新春インタビュー 日本郵便 千田哲也社長
――「ウェルビーイング」が注目されています。「心の豊かさ」に必要な〝人〟がいる郵便局ほど強い企業はないと思えますが。
千田社長 「令和6年能登半島地震」のお見舞いを申し上げます。会社の成長のためには、「社員の力」が最も重要で、競争力の源泉だ。社員の皆さんが仕事に満足して幸せになって初めて、お客さまに素晴らしいサービスを提供できる。
〝成長〟を社員の〝幸せ〟から発信
「会社の将来像を描き、ストーリーを示す」「商品やサービスをお客さまに喜んでもらえるように競争力のあるものにする」「社員のモチベーションを上げる」を常に意識し、取り組んできた。
大きなところでは八つのPTの立ち上げ。その一つ、「人事戦略改革PT」は郵便局、本社、支社を含めて持続的な成長を実現するために「社員の力」を質的・量的にもつくり上げることが目的。
やりがいを持ってお客さまからも同僚からも褒めてもらえる環境づくりが大切だ。頑張る社員を認め、評価し、〝見える〟形で「報われる仕組み」をつくる。
郵便局の存在意義とは、地域に根差し、地域の方に愛されていること。「郵便局らしさ」のためには「リアルとデジタルの融合」が必要で、「人のあたたかさ」が欠かせない。
皆が生き生きと前向きに頑張れる会社を目指した上でお客さまに喜ばれるサービスを提供できるよう全力で取り組む。
――金融・行政・健康(オンライン診療)等々、住民の方々の相談拠点としての各局窓口への「タブレット端末」の導入計画や、中計見直しの中での位置付けをお教えください。
千田社長 オンライン診療は国の規制緩和により、へき地等で一定条件のもとで公民館や郵便局でも可能になった。とはいえ、医療行為の実施環境整備をサポートすることになるため、どのような準備や対応が必要なのか、自治体や医療機関の方々の考えを踏まえ、可能性を探る。
なお、郵便局に配備された業務用タブレット端末は金融商品のオンライン相談等に活用されており、今年度は2万1000台を更改配備(初期導入の2万台はサイネージとして活用)。今後も機能拡充、端末増備を行い、郵便局の利便性向上と業務効率化を計画中だ。
――「郵便局アプリ」について、若い層にどうアプローチされるかを含め、2024(令和6)年以降の展開・展望は。
千田社長 24年度以降は、日本郵政グループ各社の主要サービスを1つのアプリでご利用いただけるよう、日本郵便に加え、ゆうちょ銀行、かんぽ生命のWeb・アプリサービスとの連携について検討を進めたい。
日本郵便の「ゆうびんID」をグループ各種サービス利用時に活用できるグループ共通IDとしてリニューアルすることで、グループのサービスをワンストップで利用いただけるようにし、よりパーソナライズに特化したご提案やポイントプログラムなど、「アプリやIDに登録しないと損だな」と思われる中身にする。
利用されるお客さまの年代もさまざまだが、若い層のお客さまも興味を持っていただくきっかけになれば。
――ぽすちょこ便は5年間で160地域に拡大されるとのことですが、今後、買い物支援にどのように応用されるのでしょうか。
千田社長 第1弾に山形県鶴岡エリア、第2弾として奈良県奈良エリアで開始したぽすちょこ便は「地産地消」をテーマとしている。運営する中でお客さまの声に寄り添い、改良を加え、利用拡大を図る。
ぽすちょこ便を展開するためのテーマの一つである「買い物支援」の実現には高いコストが課題となっていたため、新たな配送方法の一つとして、既存の拠点間配送車両の空きスペース活用によりコストを抑えた「ぽすちょこ便」の枠組み活用を検討している。
――小荷物ニーズに応えるために郵便ポストの口を広げる予定は。物流営業に局長の力を生かすお考えはありますか。
千田社長 EC・フリマ市場拡大を踏まえた差出利便性向上を目的に、厚さ7㌢以内の郵便物等を投函できるよう、差し入れ口を改良した新型郵便ポストを現在7都府県の14局に設置しているほか、ポスト更改にあわせてレターパックサイズに対応するポストへの切り替えを進めている。
郵便局アプリでは、ポストの位置や取集予定時刻とともに、投函口サイズも案内している。
今後、荷物を通じた利益確保は大変重要だ。積極的な営業活動を通じ、割合を一層高める必要がある。外務社員のみではなく郵便局窓口での情報収集に力を入れ、情報を基に営業活動を展開し、多数のゆうパック契約をいただいている。局長はじめ、窓口社員の皆さんの力を生かしていきたい。
――マイナンバーカード交付を含めた自治体への働き掛け等、公的な郵便局価値をどう高めていかれますか。鉄道事業者との連携の方針を教えてください。
千田社長 法改正で受託可能となったマイナンバーカード交付申請の受け付け等事務については、総務省の「自治体意向調査」を踏まえ、対象市町村への提案活動を実施した。その結果、複数の市町村から委託意向が示され、間もなく実装局が出るが、拡大すべく、引き続き市町村への提案を進める。
それ以外にも、マイナンバーカード電子証明書関連事務や自治体購入キオスク端末の設置・運用事務など、自治体事務の積極的な受託を通じ、郵便局の安心感と信頼感を幅広く浸透させ、ブランド価値を向上させたい。
JR東日本とは、千葉県江見駅局に続き、24年度に安房勝山駅(千葉県)と蒲須坂駅(栃木県)で局窓口と駅窓口の一体運営を実施する予定。
また、しなの鉄道との間で大屋駅(長野県)の窓口一体運営計画も発表した。今後も、地域活性化やお客さまの利便性向上に向けて、鉄道事業者との連携を推進してまいりたい。