インタビュー 国定勇人衆議院議員

2023.11.07

 郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟(山口俊一会長)の改正郵政民営化法見直しPTでは現在、法案の要綱案を作成中だ。議連事務局次長として中心的に作成に携わる国定勇人衆議院議員(環境大臣政務官)は「全国郵便局長会(末武晃会長)も我々とほぼ同じ問題意識を持った意見書を郵政民営化委員会に提出している。これ以上遠心力が働くことは郵政の将来だけでなく、人口減少や超高齢化が進む日本の将来のためにも食い止めなければならない」と強調する。

遠心力に食い止めを

 ――公共サービスと公的サービスの違いをお教えください。
 国定議員 改正郵政民営化法の見直しは「公共サービスを含めた公的サービスを提供できる公的基盤の最後の砦としての郵便局を守る」ことが主題の一つだ。
 公共サービスとは、国と自治体等の行政が提供するサービスを指す。一方で公的サービスとは、例えば農協が提供する金融サービスは公的サービスか?と問われれば、ほとんどの人は公的サービスと答えると思うが、農家が自主的に持ち寄る直売所は公的サービスか?となると、公的サービスと思う人もいれば、そうでないとみる人も出てくる。
 同様に、市町村から依頼されずとも郵便局が自主的に取り組んできた「みまもりサービス」も、感覚的には公的サービスと捉えることができる。つまり、公共サービスよりも公的サービスの方がかなり幅広く、その範囲をどこまで広げて解釈できるかも一つの焦点になる。
 公共サービスは法律に定義があるが、公的サービスにはないため、条文は誰が読んでも同じことをイメージできる分かりやすいものにしなければならない。現段階では、PTでまとめた要綱案を自民党内で議論の遡上に載せるために、法技術的にクリアしなければいけない問題が幾つか残っている。
 衆議院法制局にも入って「この表現ではそぐわないのではないか」と、けんけんごうごうと解釈を議論する場面も多い。各地域によって必要な公的サービスは異なり、今必要な公的サービスと5年後では異なる難しさもはらんでいる。

 ――一番難しいのは3社体制でしょうか。
 国定議員 山口議連会長が今春、言及された見直し法案の骨格にもある3社体制案も、もちろん挙がっている。ただ、山口会長は郵活連見直しPTメンバー8人だけで決めるものではなく、党内に諮る段階では1本に絞らず、3社体制で進むのか、4社のままでいくのか、両案を提示して考えようとのスタンス。その後、自民党の中で議論を尽くし、総務会で議決を経るまでは条文内容は固まらない。今はその基になる要綱案を作成中だ。
 自民党は単独過半数を取っているため、党内で可決はできなくはないが、議員立法は基本的に与野党が合意しなければ通さない。連立を組む公明党にも話さないといけないし、立憲民主党や国民民主党、日本維新の会、日本共産党等にも、それぞれの見解をまとめてもらい、次の段階は野党折衝になる。
 その基になる要綱案は、法技術的に一定の及第点をもらえる表現方法を取らなければならないが、衆議院法制局に至っては、かなり厳しい。ありとあらゆる政党に理解をしてもらった上で決定しての提出に、時間は一定程度かかる。

公的基盤の最後の砦
郵政の形づくりが日本の明暗

 ――グループ一体維持に向けての見直しの焦点は、どのような部分にありますか。
 国定議員 全国郵便局長会(末武晃会長)も我々とほぼ同じ問題意識を持った意見書を郵政民営化委員会に提出している。郵政三事業の遠心力をいかに食い止めるか、が重要になるが、求心力を今以上高めるためには郵政公社に戻す形になるため、現実的ではない。
 ただし、これ以上遠心力が働くことは郵政事業の将来だけでなく、日本の将来のためにも食い止めなければならない。
 山口会長が提示した、持ち株会社日本郵政の金融2社の株式保有比率を3分の1超にとどめることも遠心力を防ぐのが目的だ。現在のゆうちょ銀行の定款(会社の憲法)には、郵便局の窓口委託を通じて銀行業務を行うことが明記され、ゆうちょ銀行の意思で郵便局から離れることはできない。それは大きな意味を持っている。
 しかし、日本郵政がゆうちょの株式を全売却、あるいは5分の1しか持ち切れないとなると、定款変更を株主総会に提出し、可決する可能性も出てくる。
 商法では、株主総会は株式会社の最高意思決定機関だ。通常決議は議決権の株式数の過半数の賛成が必要で、特別決議は同3分の2以上の賛成が必要。持ち株会社が3分の1以上の金融2社の株式を保有する形であれば、特別決議をいざという時には食い止めることができる。