第17回 年賀状思い出大賞

2025.10.19

大賞 並木みどり様

 流行りに乗り年賀状じまいをしようと、昨年は一枚も年賀状を出さなかった。宣言したわけではなかったので、数枚の葉書が届いたのみ。その中に、娘や孫に囲まれた笑顔の元同僚の写真を今年も見つける。

「年賀状じまいに揺れる心」

 写真の横に「最寄り駅があなたと近くなりました。ランチしませんか?」とある。突然のお誘いに心が跳ね、慌ててコンビニで葉書を買った。出すのが遅れたことを詫び、会いたい旨とSNSのIDと携帯番号を書き添えて送った。実はお互いに住所しか知らなかったのだ。
 長く会わずにいても、年に一度だけ互いの近況を最小限に伝え合い、突然、自然に誘える年賀状。頻繁に覗いては「いいね」を押すプレッシャーもない。年にたった一度だけのこの行いを、敢えて辞める必要はあるのだろうか。私は年賀状じまうことをやめ、相手がやめるまでは今後もこのやりとりを続けることに決めた。
 「年賀状だけの関係」と化していた元同僚との二十年ぶりの再会は今週末だ。