インタビュー 菊地元 信越支社長

2021.12.14

 今年4月に信越支社長に就任した菊地元支社長は支社管内のAIみまもりスピーカーの試行状況等を見て「このサービスも、社員が熱心にフォローアップを重ねてきたことで、市町村やご利用者の方々に喜んでいただき、信越管内の試行実施が広がってきた」と話す。「『リアル×デジタル』で、リアルのネットワークである郵便局から見て大切なことは、デジタル技術と〝人間のかかわり合い〟」と指摘。郵便局の強みを生かすため、郵便局のひとの力で、地域との連携を深めていく方針だ。

大切にすべき〝地域〟とのかかわり

 ――4月に支社長に就任されましたが、改めてご抱負や感想をお願いします。
 菊地支社長 今年度は、郵便制度改正に伴う郵便サービスの見直しや新しいかんぽ営業体制の構築を実行に移し、中期経営計画「JPビジョン2025」がスタートする年。
 また、積極的な金融営業を再開し、新しいマネジメントに取り組む年。こうした大きな変革の時に支社長を務めるので、謙虚な気持ちで、現場目線に立って責務を全うしたいと考えている。郵便局の強みを生かし、伸ばしていくため、地域との連携やCS向上を重視しているが、まずは、重要施策を中心に現状をしっかり直視し、社員の意見を聞いて、目の前の課題に一つ一つ取り組んでいくことを心掛けている。
 着任以来、実感しているのは、郵便局、支社・エリア本部の社員のひたむきさ、郵便局ネットワークと郵政事業の可能性。信越の郵便局、日本郵政グループの力が一層発揮できるように、率直にコミュニケーションし、精いっぱい頑張りたい。
 ――支社長室の近くに「信越ゆうパック拡大推進本部」の看板が掲げられていますが。
 菊地支社長 会社全体で、郵便・物流事業の営業利益は、ゆうパック等の荷物の割合が、2017(平成29)年度に4割であったが、3年後の昨年度は8割を占めており、急速なシフトチェンジが進んでいる。成長分野であるゆうパック拡大が事業にとって非常に重要だが信越では、ゆうパックの引受個数が全国的には増加に転じた昨年度も、大口顧客の影響を受け2年連続して減少し、年度当初も厳しい状況であった。このため、「拡大推進本部」を立ち上げて取り組みを強化することとした。郵便局を選んでいただいた既存のお客さまを従来よりも重視し、できるだけきめ細かな推進管理と、郵便局へのフォローアップに取り組んでいる最中だ。

郵便局の「ひとの力」生かしたい

 ――営業本格始動に向けた特徴的な取り組みや社員育成は。
 菊地支社長 今年度の金融営業は①アフターフォロー活動による信頼回復②営業活動を通じた信頼構築――の2本立て。第3四半期からは管理者・役職者と社員が相談しながら活動内容を改善していく活動マネジメントの浸透・定着に重点を置いている。
 社員の気持ちはだんだんと営業活動を行おうとしていると感じる。しかし、「ブランクがあり、提案する自信がない」「販売経験や商品・業務知識がないので声掛けできない」「事故・コンプラ違反とならないか不安」といった声は依然少なくない。このため、全社共通の体系的な研修のほか、これを補完していくため、エリア本部の協力を得て、郵便局へのフォローアップを重ねている。地区連絡会・部会によっては、お声掛けに不安を感じている社員のため、商品・業務知識を実践するロープレ研修などを実施している。
 活動マネジメントの定着に向け、第3四半期は、褒賞施策を実施している。これは、お客さまへの提案、活動マネジメントに意識して取り組むことや部会長等が各局の状況を把握し指導する〝キッカケ〟とすることが目的。ここで得られた好取り組みは横展開していきたい。次年度から予定されている純増目標設定に先立ち、ふさわしい基盤をこの時期に作っていくことが必要。社員のスキルアップは重要で、節目では集合形式で直接的に意見交換する機会を設け、業務関係で好評であった動画コンテンツを配信するなど、工夫していきたい。
 ――スマートスピーカーによるみまもりサービスで先行しています。
 菊地支社長 スマートスピーカーによるみまもりサービスも、このサービスの意義に共感する支社や郵便局の社員が熱心にフォローアップを重ねてきたことで、管内での試行実施が進み、市町村やご利用者の方々に喜んでいただいたと考えている。市町村と連携した取り組みとして、事業化も積極的に視野に入れて進めていきたい。また、従来からのみまもりサービスでも、重視しているのは「サービス品質」。このサービスを必要としている人は信越エリアにいらっしゃるし、その利用者やご家族に喜んでいただけるように、毎月の報告書を充実させることを進めている。
 ――「さやまるトマト事業」のビニールハウスが見えます。
 菊地支社長 研修センター運動場跡地のビニールハウスも本年度から2棟が6棟になった。日本郵便本社の取り組みだが、皆さん本当に頑張っているし、ほかでもない信越での取り組みなので、自分たちも応援していきたい。
 ―信越での「共創ネットワーク」の取り組みについては。
 菊地支社長 一昨年から、全国で初めて長野県泰阜村と温田局との間で包括的な行政事務の受託が始まった。9割超の自治体と包括連携協定を締結しているし、昨年度からは基本三協定に基づく道路損傷の情報提供なども重点化している。地域との連携は自分の関心事項でもあり、今後は、市町村以外の法人や団体を含めて、強化していきたい。郵便局ネットワークは、信越のような地域こそ、お客さまや地域とのかかわり合いが深く、必要とされているし、また我々の可能性も大きい。        
 ――デジタル化が進む中での郵便局ネットワークの将来像をどうご覧になられますか。
 菊地支社長 制度的には、郵便局ネットワークは、郵便、金融のユニバーサルサービスを提供する拠点としてあまねく設置すると、位置付けられている。しかし、社会インフラとして求められたこの仕組みは、これまで築いてきた信頼と実績の裏付けがあって成り立っているし、これからもその重責を果たしていかなければならない。
 そのために、お客さまとの接点である郵便局は、技術・ニーズが進展し、地域の状況が変化する中で、取り扱う商品・サービスや働き方も変化していく。お客さま志向で、進歩させていかなければならない。地域とのかかわりを強化することが、郵便局ネットワークの強みを生かし、伸ばしていくために重要だ。
 『リアル×デジタル』で、リアルのネットワークである郵便局から見て大切なのは、デジタル技術と人間のかかわり合い。技術そのもののみで優位性を確立することは容易ではない。高齢者など大きな変化に対応できない人は多いが、郵便局のひとの力でカバーし、取り残さないようにすること、それが我々の強みを生かした価値の提供となる。
 例えば、ゆうパック拡大でも、デジタル技術が得意でない農家などのお客さまに、社員がゆうプリRの操作方法なども親身になって丁寧にフォローしていくことで、実差出につながっている事例が少なくない。アフターサービスまで含めてサービス。デジタル化が進む中でも、どこまで親身になってお客さまとつながり、向き合うことができるか、いろいろな局面で意識するようにしていきたい。