続・続 郵便局ネットワークの将来像⑦

2021.11.08

 ふるさと納税で新たな地場産品を生み出すクラウドファンディング型が広がりを見せている。地場産品を持たない大阪府泉佐野市(千代松大耕市長)の「新たな地場産品をつくる条例」に基づく「ふるさと納税3・0」と呼ばれる地方創生の取り組みに全国の自治体や企業の眼が集まる。郵便局とふるさと納税のつながりは各地の特産品を流通に乗せて地域経済を潤すことや、スケールメリットを活用したゆうパック一括契約、ワンストップ特例申請制度関連の送付等さまざまだ。10年ほど前、財政破綻寸前で健全化団体に指定されていた泉佐野市は、その後も多くのドラマを乗り越えつつ今に至っているが、郵便局は陰ながら市を支えている。

「ふるさと納税3・0」で地域創生

モノが生まれれば、物流が生まれる

 泉佐野市が昨年11月にスタートしたスキームは、地場産品のアイデアを募集し、採用した後に市がクラウドファンディングで寄付を集め、4割を補助金として事業者に支給。
 6割を返礼品と送料等の経費に充てるもので、市に財源は残せないが、企業が市内で随時立ち上がることで法人税が市に入り、雇用を生み出し、活性化できる。企業は設備投資等の初期費用は実質ゼロとなる。約10カ月の間に全国10企業が申し込み、全事業化に成功している。

 泉佐野市成長戦略室の阪上博則担当理事は「第1号は3月、熟成肉の加工場が市内に誘致され、寄付額約4億5000万円が集まった。北海道から九州まで数自治体が、このスキームを見本にクラウドファンディング型ふるさと納税を始めようと動いている。佐賀県上峰町は養鰻場で5億円集めようと2億5000万円集まっている。泉佐野市でもサツマイモのスイーツを返礼品にするプロジェクトもほぼ満額が集まるなど、新たな返礼品が市のふるさと納税として活躍している。補助金は総額1億5000万円くらい出した」と意欲的だ。

 「ふるさと納税で地方創生」と記される総務省のポータルサイトを見ると、2020(令和2)年度「ふるさと納税受入額」は全国計6725億円、受入件数は約3489万件と過去最高を記録した。
 ふるさと納税を募集する際の使途にクラウドファンディング型を選択できると答えたのは285団体(自治体等)。総務省も「クラウドファンディングで寄付を集める形のふるさと納税を進めている団体も増えている」と話している。
 かかる費用(全体合計額)で最も多いのは返礼品(26・5%)だが、返礼品配送費用(7・7%)も3番目に多い。
るさと納税と郵便局の結び付きはさまざまだが、やはり一番は配送部分になる。
 阪上理事は「ゆうパックの返礼品配送はもとより、寄付金受領証明書の送付もある。寄付された方に税金控除を受けていただくワンストップ特例申請制度申込書送付等も、郵便でなければできない。多い年は約250万件。ビジネスだけでなく、『市のためやったら何とかしたろう』の心意気は、郵便局でなければなかなか持ち合わせていない」ともらす。「申請はマイナンバー情報も入るため、セキュリティー情報も気を使うが、信頼度の高さがありがたい。届かない、遅い、と言わせない顧客満足度が郵便局は高い。本局の方は異動されるが、ずっといてくれ、市の思いを分かってくれる巽局長には、何かと相談している」と語る。

 市と郵便局の共創は、大阪府南部地区連絡会(久保博史統括局長/和泉池上)の巽要輔局長(泉佐野鶴原)を中心に、オリジナル年賀、地元ゆるキャラに年賀状を贈ろうコンテストなど、地元局長らが市をPRできるイベント等々を企画。
 市のQRコード入りオリジナル年賀はがきをふるさと納税御礼品として全国発送、郵便局のみまもりサービスの返礼品、ゆうパックの一括契約等を提案し、地域活性化に貢献してきた。

 巽局長は「モノが生まれたら物流が生まれる。市が以前、ふるさと納税3年連続1位になったときには郵便局も多大な営業収入を頂いた。日本郵便の子会社含むグループ等は大きな倉庫や大規模局を持つ。関西から納税の多い関東圏へは近くから配送することで料金を安くでき、東北や北海道へは東の蛇口から配送する大きな蛇口を二つ設ける料金設定を市に提案したのは当時の成功事案だった」と話す。
 近畿支社(小方憲治支社長)管内では京都府京丹後市も動きだす情報もあるようだ。巽局長は「ふるさと納税3・0スキームの自治体提案を会社を挙げて、地域に強い局長がそれぞれ動けば、物流が大きく動きだし、地方の創生につながる」と思いを描く。

泉佐野市のQRコード入り年賀状