インタビュー 鎌倉新書 清水祐孝会長CEO

2022.01.01

 一度きりの人生を、憂いなく、家族や友人への感謝の気持ちで総仕上げしていく「終活」のニーズが高まっている。日本郵便と連携した「終活紹介サービス」の試行を、東京都および北海道全域で提供している㈱鎌倉新書(小林史生社長)の清水祐孝会長CEOは「郵便局はリアルな接点を持ち、お客さまの顔を見て終活の提案ができるのが一番の強み」と心から期待を寄せる。

終活相談、リアルな強み持つ郵便局に期待

 ――仏教書の出版社から発展し、現在は葬儀やお墓、仏壇、相続などの情報やサービスを提供する「終活インフラ企業」として進化を続けられていますね。
 清水会長 つぶれそうだった父親の会社に入社したのは27歳。事業を終活の領域に転換したが、葬儀やお墓の購入は人生に1度きり。野菜や家電を買うのとは違い、買い手側の情報はとても少ない。情報の非対称性が極端だ。初めて直面する課題に戸惑う方が多い中、葬式や相続、介護、保険など終活全般のお手伝いをしていくことが、我々の会社がやるべきことだと考えている。
 ――日本郵便との連携は2018(平成30)年から東京都江東区内40局で始まりました。
 清水会長 現在、東京約1500局と北海道約1200局の合計約2700局と連携している。相続に関する相談が最も多い。日本郵便ホームページの「終活紹介サービス」からの問い合わせも増えているが、インターネットを使いこなせる高齢者は多くない。郵便局はリアルな接点を持ち、お客さまの顔を見て終活の提案ができるのは一番の強みだと思う。
 ――郵便局は長年、地域や社会への貢献活動を続けていますが、「企業の社会貢献」についてのお考えは。
 清水会長 その商品やサービス自体によって、世の中の役に立っていくことが社会貢献の一つだと思う。我々でいえば終活サービス。そして、売り上げを増やし、雇用を増やし、利益を社会に還元していく。その上で、企業の体力が許す範囲で世の中のためになる活動を行うべきだ。
 弊社では2010(平成22)年から、先立たれた方への手紙を募集するコンテストを開催してきた。8回目の今回、入賞100作品を掲載した書籍『今は亡きあの人へ伝えたい言葉 8』を11月に発刊した。今後もさまざまな形で社会に貢献していきたい。
 ――セミナーで「エンディングノート」の書き方などを講演される中、一番伝えたい思いを教えてください。
 清水会長 人間、誰もが必ず「その日」がやってくる。未来から今を見つめて、自分がやり残したこと、やるべきことを考えて行動していくことが終活だと考える。エンディングノートは〝人生の棚卸し〟で、銀行口座にいくら、株がどれだけあるということも書くが、残りの人生計画を書いていく中で本当に大切なことが見えてきて、周囲への感謝の思いが湧いてくる。
 日本は世界一高齢化が速く進む社会と言われている。シニアの方々が明るく前向きに生き、家族や友人に感謝して生きる社会をつくることが重要だと思う。そのために今何ができるのか、私自身、残りの人生で突き詰めていきたい。