続・続 郵便局ネットワークの将来像㉞ 民営化法見直し

2024.06.12

 「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(山口俊一会長)に加入する自民党議員は衆参計287人。うち168人、代理合わせて約200人が出席した総会は、昨年の総会が代理合わせて約90人と比較すると2倍以上の議員が集結した。総会は当初1時間の予定を30分延長。止めどなく郵政民営化法見直しに賛同の手が挙がったが、6月23日の通常国会会期末までは、約1カ月半に迫ってきた。

前に進むための法改正

 総会で、全国郵便局長会の末武晃会長は「社会環境の変化を受け、郵政事業が大変厳しい状況にあることは経営陣の方々とも共有している。厳しさを増す中で郵便局ネットワークを維持し、ユニバーサルサービスを安定的に提供するために日本郵政グループの一体経営の確保、金融2社の上乗せ規制の撤廃とともに、国から日本郵政と日本郵便に全額負担が課せられているユニバーサルサービスコストも検討いただきたい」と懇願した。郵活連総会に全特役員が勢ぞろいしたのは初めてだった。
 宮下一郎議連常任幹事は「民営化当初に立ち返ると、2兆円の基金を積み、その運用益でユニバーサルサービスを支えると言っていた。当初から独立させただけではうまく回らないことを皆が分かっていた。金融2社からの交付金もできたが、足りない。しっかりとユニバーサルサービスコストを試算し、国費で支えることが必須」と強調。
 また、「三事業分離は反対だった。一体でなければ駄目と明らかになったのだから、持ち株比率3分の1を堅持することを法律に明記することだ。全てを売却して分断する形の民営化は間違いだったと、大転換を図る重要な位置付けとなる法改正。これからの地方創生の要が郵便局ネットワーク。皆で応援していきたい」と語った。
 郵便局ネットワーク維持のための国の財政支援措置創設について、国庫納付で政府に入る資金を使うべきと意見した新谷正義衆議院議員に続き、谷川とむ衆議院議員、塚田一郎衆議院議員、尾﨑正直衆議院議員、和田義明衆議院議員、武井俊輔衆議院議員、小島敏文衆議院議員の計7人が賛同した。
 国定勇人議連事務局次長は総会終了直後、「国庫等の話は、郵便局舎維持に628億円等を使うべきということだ。自治体事務を郵便局に代わってやっていただくには、郵便局がその地域にないといけない。しかし、瀬戸際に来ている。独立採算制による郵便局ネットワークが維持できなくなってきた。局舎をはじめ、局長や社員の方、光熱費等々資金が必要。維持していけば将来、支所を撤退したいと考える自治体が増えても、その場に残る郵便局に任せられる」と話した。
 総会では、滝波宏文参議院議員からも「総務省が創られたのは、自治体を担当する自治省と郵便局を担当する郵政省が合体し、シナジー効果を生み出すことが目的だった。郵便局ネットワークがさまざまな公共・公的サービスに使われることが真意。もっとできるように願いたい」と訴えた。
 古屋圭司議連副会長は「世界がうらやみ、日本が誇るものとして郵便局と消防、人的インフラがある。全特会歌に『あまねく人に幸せと』『ゆるがぬ国の礎と』とある。『文化を守るためなら大胆な改革もいとわない』のが我々の理念だ。法改正を成立させて、郵政三事業を守っていきたい」と意欲を示した。
 山口議連会長は「日本の建て直しのための議連の正式名称は『郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟』。大いに郵便局に活躍してもらうために、ぜひ法改正を実現させていきたい。あとは各党にどう理解いただくかだ。皆さんの力をお借りし、しっかり新しい法案を作り、体制を整えたい」と締めくくった。
 立ち会い会見で、柘植芳文議連事務局長は「17年間、前に進めていけなかった民営化を前に進めるための法改正で、元に戻す見直しではない。民営化という道を開いたのならば、良き形に持っていかなければいけない。輝かせられるよう日本郵政グループを改革すれば、必ず後世に新しい形が残っていく。全部株式を売却しなければ後退というのは違う」と指摘。
 さらに「日本郵政の増田寬也社長がリポートに書かれたように、地方で人や企業が減っていく社会構造の中で、一体誰が地域の皆さんや弱い立場の方に寄り添っていけるのか。郵便局はその担い手だ。民営化うんぬんの議論ではない。国として何を残していけばよいかを考えなければいけない」とも述べた。
 今後、郵活連役員は党内調整と並行し、各党の郵政議員の代表とも打ち合わせを行い、詰めていく。立憲民主党の奥野総一郎衆議院議員は「自民党から『議員立法で提出したいため、打ち合わせをさせていただきたい』と聞いている。協力し、議論を進めたい。国民民主党とは『与野党対決ムードにならないよう、できれば超党派議連をつくるように一緒に決めていきたい』と話をしている」と語る。