日本郵便 木下範子監査役インタビュー「本社・支社・郵便局が自由に語りあえる風土を」

2026.02.22

東京支社長と南関東支社長を通算で4年4カ月、日本郵政と日本郵便の常務執行役員も歴任された日本郵便の木下範子監査役は「郵便局は奥が深い。本社と支社と郵便局が垣根なく自由に話合える素地が整っていないことがさまざまな問題の根底にあるようにも思える。郵便局ネットワークは全国に広がっていて大変だが、諦めずに取り組んで腹を割って話す関係を一人でも多くの社員が作っていければ、垣根を越えて自由に話せる風土が自然とできてくる」と語る。また「お客さまと日々向き合っている郵便局の一人ひとりの社員こそが郵便局そのもの。本当に頑張ってほしい」と期待を寄せる。

郵便局の一人ひとりの社員こそが郵便局そのもの

――監査役とはどのようなお仕事をされるのですか。
木下監査役 監査役の仕事は、簡単に言うと会社が健全に運営されているかを確認することだ。郵便局が業務をきちんとやっているかを見るのではなく、本社が出す施策や取組みが郵便局に正しく伝わっているか、郵便局で困っていること、要望や課題意識はどのようなものかを掌握し、経営に活かしてもらうようフィードバックをする。会社の経営に対して責任をもつ取締役が会社を正しい方向に導いているかをチェックすることが、重要な役目になる。

――次期中期経営計画骨子をどのように見ていらっしゃいますか。
木下監査役 日本郵便の2025(令和7)年度中間決算では、郵便・物流の業績予想が下方修正され、240億円の赤字という極めて厳しい状況となった。窓口の業績予想も40億円と厳しい状況であることに変わりはない。そうした中で、集配ネットワーク再編や不動産事業へのシフト、地域事情にあわせた郵便局ネットワークあり方を記した次期中計骨子はあるべき方向に踏み込んだものと思う。

民営化当時、経営企画部にいて経営計画や予算にも携わらせていただいたが、骨子で示されたような姿はその時点から意見としては出てはいた。さまざまな事情もあり表に出てこなかったものが、時代が変化する中でやっとここまで来たとことは感慨深い。まずはスピード感を持って形にすることが勝負。そして、単に「やりました」だけでは弱く、業績にもしっかりと反映されていかなければならない。行為と結果の両方が求められる非常にシビアな問題になる。

ユニバーサルサービスの維持という命題が、思考を止めてしまったこともこれまであったことは否めない。しかし、制度をどうするかの前にまず組織としてやっていかなければならないことも多い。「柔軟な発想」「決断力」、非常にハードルが高く厳しい中を「大車輪で回す実行力」が今、問われている。一筋縄でいかないが、もはや待ったなしの状況であり、次期中計の内容はその腹決めの表れだと思う。社会の変化のスピードに追い付かなければ、周回遅れとなってしまう。

そのためには持株会社の強いリーダーシップが求められると思う。郵便・物流はやはり日本郵便の責務が大きいが、金融は受委託関係でゆうちょとかんぽの手数料が大半を占める中で郵便局が賄われてきた。ゆうちょ銀行、かんぽ生命、日本郵便それぞれが自社の最適解を求めることは、必ずしもグループとしての最適解とイコールとは限らない。だから持株のリーダーシップが重要になってくる。

――東京支社、それ以前に南関東支社の支社長をご経験された視点から、現場の肌感覚がトップにわかりやすく伝える仕組みはどのように改善されてきたのですか。
木下監査役 支社長を経験して痛感したのは、郵便局は本当に奥が深いということ。通算4年4カ月支社長を経験したので「現場のことはよくわかっているでしょ」と言われることがあるが、とんでもない。東京と南関東でも違うところは多々あり、ましてや全国を見ればさらに多様。

現場の意見がトップに伝わりやすくするための施策として、例えば郵便局モニター制度や目安箱、ご意見箱で意見が吸い上げる仕組みも定着し、一定の効果を果たしていると思う。

しかし、現場の空気を肌で感じるためには、直接郵便局に足を運んで、働く場所や地域、社員の顔を実際に見ることが必須。その意味でも本社と支社の人事交流やフロントに近いところに人を厚くしようという方針は、良い方向性だと思う。持続し、流れを作っていただきたい。

ただし、現場を知るには行かないことにはわからないが、行ったからわかるというものでもない。行ったという事実だけでなく、行った時にその人が何をして、受け入れ側の人たちは本音としてどう思っていたのか、を踏まえてしっかり評価すべきだと思う。
 本社の人が支社や郵便局を訪問するのは実はとても大変なことかもしれない。現実はお客さま扱いされたり、逆に厳しい嫌味を言われたりもする。でもそのハードルを乗り越えてほしい。乗り越えて腹を割って話ができる関係を築いてほしい。そして支社や郵便局から戻った時に、その後も彼らとの良い関係をずっと維持していられるかが重要だと思う。

本社と支社と郵便局が垣根なく自由に話し合える素地が整っていないことがさまざまな問題の根底にあるようにも思える。郵便局ネットワークは全国に広がっていて大変だが、諦めずに取り組んで腹を割って話す関係を一人でも多くの社員が作っていければ、垣根を越えて、本社・支社・郵便局が真に自由に話せる風土が自然とできてくる。

――局長や社員の方々の女性活躍への期待もお願いいたします。
木下監査役 女性活躍というと、以前は働きたいと思う女性が男性と平等に働ける土壌をどう作るかだったが、今は労働力不足のなかで、女性に戦力として働いてもらうための土壌をどう作るかに変化した。世界的に見て日本の女性活躍推進は過渡期。例えば、女性管理者登用の数値目標然り。男女平等と表では言いながらも内心そうでない人や、育児等で早く帰らなければならないことなどで引け目も感じる人等もおそらく少なからずいて、それも過渡期の表れといえるのではないか。だが、そういった価値判断を超えて「人としてこの課題にどう向き合うのか」ということに立ち返れば、「お互いが思いやりと感謝の気持ちをもって日々仕事に臨む」ということではないか。女性管理者については、まだまだ少なく厳しい環境も多々あるが、管理者でなければ味わえない醍醐味もある。乗り切る勇気を持ってほしいし、一人で乗り切るのがつらければ手を携えて乗り切っていただきたい。

――2030(令和12)年があと4年になってSDGsが達成年。夢物語ではない未来に向けた郵便局への期待を
木下監査役 日本郵政グループは地域やそこにいるお客さまとの強い絆が強みで、それはまさに郵便局あってこそ。大都市でも中都市でも過疎地でも地域のお客さまとつながることが郵便局の使命であり、地域に住まわれている人の信頼がなければつながらない。

信頼されるために全てのことをできるのはフロントライン。お客さまと向き合っている郵便局の一人ひとりの社員こそが郵便局そのもの。本当に頑張ってほしい。