出発進行♪郵便車両ライドシェア

2024.12.13

 郵便車に〝人〟も乗せながら、地域の役に立つ時代が近づいている。北海道上士幌町で道路運送法に基づく「公共ライドシェア(自家用有償旅客運送=当該地域の住民や来訪者に必要な旅客輸送の確保が困難な地域等で実施)制度」を活用し、上士幌局(近藤岳男局長)から出発する「郵便車両ライドシェア」が運行中だ。

「交通の便がないため大変助かる。続けてほしいね」


斉藤前国交大臣(中央㊧)、増田日本郵政社長(同㊨)、淨土英二北海道支社長(右から3人目)らが視察


 「福祉バス」が走らない曜日に高齢者の方を自宅から目的地まで送り迎えする。実証期間は10・11月の2カ月間。利用者の内藤隆蔵さん(写真上)は「役場や買い物、病院に行くのに交通の便がないため、大変助かります。続けてほしいね」と喜びを見せた。

 近藤局長(写真上)は「人口減少や高齢化が進む地域は、タクシー会社も採算が取れずに撤退し、バスも日に数本しかないため、運転免許を返納したご高齢の方は移動手段がない。他自治体からも関心を持たれ、問い合わせが来ている」と語る。

地域交通の再構築へ 国交省×自治体×日本郵便


 人口減少や少子高齢化で、過疎地や離島で地域交通の維持が年々難しくなってきた。地域に人が住めなくなってしまう状況を打開しようと国交省は昨年9月、「地域の公共交通リ・デザイン実現会議」をスタートし、交通分野のみならず、他分野とも連携し、地域交通の再構築を目的に関係12府省庁と議論を重ねた。
 例えば、医療・介護分野の送迎車両や教育分野のスクールバス等、多様な分野との連携も検討されているが、ユニバーサルサービス義務を負い、全国津々浦々まで細やかに走行している日本郵便の郵便車両の活用も検討されている。

誰も見捨てない社会づくりに郵便局が貢献

 北海道上士幌町での実証事業は、集配局を兼務するエリマネ局である上士幌局から直径7㌔㍍~10㌔㍍、車で10分ほどの範囲。地区に在住する約10人の80代以上で免許を返納した高齢者の方を対象に、福祉バスが運行されない毎水曜と木曜に利用者宅から目的地の1往復、金曜には3往復の運行を1週間前の予約制で進めている。
 ドライバーは上士幌局の近藤局長のほか、3人の集配社員の方が大臣認定講習を受講し、交代で地区内の高齢者約10人のうち、希望がある方を送迎。郵便や荷物の配送を兼ねることもある。
 近藤局長は「スーパーや病院、ゲートボール場までとご希望の地までお送りし、迎えに行く。例えば、町の『高齢者向けの体操教室』は毎金曜だが、金曜は福祉バスが走っていない。タクシーを呼ぶと超高額で年金暮らしの方は難しく、免許を返納された方は行く手段がない。親戚等が近くにいない方は大変だ。道内にはそうした通常タクシーが走らない町や村が何カ所もある。80代、90代の方の運転はご家族も心配される。局の軽四輪は2人乗りだが、実用化された時は4人乗り郵便車も活用できれば、家族の方々も乗せられると思う」と話している。