郵政の原点は防災にある 日本防災士会 浦野修会長

2024.03.06

 能登半島の被災地に今、防災士たちも現地の状況を見ながら入り、復旧・復興への支援活動が始まっている。日本防災士会の浦野修会長(元全特会長)は「これだけの災害大国で何も備えができていない。〝防災省〟を設置するべきだ。郵便局の空きスペースや倉庫に災害備蓄品を置いておけば、いざという時に対応できる」と強調する。

備えが全くできていない状況が悲劇を大きく

 ――「令和6年能登半島地震」の特徴は。
 浦野会長 直下型のマグニチュード7.6の強大な縦揺れ、横揺れが続き、さらに液状化が起こり、その上に海岸線が隆起した。この三つがそろったことは、いまだかつてなかったと思う。
 しかも、感染症が収束していない中で、公共施設などの避難所運営はごちゃ混ぜで、区分もできていない。体育館の床は硬く、冷たい。緩衝材を敷くだけでも保温力が増し、クッションになる。軽く、持ち運びも簡単だ。しかし、そうした必要不可欠な準備もされていない現状がある。
 仮設トイレも屋外に設置しており、大雪が降ればお年寄りは行けない。今は水を使わず、熱圧着によって排泄物を1回ごとにラップして密封するポータブルトイレが多くの自治体でも備蓄品としてそろえている。雨水などをろ過する浄水器もある。そういう備えが、これだけの災害大国で全くできていない状況が悲劇を大きくしている。
 防災に関係する省庁は、内閣府、国土交通省、総務省、復興庁などがあり、縦割り、横割りの弊害がある。今こそ、所管官庁を一本化して、時限立法の復興庁を改編し、危機管理条項を含めた〝防災省〟を発足させ、自然災害に強く安心・安全な社会を目指すべきと考える。

 ――防災士の取り組みについては。
 浦野会長 阪神・淡路大震災という公的機関の限界を超えた大災害の中、隣近所の人たちが命懸けで多くの人を助けた民間力が防災士誕生の原点だ。
 当会では東京都支部が新しい陣容となった。23区と多摩に分けて、4月に集会を開く予定だ。
 東京都教育委員会では都立高校生に防災資格の取得を支援しており、1000人ほどの規模になっている。若者と一緒に防災訓練をするなど進めていきたい。あの目の輝きが育っていけば、災害時にも大きな力になる。

 ――防災における郵便局への期待を。
 浦野会長 郵便局は施設も人手もある。空きスペースや倉庫に災害備蓄品を置き、いざという時に対応できるようにしておく必要がある。取り組みが進んでいる液体ミルクも備蓄できるとよい。
 初代駅逓頭(後の郵政大臣。2代目は前島密翁)を務めた濱口梧陵は、1854(安政元)年に今の和歌山県を襲った安政南海地震の津波の際、村人の9割以上を救い、私財を投じて巨大堤防も築いた。郵政の原点は防災に通じている。
 郵便局は地域に寄り添い、人の役に立つ文化だ。今後も一層、全特と連携し、防災士のフォローアップ研修を全国的に展開できればと検討している。災害対策は待ったなしだ。