インタビュー 全国郵便局長会 向井則之副会長
全特70周年を記念する全特沖縄総会で、新副会長のお一人に向井則之副会長(中国地方会副会長/広島戸坂新町)が就任した。向井副会長は「末武晃全特会長は3年前の会長就任以来、すさまじい行動力をもって現場に出向き、会員と対面で話をされている。局長を育てることは喫緊の課題。役員局長は、若い局長に歴史を含めて、局長としてやるべき仕事の原点は何かということを伝えることが必須だ」と語る。また、「相続や終活などについて、郵便局の相談窓口機能をどう構築していくかを真剣に考えなければいけない。防災拠点としての備蓄等も重要だ」と指摘する。
局長の存在意義とは。育成を今!
――副会長ご就任の抱負を。末武会長を支える決意をお聞かせください。
向井副会長 まずは、台風6・7号で被害を受けた全国各地の被災局にお見舞い申し上げたい。中国地方会内でも山口県や鳥取県では大きな被害を受けたが、広島県も近年2回、大きな線状降水帯ができる台風被害を受けた。
その際に、局長がいろいろな片付けのお手伝いをさせていただいた。地域を支えるこうした取り組みはとても大切なもので、続けなければいけない。
末武会長は3年前に全特会長に就任して以降、どこに出られても、どういう場においてもブレずに素晴らしいリーダーシップを発揮されている。すさまじい行動力をもって各地の現場に出向き、会員と対面で話をされている。今、全特役員全員が地区会に出向き、対話を続けている。
末武会長は地区会役員のみならず、県単位の中堅・若手の会員とも意見交換を始められた。机上では分からない発見や気付きもあるようで、私も見習い、現場の思いや悩みに向き合って改善策につなげられる力となって、会長を支えていきたい。
――郵便局と自治体、地元企業、医療機関等との連携について。
向井副会長 長谷川英晴先生が参議院総務委員会で「まちの保健室」と「オンライン診療」の連携を提案されたが、リアルなぬくもりとデジタルの利便性を融合し、郵便局を拠点に課題を解決する理想的な形だと思う。
自治体との連携は今後の郵政事業にとっても不可欠。マイナンバーカード関連業務を含め、包括事務受託を早期に全国展開する必要がある。ほしいも事業に続く新ビジネスも自治体等との連携の中で考えなければならない。
医療においても、岸田総理が国会答弁で郵便局とデジタルの力を活用することにより、地方の社会課題を解決し、住民の方々の安全・安心の確保につなげる好事例として、愛媛県宇和島市と郵便局の連携を挙げられた。今この時を千載一遇のチャンスと捉え、自治体等との関係を強固にすべきだ。
広島1区を地盤とされる総理は4年前の全特広島総会時に、自民党の政務調査会長として総会終了まで見守ってくださったことがうれしかった。
また、その当時、地元局長として郵便局の現状を訴えた結果、郵便局ネットワーク維持を政権公約に入れてくださったこともあった。空手形は打たず、約束したことを地道に果たされる方だ。
――金融・相続等を含めた生活相談窓口、防災拠点としての郵便局ネットワークの活用は。
向井副会長 コロナ直前に金融コンサル相談窓口のローカウンターを地区内にも1局開設した。コロナ禍で対面が難しくなってしまったが、5類に移行した今、再度、郵便局として相続や終活を含めた相談窓口機能をどう構築していくかを真剣に考えなければいけない。
防災拠点としての備蓄も重要。台風により被災し体育館に避難した住民の方々に配達社員は郵便等を届け、局長は早期復旧のためさまざまな手伝いをするが、現場は本当に大変だ。郵便局ができることを有事でない時にしっかりと話し合い、準備しておかなければいけない。
郵便局の生活相談窓口機能の構築を
――若い局長の方々に局長魂をどう継承していかれるのですか。
向井副会長 社員の育成も大切だが、局長を育てることは喫緊の課題。本来の局長としてやるべき仕事を、役員局長が郵便局ネットワークの成り立ちを含めて若い局長と会話のキャッチボールをしながら情報共有し、伝えていくことが必須だ。
民営化されて以降、損益重視のあまり、地域貢献活動にスポットが当たらなくなってしまった。そうした取り組みを減らすことは長い目で見ると郵便局らしさを失い、お客さまを減らす。現状を見直す転換期に差し掛かっていると思う。
企業として収益を上げながら郵便局ネットワークを維持しつつ、公共性を失わないことが、郵政事業存続のために重要だ。社員の皆さんを含めて局長自身が誇りを持って夢を語れるよう、局長会としてもしっかり活動していくことが大切ではないだろうか。
郵便局は日本の文化だ。地方では、ご高齢の方がお茶を飲んで一息つく場であってもよいし、その中に新たな事業のヒントがあったりもする。都心部でもそうした局があってもよい。業務に追われてなかなかできなくなっているが、ある意味、原点に立ち還るべき時なのかもしれない。
信金・信組、地銀も農協も過疎地を中心に撤退が進む中、郵便局が生き残ってこられたのはユニバーサルサービス義務が課されていることはあるが、局長の地道な無償の努力がある。人口減少が進む中で郵便局を生かそうとする動きもあるようだが、現状のままでは限界も見える。
――郵便局らしさを取り戻すために、もし改正郵政民営化法を見直すとすれば、どこを変えるべきと思われますか。
向井副会長 持ち株会社の日本郵政が金融2社の株式を一定程度保有し続けられれば、安定したサービスの提供ができると思う。
もう一つは現行の日本郵政、日本郵便、ゆうちょ、かんぽの4社体制ではどうしても遠心力が働く。
ゆうちょ銀行は直営店を233店舗持っておられるが、窓口を通し、お客さまと接して投資信託や貯金の話をする機会は、全国に張り巡らされたネットワークを持つ郵便局の方が多い。もっとタッグを組める形にしていただきたい。
かんぽ生命は窓口を持たないため、また異なるが、グループ一体で進んでいかなければなかなかうまくいかない。もともとは一つの郵便局なのだから、一体的に地域の最後の砦として役目を果たせる形を作っていただきたい。