場以来、自己株式取得を経て法律に規定される政府の株式保有義務の売却完了は民営化の大きな節目。一層株主の方々に向いた経営を行い、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に努めていきたい」と述べた。
脱炭素で企業価値向上
また、日本郵政グループが2030(令和12)年度までに温室効果ガスを19年度比46%削減する先進的な目標を改めて強調。災害時に〝動く蓄電池〟にもなるEV車両の充電ステーションの実証実験を「商用EV全体の性能向上を図り、地域のカーボンニュートラル化の後押しを期待する。さまざまな協業は、共創プラットフォームの実現に資する。パートナーと協力の上、カーボンニュートラル化を一層推進し、地域社会を支える」と強調した。
記者団の「ファミマとの連携で、埼玉と茨城の郵便局から始めた理由を。目標数値はあるか」との質問に対し、「こちら側でいくつかの候補地を提示し、ファミマがコンセプトに合うところを決定した。来局者数が増えるメリットもある。無人決済と陳列棚の二つのパターンをしばらく継続し、評価する」と説明した。
郵湧新報の「①ファミマ等との共創を自動運転やEV車両につなげて買い物サービスを行う考えは②局窓口の金融取扱商品と投資信託取扱局の計画③データビジネスの自治体との連携」には「コンビニがそろえる商品は、高齢者や障がい者の方々など外に出歩くのが難しい人から連絡があれば、買い物代行のような形で品物を届ける類いも今後はあり得ると思う。コンビニ各社といろいろ検討している。ラストワンマイルに強いグループとしてどういうサービスを展開できるか、企業との連携の中で双方メリットがあるものは実現したい」と話した。
一方、「投信取扱局をすぐ増やすとは聞いていないが、可能性はある。体制を整える必要がある。コンサルタント(渉外社員)はかんぽ生命とアフラックの商品を専門的に扱うが、窓口も生保商品を販売する。コンサルタントがカバーできない地域は窓口で完全にカバーしなければならない。11月から地域ごとにミドル層、フロントに説明する」と明かした。
さらに「日本郵政グループのデータをどうしていくか、総務省も検討している。法律を越えた活用はできないが、社会における受容性も大事。金融機関にとっても企業にもデジタル化におけるデータビジネスは重要と見ている。何ができるか、可能性を検討する。特に自治体との連携はさまざまな業務を請け負う上で最も早く出てくる話だ。不動産事業も大きな開発は単独でなく進めたいが、(データ)連携も今後は出てくるだろう」と語った。