インタビュー〝実は私も郵政出身〟 岡山県倉敷市 伊東香織市長
岡山県倉敷市の伊東香織市長は、2008(平成20)年から市長を務める。旧郵政省の出身者で、郵便局長の経験も持つ。18年の西日本豪雨で同市は甚大な被害を受け、復旧・復興に全力を尽くした。防災に力を入れる市長は、郵便局に街の防災スポットとしての期待を寄せる。
郵便局を〝街の防災スポット〟に!
――市長は栃木県の日光郵便局長を経験されています。
伊東市長 1990(平成2)年に郵政省に入省し、配属先は本省の郵務局だった。郵便局と地方公共団体等との連携を進める担当で、住民票や戸籍などの公的書類を郵便局で申請・受け取りができるように関係省庁と協議を進めた。
95年には日光郵便局長を拝命。地域活性化へ局のホームページを立ち上げ、インターネットで霧降の滝の記念切手や観光の情報を発信した。当時としては郵便局初の試みだった。
――倉敷市は7年前に甚大な豪雨災害に見舞われました。
伊東市長 真備地区では、約1200㌶にわたり浸水があり、最大5㍍にも達した。約6000棟の住家が全壊、大規模半壊等となり、災害関連死23人を含む75人もの方々が犠牲になられた。
発災直後から、人命救助、72か所の避難所運営、生活物資の確保、住む場所の確保、膨大な量の災害廃棄物の片付けなど、市民をはじめ全国から多くの支援をいただきながら復旧・復興に懸命に取り組んだ。
今後も真備地区に安心して住めるよう、小田川合流点の付替え事業など、抜本的治水対策の早期実現を国に働きかけ、5年で工事を竣工してもらった。
また被災者の皆さんは、住み慣れた土地を離れての避難生活となるため、地域との絆を保てるように心掛けた。真備地区の今を掲載した「まび復興だより」を月2回全被災世帯へ郵送し、さらに約50人の見守り連絡員に仮設住宅をたびたび訪問してもらって、困っていることを相談できる体制とした。
郵便局とは被災前から災害時における相互協力の覚書を結んでおり、避難所への支援物資搬送をはじめ、郵便物転送サービス、臨時貯金窓口開設などにも早くから取り組んでいただいた。
全国郵便局長会(勝又一明会長)の皆さまからの心のこもった義援金も頂戴し、心から感謝している。
――防災に関して郵便局に期待することは。
伊東市長 真備地区では4局が被災し、今年4月に最後の局が再開した。倉敷市は瀬戸内海にも面しており、南海トラフ巨大地震の際には津波も心配だ。すでに一部の局では、災害への備えなど防災に役立つ情報をお客さまに提供してもらっている。
市では市内の郵便局と防災協力に関する協定を近く締結する予定で、局にハザードマップを掲示してお客さまに地域の避難場所を周知してもらったり、緊急告知FMラジオを活用して局で災害時の緊急情報を受けてもらえるようにするなど、〝街の防災スポット〟として大いに期待している。