続・続 郵便局ネットワークの将来像50
否応なく進んでいく人口減少や少子高齢化の中でますます増えていく地公体の悩み。そうした地域課題を郵便局長が長年築いた人間関係の中で聞き取り、JPMDに伝えることで、郵便局の収益に結び付ける仕組みとしての地公体向け「公共ソリューション」サービスは、広報支援、防災・減災、CO2削減、お米券、プレミアム商品券やバス券等の業務に関する企画、制作、配達、デジタル対応、問い合わせ等々を総合パッケージとしてJPMDが丸ごと受託する。子会社も活用したJPグループ(日本郵政・日本郵便グループ全ての関連子会社含む)の総合力を生かせる画期的なビジネスモデルだ。(園田万里子)
地公体との連携を郵便局ビジネスに 川上から川下まで総合力で対応
広報紙やハザードマップ等の配布については、JPグループの配達インフラを活用。確実な情報とともに、物品として地図やパンフレット、ごみ袋等も届ける。また、配布物の製作、配達調整、問い合わせ等も一括委託により地公体の管理業務軽減を実現する。
全世帯の99%の配布率を誇る「JPMDタウンプラス」は郵便局社員が無宛名DMを指定エリアに配布。ありとあらゆるメディアの中でも最も高いエリアをカバーできる。もう一つの「JPMDエリアプラス」は格安ポスティングと比べ、圧倒的に高い配布率でカバーする。また、クレーム発生時の回収対応や配布除外にも対応する。
地形的に低い地域の多いA区は洪水・高潮のハザードマップをポスティング業者通じてチラシ配布していたが、配布率が低く約36万世帯に十分に届いてなかったため、全区民配布を目指し、2022(令和4)年に「JPMDタウンプラス」に切り替えた。
B市も各校区の区長や役員が配布していた広報紙配布事業を2024(令和6)年7月から「JPMDエリアプラス」に切り替え、約3・3万世帯に配布している。C市も選挙公報を約58万世帯に「JPMDエリアプラス」で配布した。
防災分野では、感震ブレーカー(震度5強相当以上の揺れを感知する火災事故防止製品)配布事業について、多岐にわたる事務局運営やチラシやポスターの制作からwebサイトを構築し、住民説明会の企画や開催等もワンストップで提供している。D県は関東大震災から100年経った2023(令和5)年、エリア内50万世帯ある木造密集地域の住宅を対象に感震ブレーカー無料配布に活用した。
気候変動をもたらすCO2の削減では、E市が1万世帯に「OKIPPA(置き配バッグ)」を無料配布し、再配達を削減。市民の環境意識の向上を図った。他にも全国初の郵便局に備蓄倉庫を備えるF市も防災関連でJPMDのサービスを導入している。
各地公体の物価高騰支援給付金の現金給付事業は、JPMDのBPOセンターと郵便局ネットワークを活用したワンストップサービスによってスピーディーな審査環境や業務運営を提供。事務局運営と全体管理、申請書類のデザイン・印刷封入・発送、申込書・申請書受付、書類審査業務全般、コールセンター、システム開発等がトータルでできる「一括配布型」を五つの地方公共団体が導入。「店頭販売後方支援型」を2地公体で実施されている。
G市はプレミアム商品券の発行及び販売、全体管理までJPグループで行った全国最初の例である。全体の企画、管理はJPMDが行い、商品券の販売は市内の郵便局が行った。
JPMDの佐野CEOは「局長の皆さん方が持つ地公体からの信頼と、我々が持つ総合的に地公体業務を受託できる『公共ソリューション』サービスをうまく組み合わせると、JPグループとして地公体からの受託業務がビジネス的にも十分大きくなると確信し、取り組みを始めた」と話している。
また、「今、お米券も脚光を浴びている。エリマネ局窓口ではプレミアム商品券のほか、例えばバス券等を販売している局も多い。しかし、これらのほとんどの場合は、窓口での商品券等の販売にとどまっている。G市のように、JPMDや他の日本郵便の子会社も連携活用すれば、川上の企画から川下の販売後の対応までJPグループで丸ごと受託できる。総合的に行なうことでビジネス規模も大きくできる」とワンストップの強みも強調する。