新春インタビュー 日本郵便 千田哲也社長
――郵便局に行くとポイントが貯まる「ゆうゆうポイント」の展望をお願いいたします。
千田社長 「ゆうゆうポイント」は日本郵政グループ独自のポイントサービスとして「あなたとあの人を結びちょっとしあわせにする」をコンセプトに、お客さまと大切な人との結び付きを高め、〝おトク〟や〝便利〟だけにとどまらない郵便局ならではの「新しいポイント」として、昨年11月18日に提供を開始した。ポイントサービスを導入することで「ゆうID」の会員登録や「郵便局アプリ」のダウンロード促進、さらに来局促進や各種サービスの利用促進につなげたい。今後は、「来局ポイント」だけでなく、お買い物やサービス利用でポイントを貯められ、貯めたポイントをお支払いにもご利用いただけるよう、サービス拡充を検討する。
他にない2万4000局の底力を
グループ共通ID「ゆうID」を軸としたグループDXの推進を加速させ、〝リアル〟と〝デジタル〟をシームレスにつなげると同時に、グループの保有データを活用し、ユーザー体験価値(UX)の向上を図っていく。
――窓口のシステム改革の目標があればお教えください。
千田社長 郵便局窓口のオペレーション改革は、郵便局窓口に集中していた業務負担をリアルチャネルの窓口だけでなく、金融コンタクトセンターをはじめとするリモートチャネル、セルフレジや郵便局アプリ等をはじめとするデジタルチャネルに分散・最適化していく。
加えて、「ゆうID」の利用促進を図ることでお客さま情報を共有し、どのチャネルを利用しても郵便局らしい温かみのあるサービスが受けられる体制を目指す。
2025(令和7)年は、ポスタルタブレットPC(タブレット型PC)を配備し、デジタル化を進める。まずは、保険分野のペーパーレス取り扱いの利用を開始し、お客さまの利便性向上を図る。
郵便局窓口では、26年9月までにポスタルタブレットPCを配備し、社員が1人1台の端末を利用し、いつでも、社内ポータルサイトやWeb会議、チャット等を使用できるようにする。
社員がおのおのの端末で業務ができる環境を整備することで、働き方を変革し、お客さまの利便性向上も目指していく。
――オンライン診療や健康の拠点としての郵便局を医療や介護、その他、専門機関と連動し、進めるお考えはありますか。
千田社長 局舎を活用したオンライン診療は、地理的条件など医療資源が限られた地域で役割を果たせる。患者の移動負担への軽減等に加え、社員がオンライン診療のサポートを行うことで住民の方々の医療アクセスの改善に寄与できる。
医療や介護に限らず、昨今の複雑かつ多様化した各種社会問題の解決に向けて、単一企業のみで解決できることは限られる。
他企業グループには持ち得ない約2万4000の郵便局ネットワークを持つわが社が大きな役割を担える可能性がある。
自治体や医療機関からニーズが示された場合、できる限り実施につながるよう積極的に対応していきたい。特定分野や専門機関に限らず広く連携し、さまざまな地域の問題解決へお役に立ちたい。
――買い物支援、交通支援については。ぽすちょこ便やおたがいマーケット、ライドシェアなど総合的に山間地や離島に広げるお考えは。
千田社長 買い物に関するニーズは、今後ますます増加するだろう。ぽすちょこ便やおたがいマーケット等、買い物支援につながるサービスは、広く全国の皆さまに便利に使っていただきたい。
ぽすちょこ便やおたがいマーケットはこれまで、山形県鶴岡市、奈良県奈良市、岡山県総社市、山形県山辺町、静岡県静岡市の5エリアで各地域の実情に応じて少しずつアレンジを加えながら展開してきたが、これらは日本郵便単独で完結するサービスではなく、自治体や地域の方々との連携により可能になる。個別地域に寄り添いつつ展開していきたい。
ライドシェアは北海道上士幌町と上士幌局で自家用有償旅客運送の実証実験を行ったところ。評価・反省も踏まえ、地域に根差す郵便局としてできることがないかを引き続き検討する。
――物流は成果が出ていますが、経費も上がることへの解決策をどう進めますか。
千田社長 荷物量の増加により収益を伸ばす必要がある一方で、費用を圧縮し、利益率の改善も求められている。
現在、作業の機械化等による業務の効率化と不在再配達率削減等による費用抑制に取り組んでいるが、今後もDXの取り組みを推進し、お客さまに寄り添った対応を目指していく。
コスト(経費)意識も大事だが、選ばれる会社のために何ができるのか。オペレーションの効率化に資する商品・サービスを見直し、お客さまの利便性と業務の効率化が両立する、生産性の高いオペレーション構築を進めていきたい。