インタビュー 長谷川英晴参議院議員

2022.12.10

 コロナ禍を経て、急速に進むデジタル化。時代の変革期において自民党は長谷川英晴参議院議員を「日本ウェルビーイング(世界保健機関憲章を基に肉体、精神、社会等を総合的に満たす持続的な幸福)計画推進特命委員会」の事務局次長に選任した。長谷川議員は「人の手を介さなければできない役割を郵便局が果たすことはデジタル田園都市国家構想と合致する。〝拠点〟と〝人〟を生かし、さらに細やかに地域と連携すればもっと貢献できる」と指摘する。

もっと地域に、細やかに連携を

 ――マイナンバーカード普及のために郵便局はどうすべきとお考えですか。
 長谷川議員 マイナカードは郵便局では交付まではできないが、「申請支援」とカードに搭載される「電子証明書の発行・更新手続き」(5年に一度必須のメンテナンス業務)もできる。どれくらい多くの自治体と連携できるかが重要だが、全国の携帯電話販売代理店が各地で申請業務を展開できるのは各自治体と交渉するやり方でなく、総務省の企画コンペの結果、委託を受けている。
 しかし、携帯電話ショップがない地域にも郵便局はある。全国1718もある市町村それぞれに局長や支社が行って説明するやり方ではなく、国が「郵便局で申請できます」と一挙に広める形でなければなかなか難しい。
 法的な壁もあるが、申請支援のみでは郵便局で申し込んでも交付時に住民の方が自治体に行かなければならないため、ちゅうちょされる自治体もあるだろう。交付支援まで郵便局でできるようになると、過疎地を含めた全国ネットワークによって国全体の普及率が一気に高まるはずだ。

デジタル田園都市を〝拠点〟と〝人〟で

 ――デジタル田園都市国家構想に向けて郵便局ができることは。
 長谷川議員 急速にデジタル化が広がる中、デジタルとリアルをつなぎ、地域を幸せにすることはウェルビーイングの概念からも重要だ。
企業等が地方から撤退する時代に、郵便局のネットワークや郵便配達網、そして郵便局の存在に、よりリアルな価値は高まる。ラストワンマイル、最後に人の手を介さなければできない役割を郵便局が地域の実情に応じ、全国ネットワークで果たすことはデジタル田園都市国家構想と見事に合致する。「まちの保健室」もその一例。鳥取県で始まり、島根県で郵便局とコミュニティナースカンパニー㈱が連携し、実施している。
コロナを発端に、リモートでも仕事ができるなら故郷に戻ろうと人の流れが起こりつつある。田舎に帰った時に情報発信の拠点としてWi-Fi環境も整え、郵便局に行けば何とかなる形にできるとベストだ。群馬県前橋市の「MaeMaaS(まえまーす=前橋版次世代型移動サービス)」、沖縄県等でも始まった「まちの保健室」、愛媛県の「笑顔のスマホ相談窓口」、静岡県藤枝市の「郵便局のデジタル活用支援」等々、デジタル社会を郵便局が支える素晴らしい取り組みだ。
 地方創生に向けて、空き家見守りも素晴らしいが、空き家売買による地域活性化のニーズも高まっている。JPデジタルの飯田恭久CEOがインタビューで、日本郵政グループの潜在能力として、グループ内に約150名の1級建築士がいると答えていた。
 通常の空き家売買は企画会社が間に入り、清掃して建築士に外注する。しかし、1級建築士がいるのなら、グループ内で丸抱えできる。そう考えると子会社を含めてもっとできることがある。さまざまな企業等と手を組むことも重要だが、専門的な知識・技能を有した社員(ヒト)、局舎と配達の二つのネットワーク(モノ)、莫大な資金(カネ)をうまく活用すれば地方創生への寄与だけでなく、健全な経営に向けて必ず何かできる。

 ――デリバリーを郵便局が実現するためには。
 長谷川議員 大抵は物流コストが採算に合わない、となる。局内にコンビニの無人店舗を設置し、スーパーまで行かずとも近隣の郵便局で食品や日用品を購入できる形も、買い物サービスとしてデリバリーと同じ意味を持つ。ただ、
無人店舗は金銭トラブルの問題が多いため、デジタル決済にして高齢者の方から「分からない」と聞かれたら局長や社員が教えてあげるなど、デジタル難民を郵便局が守っていく体制が大事だ。
 今後、デリバリーを運営する際の共創先はコンビニだけに絞るのでなく、地元商店等と組んで地域を活性化することも郵便局の役割だ。民間の車を使い、局スペースを貸す「やさいバス」は、バスで野菜を集めながら停留所の郵便局で販売し、常時完売すると聞く。
 例えば、地方の郵便局は局長も社員もマイカーで通勤するため、局長がマイカーで食品や野菜を取りに行けるようになればいろいろな展開もできる。民営化以降、貨物法制でできなくなったが、法がクリアできれば、隙間時間に局長がマイカーに弁当を乗せて地域の配達に回ることもできる。

 ――試行中の窓口営業時間の弾力化もそうした取り組みができれば理想的ですね。
 長谷川議員 「デリバリー代行サービス」の時代だ。数分歩けば飲食店がある都会でさえ、面倒な時は頼みたくなる。一方、飲食店が遠い田舎は頼みたくても頼めない。これを局長が地域の商店と組んでできれば必ずニーズがある。乗り越えるには貨物法制の問題が出てくるが、郵便局が担うアイデアを今こそ考えてみるべきだろう。
 生産から販売に至るまで人が入ることで農家の収入は減るが、直で結ぶ仕組みを作ろうと取り組む志あるベンチャーの方々も増えてきた。生産から販売に至る中に段階的に人が入ることで農家を守り、食す方にとっても良い。産直、地元農家を応援する仕組みビジネスを日本郵政グループとしてもっと取り組んでいただきたい。
 脱炭素も国家的な課題。環境配慮型郵便局(+エコ郵便局)第1号の千葉県・丸山局も太陽光発電等との合わせ技で、さらに自治体や地域と連携していくと興味深い。木材建築は低コストで、短工期。メンテナンスすれば50~60年もつ。省エネ、経済性、健康、持続可能性の価値を高めるのが国内の木材だ。

 ――郵便局の共創先をさらに細やかに地域に眼を向けるべきということですか。
 長谷川議員 おそらくそれが皆の思いだろう。郵便局が他企業と決定的に異なるのは既に全国に拠点があり、施設を作る必要がない。また、局舎には局長と社員の最低2人がいる。しかも65歳以下。人生100年時代から見れば、まだまだ若手だ。〝拠点〟と〝人〟の価値を生かせば、もっと細やかに地域に貢献できることがある。公共福祉の支援的な仕事は堂々と国や市町村からお金をいただける形を作らなければいけない。それが国を守ることにもつながる。
 デジタル化は必然。キャッシュレスも当然。しかし、郵便局にお客さまが来なくなってしまうようでは肝心の郵便局が生き残れない。それでは日本郵政グループの未来を閉ざしてしまう。
 地域の〝最後の砦〟であるべき郵便局が国民の味方、庶民の味方として生き残るにはどうすべきなのか。そのための局舎の形とはどうあるべきか。現場の意見を吸い上げ、社内ベンチャーのような形で進めるのは良い発想だ。「みらいの郵便局」でどのようなアイデアが選ばれるのかにも注目したい。ヒントは必ず現場にある。