インタビュー 全国郵便局長会 宇野憲二理事(北陸地方会会長/三方)

2024.12.01

 全国郵便局長会(末武晃会長)は12の地方郵便局長会の力が源泉となっている。今回は宇野憲二全特理事(北陸地方会会長/三方)に郵便局、そして地域への熱い思いを語っていただいた。

〝人手不足〟解消の役目を郵便局に

 ――9月21日から23日にかけて、奥能登を襲った豪雨災害後の状況をお教えください。
 宇野理事 私は発災後約3週間後に現地を視察したが、田んぼの中に根付きの大木や土砂が多く転がっていた。
 震災で地盤が緩んだ地に、線状降水帯の大雨が降ったことで山肌が崩れ、泥の「山津波」が押し寄せた。自局の町野郵便局(輪島市)が床上浸水に見舞われた能登地区会の坂口高雅会長は「あれでも片付いた方です」としみじみと語られていた。
 一方、珠洲市の大谷郵便局(石田晃教局長)は、局舎と自宅は耐震工事をされていたことで地震時は崩れなかったが、今回の大雨では2㍍以上が土石流で埋まってしまった。
 石田局長は現在、避難先の社宅から近隣局に通勤されているが、発災後3週間はご夫人の実家がある白山市から往復6時間かけて近隣局まで通勤された。局長としての責任感に敬意を表したい。
 輪島市内の南志見郵便局は10月16日から、河原田郵便局は11月1日から再開できた。被害が激しかった珠洲市大谷地区は、住民避難地域に指定されて人が戻れない状況。重機による土砂撤去作業も、時間はまだかかるようだ。

 ――郵便局ネットワークの在り方については。
 宇野理事 人口減少の中において、特に過疎地等では、郵便局は唯一の金融機関であり、公共的な機関でもある。郵便局は、地域のよりどころとして〝維持〟が必須だと思う。
 最近は介護や建設業、運送事業等で「人手不足による倒産」があるらしい。行政は大丈夫かと思っていたが、市役所や町役場の方々から、「自治体も今は人手が不足している」と伺った。
 郵便局には〝人〟がいる。地域にもよるが、朝から晩まで繁忙というわけではない。自治体業務を委託いただければ、自治体も人手不足をカバーすることができる。地方公務員法の縛りも徐々に緩和されていると聞く。行政の守秘義務もあるが、もともと郵便局は通信の秘密を守る〝守秘〟に親和性を持つ。
 石川県加賀市内の郵便局では、マイナンバーカード関連業務を受託し、頑張っている。自治体等にとって郵便局への業務委託は手数料を支払う必要があるが、地域にお住まいの方のために、あらゆる行政事務を郵便局で受託できる形ができるようになればと思う。
 また、総務省の実証事業が行われた七尾市の南大呑郵便局のような「郵便局のオンライン診療」もぜひ広げていただきたい。

 ――民営化法の見直しの、どのような部分に期待されますか。
 宇野理事 最も優先いただきたいのは日本郵政と日本郵便の統合。同じ会社になることで、日本郵政グループの根幹である「郵便局ネットワーク」を有する日本郵便の経営基盤を強固にしていただきたい。
 見直し法案の項目には、郵便局が請け負う公的な仕事を「本来業務に位置付ける」との柱があると聞いている。
 自治体業務を部分的ではなく、郵便局が仕事として包括的に受託できれば、地域を守る郵便局ネットワークをさらに生かすことができ、非常に期待している。