全国初 郵便局でオンライン診療スタート
郵便局における全国初のオンライン診療が11月15日、総務省の2023(令和5)年度「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」として、石川県七尾市の南大吞局(池岡直樹局長、写真上)でスタートした。局の空きスペースにテレワークボックス風の診療ブースを設置。生活習慣病等の慢性疾患患者が予約日時に来局すると、局長や社員が機器を立ち上げ、診療ブースに案内する。
総務省実証 石川県南大吞局で
高齢者が多い無医地区で、医師が「運転は危険が伴うため、オンライン診療を」と患者に勧めても、「機器操作が難しいから」と普及が進まなかった課題に対し、郵便局は拠点提供と人によるデジタルサポート等で温かく貢献する。処方箋のゆうパック配送も可能。実証期間は3カ月間を予定し、良い結果が得られれば離島や過疎地にも広げていく。
診療ブースの外観(左)とブース内
地域医療支える郵便局に
今回のオンライン診療では、定期的な診療が必要な慢性疾患を持つ患者が診療所に予約し、医師の同意を得た上で郵便局に来局する。
診療所と郵便局は情報連携を行い、郵便局は患者のスケジュールを整理し、予約日時に局長や社員が機器を立ち上げ、お声掛けして診療ブースに誘導し、診察が始まる。
診察は医師対患者で、看護師を介さない形で行う。例えば、生活習慣病で月に1度病院で薬の処方を要する患者は、3カ月に1度病院でリアルな診療を受け、2回は郵便局でオンライン診療を受けられるようになる。
協力医療機関は日本ウェルビーイング協会とも連携する「ねがみみらいクリニック」(根上昌子院長)。根上院長は、雪深い七尾市で閉院する医院が市内最東端にあった事情から、「医師の空白地域をつくりたくない」と決断し、2022(令和4)年4月に引き継いで開業し、地域医療を支えている。
今年5月に社会保障審議会医療部会は、高齢者等に向けた「遠隔医療のさらなる活用」として、診療所に医師常駐との規定を改め、常駐しない診療所として、郵便局や公民館はオンライン診療の場を提供できるようになった。
ただし、医療行為はプライバシー保護を要し、局カウンターでは難しいために、診療ブースを局内に設置。また、処方箋も遠方の薬局まで取りに行くのはオンラインの意味が半減するため、薬局と連携し、ゆうパック配送もできるようにした。
郵便局が関わるオンライン診療は愛媛県宇和島市と郵便局が連携し、「スマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービス」と「タブレット端末を活用した遠隔医療支援」の合わせ技が実装として始まっているが、この場合のオンライン診療の場は郵便局ではなく、患者宅で行っている。