ザ・未来座 国定勇人衆議院議員を囲んで 郵便局長のトーク&インタビュー(上)

2024.03.13

 「令和6年能登半島地震」という悲惨な災害から始まった2024(令和6)年だが、いよいよ通常国会も幕を開けた。「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(山口俊一会長)の事務局次長として、郵政民営化法の見直しに中心的に携わる国定勇人衆議院議員(環境大臣政務官)に、中堅・若手局長お2人からインタビューしていただいた。インタビュアーは信越地方会(丸山徹雄会長:全特理事)の魚沼地区会(髙橋秀利会長)の細矢孝太局長(信越地方会中若代表/石打)と中国地方会(末武晃会長:全特会長)の広島呉地区会(向井則之会長(取材時):全特副会長)の村上司局長(中国地方会中若副委員長/広島金屋町)。厳しさが増す郵政事業に光が向けられる年になるかもしれない。(左から村上局長、国定議員、細矢局長)

強き〝人のネットワーク〟生かそう


 国定議員 まずは「令和6年能登半島地震」のお見舞いを申し上げたい。私の地元は新潟だが、広島には母方の実家がある。お2人とも、今日はご足労いただき、ありがとう。
 新潟市内も一部被害を受けたが、地元の中野小屋局は局舎が傾く中でもサービスを提供しようと努力されている姿勢に「郵政魂」を感じた。酒屋局を訪問すると、住民の方が「いつ局を再開?」と局長に問いかけていた。
 災害時には制度や手続きの重要性等々、象徴的に表れるが、他の民間の事業者とは異なる、地域からの信頼感という郵便局の原点を見る思いがした。
 直近に行かせていただいた局長会の会合では、皆さんが「復興に向けて何か手伝えないか」と能登を大変気にかけられていた。郵便局ネットワークはシステムではなく、〝人のネットワーク〟と心強く感じた。

 細矢局長 まさに強みは人のネットワークです。一昨年の新潟県北部豪雨の直後も、地方会長の許可を取って信越地方会の中堅・若手局長約100人で泥のかき出しなどを手伝い、地域の方々の「ありがとう」の言葉に皆改めて地域貢献のやりがいを共有できました。

 国定議員 住民の皆さんはさぞ喜ばれたと思う。ただ、能登の場合は相当なレアケース。これまでの災害は3方向から向かえたが、そうはいかず、自衛隊も一番行きにくい地形らしい。

 細矢局長 新潟県民の私は、元三条市長としての国定先生にもお世話になってきたと思います。自治体の首長をご経験された眼から、郵便局の長所や、もう少しここを頑張った方がよいなどの部分をどうご覧になられますか。

 国定議員 市長時代、市内の郵便局長の皆さんからさまざま前向きな取り組みを提案いただいた。民間企業からだと「地域貢献をやらなければ企業評価されない時代が来たのか」と少し斜めに見てしまうが、局長の皆さんの話は素直に受け止められた。
 郵便局は三事業の提供だけでなく、警察や役所と同じ公的な存在。住民の方々のイメージもさほど変わっていないのではないだろうか。
 民営化直後は局長や管理者との意見交換、また元旦出発式も呼ばれなくなり、急に厚くなった壁を感じた。民営化以降に入社された社員の皆さんは公的基盤の誇りを感覚としてつかみにくいと思う。組織とは人の結合体。大切な価値観が崩壊し、単なる民間企業に陥っていく姿が首長の一人として残念だった。
 局長職は公務員が持つ「ノブレス・オブリージュ(高い社会的地位には義務が伴う)」と気高き奉仕の精神を宿している。民営化当初、「普通の会社」を打ち出し過ぎたことで失った精神的資産を建て直さなければいけない。

気高き公的「郵政魂」建て直しへ

 村上局長 建て直しに向けて改正郵政民営化法の見直しの動きもあると思うのですが、進捗状況やスケジュール等の見通しをお教えください。

 国定議員 総務省の郵便料金を値上げしても1会計年度しか黒字にならず、再び赤字に転落し続けるシミュレーションは衝撃的だった。日本郵政グループを取り巻く環境は楽観視できず、制度を変えなければならない状況に追い込まれている。
 「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」の山口俊一会長の強い意志のもと、法案見直しPTで議論を積み重ねてきた。通常国会中に議員立法を提出し、成立させる手続きの一歩を歩み始めている。

 村上局長 今の課題に対し、三事業が堅持できる仕組みを作っていただくことが重要で、その上でより良い形になるためにも上乗せ規制も緩和が必要な中、株式を3分の1保有することの関係性を教えてください。

 国定議員 上乗せ規制には①新規業務②限度額③子会社保有――の三つがある。現行法は、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式全売却を民営化の完成と位置付けているが、資本関係がなくなる時点で、ゆうちょやかんぽの経営判断によって、郵便局窓口を通じたサービスをしない選択肢もあり得る。そうならないために3分の1は大きな線引きだ。法改正の柱の一つとして設けようとしている。
 株主総会は株式会社の最高意思決定機関。その特別決議には株主3分の2以上の賛成が必要で、持ち株会社が3分の1以上の金融株式を保有する形であれば、遠心力による危機を食い止められる。
 ただし、現行法のまま3分の1にとどめると未来永劫、上乗せ規制が残る。改正郵政民営化法が成立した12年前の2012(平成24)年の頃は、ゆうちょやかんぽの市場への影響力が非常に強い時代だったが、今は違う。
 一方で金融2社の現況に対し、市場の民間金融機関の体力は維持されている。そうした状況下では、逆に上乗せ規制が公平と言えるのかを議論すべきとの意見も主流になりつつあり、緩和も法案に盛り込まなければいけないと考える。

 細矢局長 議員立法は内閣法とは異なり、与党内の調整はもとより、野党の合意も必要と聞きます。与野党両先生方の理解を得るために、それぞれの局長が地元の先生に郵政事業の厳しい現状を訴えていくことも重要と思います。

 国定議員 その通りだ。局長の皆さんが動いたおかげで、危機を脱した事例もある。1997(平成9)年の橋本行革の中間報告は郵便が国営維持、ゆうちょは民営化準備、かんぽは即時民営化と三事業解体が打ち出されたが、旧郵政省と局長がコミュニケーションを取って団結し、与野党問わず関係の深い先生方に「三事業が解体すると国民生活に直に影響を及ぼす」と連日働きかけた結果、最終報告は「郵政事業庁を経て郵政公社化をする」にとどまり、事実上守り抜いた。今回も似ている。
 生活維持の公的基盤として最後の砦となる郵便局を守るには、法改正が不可欠として進めるが、見方によって民営化に逆行と捉えられかねない。
 民営化を推進された方々にも、人口減少等により時代が、地域が、大きく変わってしまったことを理解いただき、日本を守らなければならない。
 都市部の郵便局だけを見ていると理解できないかもしれないが、地域の声を代弁する局長の皆さん方から、条件不利地域をはじめ、地方を守るために伝えていただくことが重要だ。