沖縄・九州 全国初の「郵便局離島サミット」
有人離島の郵便局における地域課題を共有し、解決策を図ろうと初の「沖縄・九州地区郵便局離島サミット」が沖縄支社(金城努支社長)と九州支社(久田雅嗣支社長)共催のもと11月28日、沖縄支社講堂で開催された。伊志嶺豊和沖縄主幹統括局長が発案し、実現に至ったもので、宮下民也九州主幹統括局長も九州の離島等の課題を現場目線で指摘。末武晃代表主幹統括局長も出席し、本社の大曽根和之改革推進部長が特別講話を行ったほか、意見交換では、離島局長数名が現状を訴えた。活発な議論の後、「サミット共同宣言」が採択された。
エリアを越えて防災・買い物・医療等を協議
伊志嶺沖縄主幹統括局長 2019(令和元)年に奄美市の名瀬局で情報交換をさせていただいた際に、離島特有の地域課題を共に解決しようと沖縄でのサミット開催を発案した。コロナを経て4年後の開催。「有人離島での郵便局の役割」「自治体や企業との連携」「ユニバーサルサービス維持の要員確保」「社宅問題・災害対応・買い物支援・医療問題」等を協議、連携し、地域を守る〝郵便局の力〟を高めたい。
宮下九州主幹統括局長 九州の離島を回り、各部会と意見交換を行っている。長崎県は有人島が72、無人島が1407、鹿児島県は1256の離島のうち、有人島は28島。それぞれ地域性があり、課題もさまざまだ。離島の物産等のPRは近年、高い発信力があるインフルエンサー(SNSにより世間の思考や行動に大きな影響を与える人物)の方の活用もありだと思う。サミットの協議を共有し、継続したい。
末武代表主幹統括局長(来賓) 約2万4000局が地域のためにしっかりと働くにはどのような課題が潜むのか、特に離島は分からず、全国の離島地区連絡会を伺ってきた。東京から24時間船に乗った小笠原諸島では、ゆうパック1000個ほどを集中的に配達する大変な作業も知った。実証が開始された郵便局のオンライン診療は自治体も注目。採算が合う仕組みができ、ネットワーク維持につながることを願ってやまない。
金城沖縄支社長 「共同宣言」は、津々浦々にある郵便局がユニバーサルサービスを基本に未来永劫、郵政事業のサービスを提供できるよう、離島で暮らす方々の生活を支援し、社員が生き生きと働ける郵便局づくりを目指す。自治体や各種関係機関と連携し、離島局の利益や役割を高めるため、共に行動する。具体的な施策や計画を促進するため、2年ごとに継続し、半年に一度オンライン開催する。
久田九州支社長 離島に限った郵便局のサミットは今回が初めて。離島には特有の課題も多い。沖縄と九州の奄美は台風の通り道で、毎年災害に見舞われる。防災・減災や、地理的条件に適した地域振興が必須だ。「沖縄郵政ビジョン」を掲げたが、笑顔あふれる九州を目指し、「九州郵政パーパス」を作った。重要なことは離島に住む方々にも喜ばれるサービスを提供し、郵便局を使っていただくことだ。
【共同宣言】
① 特産品の販路拡大(都市部の局で離島フェア等を開催し、島々の特産品の周知および販路拡大につなげ、取扱数量増加で離島産業に寄与)
② 地域資源の活用(島々の風景等を題材としたオリジナルフレーム切手、ふるさと小包カタログ、チラシの販路拡大、観光ガイドブック等)
③ 医療資源の活用(心や体の健康を相談できる場として郵便局を県・看護協会と連携し活用)
④ 買い物支援の活用(局空きスペースで食料品や日用品の買い物サポート)
⑤ 笑顔あふれる職場づくり(福利厚生や職場環境の改善等を支援)
伊佐敬沖縄主幹副統括局長 なかなか直に集まれない中、一堂に会し、離島の課題を確認できたことは大きな展望につながる。アイデアや新ビジネスにパワーをいただけた。「多くの離島を抱えた沖縄地方会」との表現は本日を境に「多くの離島に支えられている沖縄地方会」に変えさせていただきたい。
中島秀一奄美地区連絡会統括局長 離島に関する意見交換会は九州各地で開催してきたが、これまでは営業面での話し合いが中心だった。離島の悩みを支社や本社に上げて、解決を図りたい。
特別講話 大曽根和之日本郵便改革推進部長 本社の改革推進部はコミュニケーションを取って現場を把握し、経営陣に伝える。デジタルが発達しても人とのつながりは大事。最後は人だ。フェース・トゥ・フェース。そこが郵便局の強み。郵便局が社会的使命を果たし、未来永劫発展できる仕組みを創っていきたい。
NHK沖縄放送局(写真は原大策アナウンサー) 災害時には自治体に電話インタビューで情報収集をするが、郵便局であれば、やや公的な立場から生活者に近い視点で、見る人が共感しやすい情報をいただける。その際にはぜひお願いしたい。災害動画は「スクープBOX」へ、写真投稿コーナー「HOTスナップ」もある。災害のみならず、協力していきたい。
沖縄県離島振興課 中嶺潤氏 沖縄には38の有人離島があるが、本島と宮古島の往復飛行機代は2万5000円と移動コストが高い。空き家が多いが住めない。社宅等の建設も全国平均の坪単価95万円に対し、180万円。さまざま課題が山積するが、地域により観光客や、沖縄に移住して東京の仕事をするテレワーカーが増えている。
沖縄気象台地域防災推進課 若松俊哉地球温暖化情報官 温暖化により、猛烈な台風の頻度が高まると予測。過去の状況が通じなくなった中、当事者意識を持ち、防災意識を高めていただきたい。沖縄気象台は本土復帰前、琉球政府郵政局琉球気象台として、郵政と一緒にやっていた時期があった。
【意見交換】 進行役:高江洲義弘副統括局長(本島南部地区)・大湾朝次郎副統括局長(本島北部地区)
主な意見
〇台風通過後も停電と復旧を繰り返した。台風通過後の業務運行の確保が課題。県議会を通った電柱地中化も必要。
〇郵便局に自家発電設備設置を。
〇観光協会と連携し、局で無人販売をすれば那覇まで行かずとも局で購入できる。
〇羽田空港での物産展が大きな収入になった。広告ビジネスにつながる。特産品を発掘し、全国に送りたい。
〇企業との接点を持つために加入する商工会の会費の支援を願いたい。
〇局でコンビニ商品の取り扱いができれば売れる。
〇トイレを借りにくる観光客が多い。局に掲示板も設置できるとよい。
〇医師不足。医療が充実しなければ人口が減る。
〇一般職と地域基幹職の統合を願いたい。
回答「自家発電は有用。郵便局だけではなく、行政を絡めて国に要請していく形をとった方が顕在化してくると思う」「防災拠点としての郵便局は重要。国の補助金もあるが、県も巻き込んだらどうか」等々、多くの提案が上がった。