〝ぬくもり物販〟を全国展開 資本業務提携を締結 日本郵便×クラダシ

2025.09.04

 日本郵便は8月4日、賞味期限が近い食料品等を低価格で販売する通販マーケット「Kuradashi」で仕入れ側と販売側をマッチングし、フードロス削減ビジネスを展開する上場企業㈱クラダシ(河村晃平社長CEO)と資本業務提携を締結した。EC時代に即しカタログ主体の物販事業で郵便局のネットショップを強化。単身世帯や高齢層のニーズが増えている冷凍宅食サービスを共同開発し、全国津々浦々の暮らしに〝ぬくもり〟を届ける。商品性の幅を広げ、認知度も高めながら社会貢献型ビジネスを共創する。(写真上は、髙橋康弘専務執行役員㊧と河村社長CEO)

フードロスの社会課題解決に一層貢献

 資本業務提携により日本郵便は㈱クラダシの第三者増資を引き受け、約5億円を出資して株式10%を取得。第2位の主要株主になる。両社は①クラダシ調達のフードロス削減商品を日本郵便ネットチャネルでの販売を年内にも開始②冷凍宅食サービス開発・立ち上げ――の2本を柱に郵便局物販のV字回復を目指し、両社で日本一〝暮らしに寄り添う〟ECサイトを目指す。
 記者会見で、日本郵便物販ビジネス部の田辺健二部長は「日本郵便の物販事業は、ゆうパック増に向けて各地特産品の全国配送を中心に収益の2%強を占めてきたが、もっと暮らし全般に寄り添うビジネスを育てたい。リアルとネットの両方を備え、全国物流ネットワークを持つ郵便局らしく提供する〝ぬくもり〟を考えた時、クラダシさまの理念に共感し、提携が実現した」と語った。
 ㈱クラダシの河村社長CEOは「サステナブルな資本提携により、社会課題と経済性の両立を目指したい。郵便局ネットワークと連携し、ECサイトでフードロス削減を推進する。冷凍宅食サービスはM&Aした『つるかめキッチン』のノウハウを生かす。EC事業にとって最も重要であるタイムリーな配送、商品クオリティーの担保、コストダウンを図りたい」と述べた。

宅食サービス開発、ネット物販強化へ


【記者会見】

 ――V字回復を意味する業績の推移を教えてください。
 田辺部長 通販市場は年率で5~10%ほど伸展し、中でもECサイトの売り上げが年率2桁増の一方、カタログ系は落ち込んでいる。日本郵便の物販も数年前に一番高い売り上げを記録して以来、毎年約2割下がり、ネットショップへの移行が進まず強化が必要。郵便局らしい商品を持つ企業との協業はさらに門戸を開きたく、調査も進めている。

 ――なぜ、日本郵便を選ばれたのですか。
 河村社長 社会課題解決は全国ネットワークを持つ日本郵便さまとの提携が最も近道と考えた。

 ――冷食宅配サービスの開始時期は。
 田辺部長 年内か年明けにはサービスインしたい。

 ――クラダシが提携で解決できることは。
 河村社長 日本では年間8000億円分の食品ロスがあり、ロスをなくすにはユーザー獲得が重要。クラダシのユーザーは60万人前後の会員にとどまるが、日本郵便さまは社員約30万人、約2万4000拠点、来局者数は約2億5000万人の大きな顧客基盤を持つ。提携により、全国民が社会課題解決に資する仕組みをつくりたい。

 ――郵便局との関連性は。
 田辺部長 今後の検討だが、局内に商品を置くことやネット通販が苦手な方への説明する役目も果たせる。郵便局を活用するプロモーションも考えたい。

 ――冷凍ゆうパックも想定していますか。農業との連携は。宅食サービスを高齢化社会とさらにどう結び付けますか。(郵湧新報)。
 田辺部長 冷凍ゆうパック開発は今後の検討課題だが、現時点は各社との提携で冷凍配送インフラは持つ。地元産のお届けも考えたいが、当面はフードロス商品のネットショップ掲載と宅食ECサイトで販売する。
 河村社長 クラダシの「つるかめキッチン」の冷凍宅配サービスは、お体を壊された方や食のコントロールが必要な方向けに60~70代の利用者の方が多いが、共同開発はより広い年代層も対象に進めたい。

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